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『黄金仮面の王』マルセル・シュオッブ 著──長く愛されてきた作家の初の文庫作品集

文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。

文・瀧井朝世

『黄金仮面の王』 マルセル・シュオッブ 著 大濱 甫、多田智満子、垂野創一郎、西崎 憲 訳 河出文庫 1,430円
『黄金仮面の王』 マルセル・シュオッブ 著 大濱 甫、多田智満子、垂野創一郎、西崎 憲 訳 河出文庫 1,430円

『山尾悠子偏愛アンソロジー 構造と美文(ちくま文庫)』にも作品が収録されているマルセル・シュオッブの短篇集。新訳5篇を含む全22篇を収録している。SNSでさまざまな方が「シュオッブが文庫で読める日が来るなんて」と感激されているので調べてみたら、たとえば2015年に刊行された単行本の全集は933ページあって税込み1万6500円。たしかに文庫オリジナル傑作選は、値段からも持ち歩きやすさからもありがたい。

表題作の「黄金仮面の王」は、古代のどこかの国の話。王は黄金の仮面をかぶり、神官はじめ周囲の者たちもみな仮面をかぶっている国だ。ある日、顔をさらした、みすぼらしい姿の盲目の男が王を訪ねてきて、「お前さまはまだ一度も生身の顔をごらんになったことがない」「お前さまは王でありながら人民を御存じでない」と訴える。その出来事に触発されたのか、王はこっそり野原へと忍び出るのだが……。

他には未来的な短篇やホラーみのある短篇も。私の筆力が未熟ゆえ本書の空気感をうまく説明できないが、あえていうなら全体的に硬質で、「死」というか「滅び」のイメージが漂っている。幻想文学の醍醐味を改めて味わった。

  • 瀧井朝世 さん (たきい・あさよ)

    ライター

    著書に『ほんのよもやま話〜作家対談集〜』『偏愛読書トライアングル』など。

『クロワッサン』1166号より

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