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身の回りの人間関係を見直してポジティブに備える「老い」

やがてくるシニアと呼ばれる年齢。その時も楽しく過ごすには? 必須の“人間関係”を軸に、精神科医の保坂隆さんと考えます。

撮影・青木和義 イラストレーション・村上タカシ 構成&文・堀越和幸

シニアになったら、友だちや家族との付き合いをこう変えていこう

老後の生き方について数多くの著書がある保坂隆さんは、本来はがんの患者やその周りの家族の心のケアをするサイコオンコロジーの専門医である。

「医学的には自分の身の回りで自分のことを考えてくれる人を“ソーシャルサポート”と呼びますが、ソーシャルサポートがある人はない人に比べて、長生きすることがわかっています。私たちは年を重ねていけば結局最後は“一人老後”になりますので、自分を手伝ってくれる存在がとても大切になってくるんです」(保坂さん)

そんな存在とは、たとえばご近所さんかもしれないし、古い友だちかもしれない。が、重要なのは、

「関わってくれる人との良好な関係です。そのためにシニアならではのちょっとした心構えがあるといいでしょう」

そのちょっとした心構えとは──。

自分では腹を割って話しているつもりでも、相手が距離を縮めるとは限らない
自分では腹を割って話しているつもりでも、相手が距離を縮めるとは限らない

年を取ったら細く長くで、適度な距離感のある付き合いを

シニアの人付き合いの術としてまず保坂さんが挙げるのは、ベタベタした人間関係は敬遠すべきということ。

「深入りをすると感情的になったり、情緒的に揺さぶられたりするので、心にも体にもよくありません」

中には会った瞬間から質問攻めで距離を縮めてくる人もいる。どちらのご出身? どんなお仕事をしてきたの? どうしてお子さんと同居しないの?

「せっかく出会えたからあれも聞きたい、これも聞きたい、となるのでしょうが、多くの場合はそういう人は単なるおしゃべり好きで本当に話の内容に興味があるわけではありません」

親しい相手にも触れてほしくないことはある。同様に自分のことばかりをあけすけに話すのもいただけない。

「適当な距離を保ちながら、細く、長く、がシニアの人付き合いの鉄則です」

勝ち負けのこだわりも、ゲームだけに発揮しているうちはまだかわいい?
勝ち負けのこだわりも、ゲームだけに発揮しているうちはまだかわいい?

もう勝ち負けにこだわらないで、自分のペースで生きていく

男女を問わず、現役時代には心ならずとも他人と競り合うという局面があった。夫の稼ぎや子どもの出来でマウントを取り合ったり、会社勤めをしていれば同僚の動きが気になったり……。

「競争社会に長く身を置いていると、他人には負けられないという気持ちが染み付いていて、のんびりシニアライフを楽しめない人もいるようです」

そういう人がたとえば地域の寄り合いなどで顔合わせをすると、私は外資系の会社にいたので英語はおまかせください、などとさりげなく自分のキャリアをひけらかしたりもするのだが。

「聞いているほうには“面倒な人”と映るかもしれない。シニアになったらもう上司やライバルはいません。いろいろなしがらみから離れて自由になったのだから、勝ち負けにこだわらず、肩の力を抜いて、人生を楽しみましょう」

人の都合が考えられない驕り、忖度し過ぎてしまう卑屈さ、どちらにも要注意!
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「してあげる」「してもらう」の意識が家族間のギクシャクに

人付き合いの微妙な匙加減は他人にだけではない。家族についても大切だ。

「知り合いの元ドクターがインフルエンザの流行で忙しくしている医者の息子に“手伝ってやろうか?”と声をかけたそうです。すると息子はあっさりいらないと断った。その人は二度と声をかけてやらないと憤慨していました」

この話に保坂さんはシニア特有の驕りを嗅ぎ取ってしまう。

「自発的に何かをしておきながら相手が思いどおりの反応をしないと腹を立てる、というのは身勝手に過ぎません。息子には息子の都合があるのですから」

一方で、必要以上に“◯◯してもらってしまった”と考える人も注意が必要だ。

「受けた恩義を負担に感じてばかりいるとこれもストレスです。人間は一人で生きているわけではないので、卑屈にならず、素直に感謝を表しましょう」

ウォーキング、シニアボランティア、テニス……男女一緒の場に参加しよう
ウォーキング、シニアボランティア、テニス……男女一緒の場に参加しよう

男女一緒の場が生む微かな緊張、それが若返りの素になる

趣味のサークルは、女性同士、男性同士が気楽で楽しいけれど、これからはもっと男女一緒の活動に注目をするべきではないか、と保坂さんは考える。

「まず、同性グループに異性が一人加わるだけで自然と話題が広がります。それに、男女一緒の集まりだと、どうしても異性の目を意識するので、言われなくても身なりや振る舞いに気を配るようになりますよね」

女性なら薄く口紅を塗ったり、髪を整えたり、白髪を染めたり、あるいはいつもより華やかな洋服を着たり……。

「そのような毎日を過ごしていると気持ちにメリハリができますし、若さを保つ秘訣や認知症予防にもなります」

リアルな人間だけではない、韓流スターやアイドルなどの推し活も同様だ。

「異性にドキドキときめくだけで、体内には若返りホルモンが出るのです」

同居には「気遣い」が必要だが、「はっきり言う」ことも大切

近年は“若夫婦”が親の家に同居するケースが増えつつある。理由は家賃の節約や子どもの面倒見とさまざまだが。

「世代も価値観も異なる人間が同居するわけですから、高齢者が気をつけたいのは“いいおじいちゃん”“いいおばあちゃん”を演じ過ぎないことです」

たとえば嫁の作る料理の味付けが濃すぎるように感じる時、あるいはお風呂に入る順番を譲る時、等々。

「我慢は美徳とばかりに耐えているとストレスで体調にも障ります、限界に達して爆発しないとも限りません」

そんな時は腹の探り合いをするのではなく、とりあえず自分の思いを口にしてみるのがいい。

「強要はよくありませんが、提案や希望を言葉にするのは大切です。話し合うことで理解が深まり、それが問題解決の糸口になることもありますので」

  • 保坂 隆

    保坂 隆 さん (ほさか・たかし)

    精神科医

    保坂サイコオンコロジー・クリニック院長。『60歳からの人生を楽しむ孤独力』『「ひとり老後」の人づきあいの知恵袋』など、老後テーマの著書が人気。

『クロワッサン』1158号より

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