【生活習慣編】脳のためにできること
イラストレーション・前田ひさえ 文・小林百合子
【生活習慣】日々の暮らしを整えると、脳が若返る!
ACTION ① 聴力の衰えは脳に大打撃。騒音を避けて耳を大切に
認知症のリスク要因として上位に挙げられているのが難聴。
「視覚を伝える神経は脳の深い部分に直接繋がっていて、耳から入る音刺激は脳全体を活性化させる働きを担っています。加齢による聞こえづらさを放置して難聴が進むと、脳への音刺激や情報量が減り、脳の情報処理能力や認知機能が低下します」
会話が聞き取りづらくなると人に会うのも嫌になりそう。
「外出や人との交流を避けるようになると脳への刺激が少なくなり悪循環です。聴力を守るには大音量でテレビや音楽を聴かないなど騒音環境を避けることが大切。会話や音が聞き取りづらいと感じたら、早めに耳鼻科へ。補聴器外来などで自分に合った補聴器を作ることも、聴力を保つために有効な手段です」
ACTION ② 噛む刺激は脳に必須! 口腔ケアで歯を健康に
脳の健康を保つ上で意外と重要なのが歯。歯周病は大敵だ。
「歯周病は歯と歯茎の隙間に潜む細菌によって慢性的な炎症が引き起こされる病気。口内の炎症が長期間放置されると全身の炎症反応を高め、活性酸素の発生や脳内の炎症、老廃物蓄積のリスクを高めてしまいます」
歯周病により歯を失ったり、噛み合わせが悪化したりすることも認知症のリスクを高める。
「噛む行為はとても大切で、ひと噛みするごとに記憶を司る海馬へ血流が送り出される仕組みになっています。しっかりと噛めなくなることは、脳へ血流を届ける機会を失うこと。デンタルフロスなどを使った丁寧な歯磨きや定期的な歯科検診で歯周病を予防することは、脳を若々しく保つための隠れたカギです」
ACTION ③ 喫煙は百害あって一利なし。禁煙で生きる意欲が増す!?
「タバコに含まれる有害物質は脳の血管を収縮させ、血流障害や脳血管障害のリスクを高めます。さらに喫煙によってニコチンを取り込み続けると、“やる気ホルモン”とも呼ばれるドーパミンを分泌する脳の機能が低下し、日々を過ごす意欲や感情の減退を招いてしまいます」
自力で禁煙が難しい場合は医師や薬の力を借りるのがいい。
「ニコチンパッチを使う、禁煙外来を受診するなど、なるべく早く禁煙に取り組みましょう」
ACTION ④ お酒は楽しく、適量を。飲み過ぎは脳に悪影響も
「お酒は適量を楽しめば脳内でドーパミンなどの神経伝達物質が出やすくなり、幸福感が増しますが、過度な飲酒は脳の神経細胞に栄養を届けるビタミンB群を消費・排泄させてしまうため、脳の萎縮や認知機能低下を加速させる原因になります」
人によって目安は異なるが、ほろ酔いでやめるのが吉。
「一度の飲酒量をほどほどに。週に2日程度は休肝日を設けるなど、心身ともに健やかに楽しく飲める程度がいいでしょう」
ACTION ⑤ 質のいい睡眠で脳を掃除。深く眠れる習慣づくりを
質のいい睡眠が健康にいいことは明らか。特に脳を健康に保つためには深い眠りが欠かせない。
「私たちが眠っている間、脳内では脳脊髄液が循環し、アミロイドβなどの老廃物が洗浄・排出されます。同時に、起きている間に学習した記憶を整理し、必要な情報として定着させる作業も行われています。これらの作業はぐっすり眠った状態でないと充分に行われず、睡眠の質が低下します。浅い眠りが続く状態だと溜まった老廃物が排出されず、脳の健康がどんどん損なわれていってしまうのです」
睡眠の質を高めるには就寝前の習慣を見直すことが重要だ。
「入浴は遅くとも就寝の1時間前には済ませるのが理想です。体の深部温度が高いままだと、脳が起きていると勘違いして休息できず、眠りが浅くなってしまうからです。寝る直前にスマホを見ない、カフェインを摂取しないなど、脳が静かに休めるような状態を作るのが、ぐっすり眠るためのポイントです」
ACTION ⑥ 感情が高まる推し活でドーパミンを大放出!
認知症予防で重要なことのひとつが「感情が揺さぶられること」。自分の「好き」に夢中になれる推し活はうってつけだ。
「大好きなアイドルや俳優を愛で、応援している時、脳内ではドーパミンをはじめセロトニンやオキシトシンといったやる気や幸福感を司るホルモンが大量に分泌されます。これらは脳の血管を広げて血流を促し、神経細胞のネットワークを活性化させる原動力となります。心が揺さぶられる感動を体験すると扁桃体や海馬も刺激されますから、脳はフル回転状態ですね」
推し活に力を入れるほど、脳にはいいことがあるのだという。
「推しのライブに向けてチケットを手配し、移動手段や宿泊先を予約する際には前頭前野のワーキングメモリーが刺激されます。グッズを作ったり、振り付けを練習したりすることでも運動野や小脳が活発に働きますから、まさにマルチタスクです」
心をトキメキで満たす推し活は、最高の脳トレなのだ!
ACTION ⑦ 毎日の7時間睡眠で体内時計を整える
たくさん寝ればそのぶん脳も休めていいのかと思いきや、長過ぎる睡眠はよくないそう。
「理想的な睡眠時間は7時間程度。それより長すぎても短すぎても認知症リスクが高まることが研究でわかっています。長時間の昼寝は睡眠のリズムを乱す原因になるので1時間以内に」
毎日決まった時間に寝て、起きることも重要なポイント。
「脳の体内時計が整うと、朝の光を浴びたタイミングでセロトニンやドーパミンが分泌され、脳が一気に覚醒して血流が高まります。夜には睡眠ホルモンが分泌され、スムーズに入眠できます。交感神経と副交感神経のバランスも整い、脳へスムーズに血流が流れるようになりますから、休日も平日と同じリズムで過ごすのがおすすめです」
認知症予防に欠かせない3大ホルモンとは?
脳の若々しさを保つために欠かせないのが、“脳活3大ホルモン”。
「ドーパミンはワクワク感や達成感を得ると分泌され、脳の様々な領域を刺激します。オキシトシンは心から安心した状態で分泌されることから“幸せホルモン”とも呼ばれ、ストレスによる脳の慢性炎症を防止。朝の光を浴びた時などに分泌されるセロトニンは、自律神経や感情を安定させます。これらのホルモンが豊かにめぐる生活が、脳を若返らせる最高の処方箋なのです」
『クロワッサン』1174号より
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