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『トワイライト、新版画―小林清親から川瀬巴水まで』三菱一号館美術館──版画に満ちる繊細な光を感じる

青野尚子のアート散歩。『トワイライト、新版画―小林清親から川瀬巴水まで』展では、アメリカのスミソニアン国立アジア美術館から選りすぐりの浮世絵や新版画、写真などを展示。展覧会タイトルにある「トワイライト」は版画の画家たち、とくに小林清親の「光線画」に代表される光の表現に着目したもの。

文・青野尚子

小林清親 《大川岸一之橋遠景》 明治13(1880)年 スミソニアン国立アジア美術館 National Museum of Asian Art, Smithsonian Institution, Robert O. Muller Collection
小林清親 《大川岸一之橋遠景》 明治13(1880)年 スミソニアン国立アジア美術館 National Museum of Asian Art, Smithsonian Institution, Robert O. Muller Collection

写真の登場などにより明治に入って衰退してしまった浮世絵。その浮世絵の美を受け継ぎ、発展させようとした人々がいた。『トワイライト、新版画―小林清親(きよちか)から川瀬巴水(はすい)まで』展はアメリカのスミソニアン国立アジア美術館から選りすぐりの浮世絵や新版画、写真などを見せるもの。ディーラーであり、コレクターだったロバート・O ・ミュラーのコレクションを中心とした展覧会だ。

展示は明治の開化絵を紹介した後、「最後の浮世絵師」小林清親の作品へ続く。彼は月明かりのもと、人力車を走らせる車夫の影や薄闇の中、ヘッドライトを灯して走る蒸気機関車など、光の繊細な表情を捉えた「光線画」で一世を風靡した。

清親が描いた江戸東京のノスタルジックな風景画の系譜に連なるのが版元の渡邊庄三郎だ。古美術商だった彼は失われていく浮世絵の技術や海外流出を憂い、新版画活動の要となる。彼と協働した画家の一人、川瀬巴水は日本各地を巡ってその光景にやさしい視線を向けた。登山が好きだった吉田博は雄大な山の景色を描きとめている。

展覧会タイトルにある「トワイライト」は版画の画家たち、とくに小林清親の「光線画」に代表される光の表現に着目したもの。夜明けや夕暮れ、夜の闇、雨や雪にきらめく光など、彼が描く光は見るものにさまざまな情感を呼び起こす。スティーブ・ジョブズも愛した新版画の光を味わおう。

『トワイライト、新版画―小林清親から川瀬巴水まで』

川瀬巴水 《東京十二題 春のあたご山》 大正10(1921)年 スミソニアン国立アジア美術館 National Museum of Asian Art, Smithsonian Institution, Robert O. Muller Collection 版元:渡邊木版美術画舗
川瀬巴水 《東京十二題 春のあたご山》 大正10(1921)年 スミソニアン国立アジア美術館 National Museum of Asian Art, Smithsonian Institution, Robert O. Muller Collection 版元:渡邊木版美術画舗

三菱一号館美術館 開催中~5月24日(日)

展覧会は浮世絵や新版画と写真との関わりにもスポットをあてる。近年、注目を集める新版画を新たな角度から見ることができる。

三菱一号館美術館(東京都千代田区丸の内2・6・2)  TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル) 10時~18時 祝日・振替休日を除く月曜休(3月30日、4月6日、4月27日、5月18日は開館)観覧料一般2,300円ほか
  • 青野尚子 さん (あおの・なおこ)

    アート・建築関係のライター

    著書に『超絶技巧の西洋美術史』(池上英洋さんとの共著、新星出版社)など。

『クロワッサン』1160号より

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