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驚きの77歳! 川邉サチコさんに聞く、
美しい歳の重ね方。

とても77歳には見えない、トータルビューティークリエイターの川邉サチコさん。ヘアメイク・服・食生活・運動にいたるまで、「日々の暮らしが美容そのもの」と語るサチコさんに、その美しさ、若さの秘訣を伺いました。

 

日本を代表する美容家にリスペクトを込めて〝先生〟と呼んだら、「あらサチコさんでいいのよ」

話し方も身のこなしも軽やかで、さすがスニーカーの似合う77歳。

「中身はサッちゃんのままですから」 とは、娘の川邉ちがやさん。

オートクチュールのトップモデルからハリウッド女優、ミュージシャン、日本の俳優まで、そうそうたる著名人のヘアメイクを長年手がけてきた、川邉サチコさんである。

今もバリバリの現役で、年齢や肩書にとらわれず、いつまでも自分らしく輝きたいと願う女性に、美容、ヘアスタイル、ファッションなどをトータルにアドバイスするサロンを主宰している。

「昔の自分にしがみついていたらダメですね。この間、Vネックのニットを着ていたら、娘に『何かダサイ』って言われてしまって。首の筋が目立ってイケてないんだって。娘からのイエローカードもだけど、自分自身が第三者的な目で、皮膚感や体型、髪質などアップデートすることはとっても大切だと思ったわね。だって、いろいろ変化があるのは事実だもの」

「皮膚感、体型、髪質…… 自分を第三者的な目で アップデートすることが大事ね」
「皮膚感、体型、髪質……自分を第三者的な目でアップデートすることが大事ね」


世界を驚かせ続けた、川邉サチコさんのヘアメイク

デビッド・ボウイ 1973年来日コンサート 写真/鋤田正義 スタイリスト/高橋靖子 ヘアメイク/川邉サチコ 額の「金の月」 にいたく感激したデビッド・ボウイ。国内外で絶賛。
デビッド・ボウイ1973年来日コンサート。写真/鋤田正義 スタイリスト/高橋靖子 ヘアメイク/川邉サチコ。額の「金の月」 にいたく感激したデビッド・ボウイ。国内外で絶賛。
フェイ・ダナウェイ 1979年パルコ広告 クリエイティブディレクター/石岡瑛子 写真/操上和美 コスチューム/三宅一生 ヘアメイク/川邉サチコ 白塗りが気に入り、フェイ・ダナウェイからその後もオファーが。
フェイ・ダナウェイ 1979年パルコ広告 クリエイティブディレクター/石岡瑛子 写真/操上和美 コスチューム/三宅一生 ヘアメイク/川邉サチコ。白塗りが気に入り、フェイ・ダナウェイからその後もオファーが。


娘のちがやさんもヘアメイクからファッションまで 手がけるトータルコーディネーター。「娘は仕事のパートナーであり、美のライバルです(笑)」
娘のちがやさんもヘアメイクからファッションまで手がけるトータルコーディネーター。「娘は仕事のパートナーであり、美のライバルです(笑)」
 

白髪にしたら、赤い口紅が似合ったの。

サチコさんは2年前、髪を染めるのをやめた。

「そのほうが柔らかな印象になる、全体のバランスも取りやすいと思ったから。ただ白髪にすると、口紅を差したほうがいいの。私は昔っから口紅が嫌いでグロスだけだったんだけど、この髪色とこの年齢になると、リップラインをはっきりさせないと、いくら頑張っても元気そうに見えない。それでスタンダードな赤をつけています」

スカーレット色の口紅を使っていると、つけているディオールのリップを見せてくれた。

「ラインは無印良品のリップライナーを愛用しています。わざと輪郭をはみ出させてふっくらさせてもいいのだけど、私は薄い唇のまま。そのかわりインの内側はしっかり中まで丁寧につけます。食べたり話したりしている時、境目が見えると興ざめですからね」

今日は好きなシャツのコートドレスを羽織って、春のフレンチカジュアルな着こなしをしようと、昨晩、娘のワードローブからラブミーテンダーのインナーを拝借してきたんだそう。

「ヘアメイクは着こなしと密接な関係にあるから、私は全部着て、全身のバランスを見てから髪を結います。この髪型、手櫛でちゃちゃっとまとめてバレッタで留めてるだけですよ」

「私にとっての美容はヘアメイクだけでなく、食生活や運動、睡眠、身につける肌着などトータルなものです。私は実年齢は77歳だけど、体年齢や精神年齢は若々しくありたいと思うの。実年齢がもっとお婆さんになっても、いきいきと自分らしく生きていたいから、食材や、衣類なら材質まで気を配っていたいんです」

サチコさんにとっては、日々の暮らし、生き方そのものが美容になっている。

まず、朝起きたら軽くヨガをして体温を上げる。洗顔は微温水で肌を温めながら夜の分泌物を洗い流す。化粧水は肌に吸収されるわけではないが、表皮や角質をうるおわせてクリームで保湿するとファンデーションのノリが良くなるので、化粧水はたっぷり使う。

「水泳は37年間続けています。ヨガも毎朝ベッド上で。 体温が上がっていいのよ」。ウォーキングもする。「都心に住んでいるので、歩きながら新しいお店めぐりを」
「水泳は37年間続けています。ヨガも毎朝ベッド上で。体温が上がっていいのよ」。ウォーキングもする。「都心に住んでいるので、歩きながら新しいお店めぐりを」
「50年間信頼し愛用している私の大切な道具、ARPIN ミラー。7倍に拡大しても湾曲せずにリアルに見えます」。リップライナーは無印良品。
「50年間信頼し愛用している私の大切な道具、ARPINミラー。7倍に拡大しても湾曲せずにリアルに見えます」。リップライナーは無印良品。


チークまでの基礎メイク、自分のためにします。

「スキンケアはジャン・デストレを愛用しています。肌が乾燥してしまった時は、エイトアワークリームをレスキューで使います」

そして外出しなくても、サチコさん、朝は必ずベースメイクまでしているのだという。

「ベースメイクというと、ふつう下地クリーム、UVケア、コンシーラー、ファンデーション、パウダーまでを言うけれど、私は、チークまでをベースメイクと言っている。チークメイクは元気に見せてくれるし、骨格の立体感をデフォルメして顔立ちを美しく見せるしね」

つける量は、ごくごく薄い。

「ファンデーションはのびがいいからゲラン。シルクのような艶感も出ます。この年齢になるとコットンの肌よりシルクの肌でしょう。私は着るものや季節によって、自分の肌色にダークな色や明るい色を加えています」

「朝はスキンケアとファンデ、チークまで、必ず基礎メイクをします。薄ーくシルキーな肌を作るの。メイク後の肌が自分肌と思うと、メンタルも上がります」
「朝はスキンケアとファンデ、チークまで、必ず基礎メイクをします。薄ーくシルキーな肌を作るの。メイク後の肌が自分肌と思うと、メンタルも上がります」
 

この基礎メイクは、人のためじゃない。自分のため。

「肌がきれいに整って、明るく元気よく見えると、気分がアップします。メイクって本人のメンタルにすごく影響するものなの。人に会わないで家にいる時でも、ふと覗いた鏡の中の自分がきれいだったら、気分いいじゃないですか」

確かに。

「そしてポイントメイクは目力アップ。アイラインをくっきり一本、目尻を上げて描くんです。これ、私のテッパン。なにはなくてもアイライン一発です(笑)」

若い時はアイシャドーだけでも目力は出て、目尻も上がったけど、今は、ぼかしより「線」。

「フェイスライン全体を上げる効果もあります」

「アイメイクはシャドーだけじゃぼける。アイラインは目力を上げるだけではないの。くっきり一本、目尻を上げ気味に描くとフェイスラインもアップします」
「アイメイクはシャドーだけじゃぼける。アイラインは目力を上げるだけではないの。くっきり一本、目尻を上げ気味に描くとフェイスラインもアップします」
 

そしてサチコさんのトレードマークといえばメガネ。

「もう子どもの頃から好きで、メガネが欲しくて、目が悪くなったと親に嘘をついたほど。老眼になったのは40歳になってからです。私は老眼鏡を鼻先にかけるのが好き。なかなかキュートなのよ」

メガネコレクションは40個を超える。

「ところがメガネも歳とともに、似合う、似合わないが出てくるので、アップデートしなければなりません」

たとえば、フレームのないものや細い金縁のメガネ。

「それは、もう似合わなくなりました。むしろ、個性的な色やフレームはアイメイクの一部になって、アクセサリー以上に、いろいろな佇まいを演出できるんです」

「子どもの頃、メガネをかけたくて目が悪くなったと嘘をついたほど」のメガネ好き。「メガネは目力をアップしてくれます。メガネを味方にすると、とても便利」
「子どもの頃、メガネをかけたくて目が悪くなったと嘘をついたほど」のメガネ好き。「メガネは目力をアップしてくれます。メガネを味方にすると、とても便利」
 

下着、マニキュア、裸で寝るリネン!?

サチコさんのビューティトークは快調に続く。

「冬でもね、ノースリーブのワンピースにジャケットを羽織ったりするの。ノースリーブから素肌の肩がちらっと見えたりすると女っぽくてエレガントでしょう。二の腕を気にせず気合で着ちゃう。ただし毎日のボディケアは入念に。ボディスクラブでやさしくなでて、フェイス用の化粧水で水分補給。仕上げに、たっぷりのボディオイルでマッサージは欠かせません」

モンローも愛用したハンロ(1884年スイス創業)の下着を愛用(右)。「最上質のコットンで、パターンも縫製も肌に優しい。ワコールの〝ディア〞もシックで好きです」
モンローも愛用したハンロ(1884年スイス創業)の下着を愛用(右)。「最上質のコットンで、パターンも縫製も肌に優しい。ワコールの〝ディア〞もシックで好きです」
「歳を重ねるとますます赤が似合うようになるの」。冬はダークな赤、春は明るめとシーズンで変える。「ディオール ヴェルニの赤はオールマイティ。OPIも愛用」
「歳を重ねるとますます赤が似合うようになるの」。冬はダークな赤、春は明るめとシーズンで変える。「ディオール ヴェルニの赤はオールマイティ。OPIも愛用」


「シーツは肌に優しい上質の麻かコットン。裸で寝ると その良さがわかるのよ」とサチコさん。ちがやさん、「えっ、もう裸はやめてよ、地震の時どうするの!?」
「シーツは肌に優しい上質の麻かコットン。裸で寝るとその良さがわかるのよ」とサチコさん。ちがやさん、「えっ、もう裸はやめてよ、地震の時どうするの!?」
「着物好きが高じて、24色、色無地着物の一式をデザインした時の帯揚げ。帯揚げは着物って決めなくていい。私は、洋服の時もスカーフ代わりに愛用します」
「着物好きが高じて、24色、色無地着物の一式をデザインした時の帯揚げ。帯揚げは着物って決めなくていい。私は、洋服の時もスカーフ代わりに愛用します」


 

◎川邉サチコさん トータルビューティークリエイター/1938年、東京生まれ。女子美術大学卒業。パリのメイクアップスクールで学び、ディオール、サンローラン、シャネル、エルメスなど名だたるメゾンの日本でのヘアメイクを担当。’70年代からは雑誌、広告、映画、舞台など幅広い表現の世界で活躍。現在は東京・渋谷のKAWABE LABで完全予約制サロンを運営。娘の川邉ちがやさんと共に、一般女性へのビューティアドバイスを行っている。

『クロワッサン』920号より

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