暮らしに役立つ、知恵がある。

 

「おかずのもと」を常備、料理家・藤原奈緒さんの技あり冷蔵庫を拝見!

冷蔵庫をもっと活用すれば、毎日もきっと変わる。暮らし上手のリアルな使いこなし術を聞きました。

撮影・黒川ひろみ 文・長谷川未緒

常備菜未満の〝おかずのもと〟で、毎日食べたいものが並ぶ食卓。

「おかずのもと」を常備、料理家・藤原奈緒さんの技あり冷蔵庫を拝見!

「私にとってごはんを作ることは、面倒な日もあるけれど楽しい遊びです。冷蔵庫は私を毎日遊ばせてくれる、頼りになる存在です」と語るのは、シンプルながら新鮮なレシピやオリジナル商品も人気の料理家・藤原奈緒さんだ。

愛用の冷蔵庫はすっきりした見た目が好みで選んだ東芝製。食品ロスを出さないため、奥に日持ちするもの、早めに使い切りたいものは手前に置くのが収納ルールだ。

気になる中身は、たくさんの瓶ものや乾物類に、梅干しや梅のコンポートなど。また、常備菜はあまり作らず、アレンジできる半加工くらいまで仕込んだ“おかずのもと”を冷蔵庫にいつも入れている。

棚にしまうと存在を忘れるため乾物も冷蔵庫に。「瀬戸内海ひうち灘いりこ」(やまくに)や「皿垣開漁協産焼のり」(成清海苔店)を愛用。
棚にしまうと存在を忘れるため乾物も冷蔵庫に。「瀬戸内海ひうち灘いりこ」(やまくに)や「皿垣開漁協産焼のり」(成清海苔店)を愛用。

「ごはん作りを手軽にしてくれる瓶ものは、商品開発の研究にもなるので、気になったものは買うようにしています。良い乾物は家庭料理をおいしくしてくれます。気に入るとずっと使うタイプで、やまくにさんのいりこなど、なくてはならないものもいくつかありますね」

梅は毎年いろいろと仕込むが、塩だけで漬けた梅干しが料理には使い勝手がいいという結論に。フルーティーな仕上がりが好きで、あまり干さないのだそう。野菜は週に1回、近所の直売所でまとめて買うことが多い。細かく献立を決めて買うことはせず、その日に目が合ったいい野菜を連れて帰る。元気な旬の野菜を使うことは料理のモチベーションを上げてくれるという。

上段は瓶ものをトレイに入れて。中段は味噌と梅、下段はおかずのもとと、肉を入れた「呼吸する甕」。水分が抜けて旨みが凝縮する。
上段は瓶ものをトレイに入れて。中段は味噌と梅、下段はおかずのもとと、肉を入れた「呼吸する甕」。水分が抜けて旨みが凝縮する。

「野菜は元気なうちにすぐ下ごしらえしておくことが多いです。今日の気分で食べたいので、常備菜はあまり作らないのですが、疲れて帰ってきてゼロから料理を作るのは大変。そこで、ちょっと工夫すれば、何にでも使えるような状態にしておくんです」

野菜は近所の直売所や旅先の道の駅で求め、そのまま長期保存はせず、すぐに下ごしらえまで済ませる。ご飯はまとめて炊いて、冷凍。
野菜は近所の直売所や旅先の道の駅で求め、そのまま長期保存はせず、すぐに下ごしらえまで済ませる。ご飯はまとめて炊いて、冷凍。

そんなおかずのもとの定番は茹で野菜で、丁寧に茹でれば翌日もおいしいという。青菜なら沸騰させた湯に入れ、緑が鮮やかになった瞬間に引き上げて水にさらさずザルで冷ます。湯温が下がらないように少しずつ茹でるとよい。

最近よく作る薄味のおひたしも、丁寧に茹でた野菜ならシャキシャキとした歯応えが残る。マリネや塩もみなども、冷蔵庫の常連だ。たとえばきゅうりの塩もみなら、そのまま食べてもいいし、冷奴にのせたり、麺にかけたり、しらすと和えたり、チャーハンに入れたり。

そんなふうにアレンジ可能なおかずのもとと、肉や魚、ご飯と味噌汁があれば、日々の食卓はぱっと整う。

「おかずのもとと残りもので今食べたい味が作れるとうれしい。毎日に同じ日がないように、二度と同じ味は作れない再現性のなさも、家ごはんだからこその価値だなぁと思っています」

「おかずのもと」を常備、料理家・藤原奈緒さんの技あり冷蔵庫を拝見!

取引先や旅先で出合った愛用の調味料と瓶詰め。

「食べ頃仕込み味噌」(山印醸造)は味噌汁に、「白味噌 万葉小町」(井上本店)は和食だけでなくクリームソースに忍ばせて。「ドライ柚子胡椒&からすみパウダー」(唯一味)や「純胡椒」(仙人スパイス)など、他社の瓶詰は商品開発の研究にも。
「食べ頃仕込み味噌」(山印醸造)は味噌汁に、「白味噌 万葉小町」(井上本店)は和食だけでなくクリームソースに忍ばせて。「ドライ柚子胡椒&からすみパウダー」(唯一味)や「純胡椒」(仙人スパイス)など、他社の瓶詰は商品開発の研究にも。

素材の美味しさが増す甕を愛用。忙しい日のごはん作りにも便利。

沖縄の陶芸作家・古村其飯(こむらきはん)の「呼吸する甕」は、肉や魚、野菜を入れておくことで素材の持つ力が増し、旨みがアップ。この甕に入れておいたささみを茹で、茹で汁やおひたしの出汁をスープにおかずのもとと、にゅうめんに。
沖縄の陶芸作家・古村其飯(こむらきはん)の「呼吸する甕」は、肉や魚、野菜を入れておくことで素材の持つ力が増し、旨みがアップ。この甕に入れておいたささみを茹で、茹で汁やおひたしの出汁をスープにおかずのもとと、にゅうめんに。

おかずのもとと、その日の気分を合わせてごはん作り。

左上から時計回りに、出汁500mlに醤油大さじ1/2、塩適量で浸したおひたし数種。香りの強いアシタバは別容器に。 ひじきは水で戻して醤油と酢1:1でマリネ、食べる直前にオイルをかける。きゅうりは輪切りにして塩もみ。
左上から時計回りに、出汁500mlに醤油大さじ1/2、塩適量で浸したおひたし数種。香りの強いアシタバは別容器に。 ひじきは水で戻して醤油と酢1:1でマリネ、食べる直前にオイルをかける。きゅうりは輪切りにして塩もみ。
これに魚を焼けば、満足な食卓に。
これに魚を焼けば、満足な食卓に。

毎年、いろいろ作る梅は冷蔵庫のマストアイテム。

梅干しと梅のコンポート。商品開発も兼ねて梅仕事をするが、結局、塩分18%の梅干しが使いやすいと思うそう。
梅干しと梅のコンポート。商品開発も兼ねて梅仕事をするが、結局、塩分18%の梅干しが使いやすいと思うそう。
  • 藤原奈緒

    藤原奈緒 さん (ふじわら・なお)

    料理家、エッセイスト

    「あたらしい日常料理 ふじわら」主宰。「おいしい唐辛子」等オリジナル瓶詰などの開発やレシピ提案、教室などを手がける。共著に『機嫌よくいられる台所』(家の光協会)。

『クロワッサン』1119号より

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