【コミュニケーション編】脳のためにできること
イラストレーション・前田ひさえ 文・小林百合子
【コミュニケーション】孤独は脳を萎縮させる最大の敵!
ACTION ① 自分のペースで働いて脳と心を定期的に動かす
定年退職後に認知症の症状が出始めるというのはよく聞く話。
「仕事をするためには時間どおりに出勤し、業務の手順を考え、状況に応じて臨機応変に対応するといった思考や動作が求められます。これは脳の司令塔である前頭葉の判断力や段取り力、マルチタスク能力をフル稼働させる最高の脳トレ。日々適度な緊張を持ち、社会の中で自分に役割があると実感することは、生きがいや意欲を生み出し、脳への良質な刺激となります」
職場でのコミュニケーションも認知症予防に一役買う。
「軽い挨拶や会話でも感情や言語を司る領域が刺激されます。人と会い、孤独感が解消されるとオキシトシンが分泌され、ストレスによる脳へのダメージを軽減する効果も期待できます」
ACTION ② 自然と会話が生まれる行きつけの店をつくる
働くのは体力的に心配という人は、喫茶店など、家の近所に行きつけのお店を作るのも手。
「店員さんや常連客と顔見知りになると、何げない世間話をしますよね。それもれっきとした脳への刺激になります。『あの店へ行く』という目的ができると、身だしなみを整えたり、時間を意識して出かけたりするため、前頭葉が活発に働きます。『今日は何を注文しようかな』と迷う小さなワクワクも、脳へのいい刺激になるはずです」
ACTION ③ 新しい趣味を始めて気楽な友人の輪を作る
認知症予防において孤独は最大の敵。ならば友人を作ればいいと思うが、大人になってからの友人作りは意外と難しい。
「同じ趣味を持つ人なら会話も弾みますし、好きなことについて語り合う時間は共感とワクワク感を生み、ドーパミンやオキシトシンが分泌されます」
脳への刺激においては異性の友だちのほうがいいのだという。
「異性と接する際には身だしなみや言葉遣いに意識が向き、心地よい緊張感が生まれます。性別によって着眼点や感じ方が異なることが多いので、新鮮な意見に触れることも。それが脳にとっていい刺激になるのです」
ただ距離感には少しだけ注意をしたほうがよさそう。
「深く濃い人間関係は一度こじれると厄介。ストレスホルモンが分泌されて脳を萎縮させる原因になるので、適度な距離感で気楽なコミュニケーションを取れる間柄が理想です。そんな友人が複数いると、孤独のリスクを分散でき、より安心ですね」
ACTION ④ 習いごとで脳を覚醒。仲間もできて一石二鳥!
初めての体験は脳を刺激するのにうってつけ。学びを伴う習いごとは理想的な活動だ。
「新しい知識を学ぶプロセスは、脳の記憶の拠点である海馬や情報処理を司る前頭葉を活発に働かせます。さらに『次はこれをやってみよう!』と前向きに取り組む気持ちはドーパミンを大量に分泌させ、神経ネットワークの再構築を促します」
習いごとは利害関係のない新しい仲間と出会える場でもある。
「同じ課題に向き合い、教え合ったり励まし合ったりするコミュニケーションはオキシトシンを満たしてくれます。先生やクラスメイトの目線があることで適度な緊張感が生まれ、前頭葉もさらに活性化するはずです」
初体験のドキドキ感も、脳にとってはいい刺激になりそう。
ACTION ⑤ ボランティア活動をして脳も心も豊かに満たす
自分のペースで参加できるボランティアも孤独を防ぎ、社会の中で役割を感じられる活動。
「ボランティアの最大の魅力は、誰かの役に立ち、『ありがとう』と感謝される喜びを味わえる点。人のために行動する『利他の心』が働くと、脳内では親密感や安らぎをもたらすオキシトシンとともに意欲を高めるドーパミンが分泌されます。人から必要とされ、社会に貢献しているという自己肯定感や役割の実感は脳に活力を与え、認知機能低下の大きな要因となる社会的孤立を防いでくれます」
参加するなら、自ら考えて行動することに挑戦してみよう。
「仲間と協力して計画を立てたり、周囲の様子に気を配りながら動いたりすると、前頭葉が稼働します。自発的に考え、仲間と連携して取り組むことは極めて高度な脳トレになるのです」
団体などに所属するのはハードルが高くても、地域の清掃活動など、身近なボランティアなら気軽に始められそうだ。
ACTION ⑥ 動物との触れ合いでオキシトシンをチャージ
利害関係なく、無条件に愛を注げる動物との触れ合いは、心が深く満たされる時間。
「愛情を感じるとオキシトシンが分泌され、副交感神経が優位に。血流が促進され、脳への酸素や栄養がスムーズに行き渡るようになります。動物を撫でたり、声をかけたりするアクションは感情を司る領域を心地よく刺激すると同時に、優しく幸せな気持ちも与えてくれます。犬や猫以外にも馬と触れ合うホースセラピーなどもおすすめです」
ACTION ⑦ 思い出話に花を咲かせ、記憶と感情を刺激する
家族や友人との会話は手軽な脳活性化トレーニング。
「過去の出来事を思い出しながら言葉にして誰かに伝える作業は、脳の記憶の保管庫である海馬や、思考・感情をコントロールする前頭葉を広範囲にわたってフル稼働させます。楽しかった思い出に触れると脳内ではドーパミンやオキシトシンが自然と分泌され、感情が揺さぶられるほどに海馬への刺激が高まり、脳の血流がアップします。古いアルバムを一緒にめくったり、昔よく聴いていた懐かしい音楽をかけたりしながら話すのもいいですね。視覚や聴覚への刺激が加わることで、記憶の引き出しがさらに開きやすくなります」
長らく顔を出していない同窓会に参加して、思い出話に花を咲かせてみるのもいいかも!
毒にも薬にもなる!? デジタルとの付き合い方
脳トレにデジタルツールを活用したいと考える人も多いかもしれないが、それってどうなのだろう?
「AIとの会話では表情をうかがったり、言葉を選んだりといった気遣いや緊張感が生まれません。脳への刺激という点では限定的になるので、あくまで思考整理などの補助ツールとして捉えましょう。脳トレゲームなどに熱中するあまり、スマホ依存に陥る危険性も。デジタルツールの便利さを享受しつつ、能動的に使いこなすことが大切です」
『クロワッサン』1174号より
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