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『円山応挙―革新者から巨匠へ』三井記念美術館──巨匠、円山応挙の傑作を概観する

青野尚子のアート散歩。今回は、三井記念美術館の開館20周年を記念して開かれる『円山応挙―革新者から巨匠へ』展。応挙の底力に圧倒される。

文・青野尚子

重要文化財《遊虎図》 円山応挙筆 天明7年(1787) 香川・金刀比羅宮
重要文化財《遊虎図》 円山応挙筆 天明7年(1787) 香川・金刀比羅宮

近頃「奇想」ばやりだから、円山応挙というと普通すぎるように見えてしまうかもしれない。しかし写生を重んじ、対象をじっくりと観察して描く彼の絵は決して凡庸なものではなかった。三井記念美術館の開館20周年を記念して開かれる『円山応挙―革新者から巨匠へ』展は応挙作品の中でも逸品を集めた展覧会。応挙の底力に圧倒される。

見どころの一つは三井家が援助した、香川県の金刀比羅宮が所蔵する重要文化財の襖絵《遊虎図》だ。どことなく愛嬌のある顔つきやもふもふした毛がチャームポイントとなっている。この展覧会には広げた虎の皮とその皮から立体的な虎を復元した応挙のスケッチも出品される。当時の日本には生きた虎がいなかった。研究熱心な彼の姿がうかがえる。

《梅鯉図屏風》 円山応挙筆 天明7年(1787) 個人蔵
《梅鯉図屏風》 円山応挙筆 天明7年(1787) 個人蔵

昨年、新発見された伊藤若冲とのコラボ作品が東京で初お目見えするのも注目だ。金地の屏風にそれぞれ若冲が竹と鶏を、応挙が梅と鯉を描いている。応挙は若冲より17歳若く、二人は京都でご近所に住んでいた。この屏風は誰かが合作を依頼したと考えられている。力強く地面を踏み締める若冲の鶏と、澄んだ水に泳ぐ応挙の鯉を比べるのも一興だ。

そのほか同館が誇る国宝《雪松図屏風》と根津美術館所蔵の重文《藤花図屏風》の競演、互いに戯れる仔犬やウサギの愛らしさ、苦行でやつれた仏陀から遊女まで自在な人物描写など見逃せないポイントが満載だ。応挙が巨匠と呼ばれる理由が納得できる。

『円山応挙―革新者から巨匠へ』

三井記念美術館 開催中~11月24日(月・振休)

私たちにとって当たり前と思える応挙のリアリティも江戸時代の人人にとっては驚異的なものだった。彼は京都画壇を代表する人気画家となり、多くの弟子たちが集って円山四条派を形成する。

三井記念美術館(東京都中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階)  TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル) 10時~17時 10月27日休 入館料一般1,800円ほか
《竹鶏図屏風》 伊藤若冲筆 寛政2年(1790)以前 個人蔵
《竹鶏図屏風》 伊藤若冲筆 寛政2年(1790)以前 個人蔵
  • 青野尚子 さん (あおの・なおこ)

    アート・建築関係のライター

    著書に『超絶技巧の西洋美術史』(池上英洋さんとの共著、新星出版社)など。

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