TOSHI-LOWさん「人として強くありたい、人間として正しい道を進んでみたい。」
撮影・馬場わかな ヘア・HiroTsukui メイク・白川いくみ (共にペールマネジメント) 衣装協力・VIRGOwearworks
「人として強くありたい、人間として正しい道を進んでみたい。」
激しく、観ている者を煽るようなロックバンド「BRAHMAN(ブラフマン)」と、ピースフルで踊りたくなるアコースティックバンド「OAU(オーエーユー)」。2つのバンドのほかにもユニットやソロなど、30年以上精力的に音楽活動を続けるTOSHI-LOWさんだが、意外にも「歌をちゃんとやろう」と思ったのは2011年の東日本大震災のあとだという。
「それまでは上手く歌おう、って気持ちがなかったからね。俺の目指すものはそこではないと思っていたし。でも被災地で一人、ギター片手に弾き語りする機会も多くなって、初めてボイストレーニングをしたら前より上手く歌えるようになって。上手くなって何がいいって、人に合わせられることなんだよね。コーラスでも、歌いやすいほうを相手に譲ってあげられたりとか」
今も、各地の台風や地震の復興支援を継続中。ミュージシャンとして充分に動いているうえ、なぜそこまで……?
「みんな、自分らしく生きたいでしょう。それってただ自分のわがままで生きるのとは違って、社会の中で自分のことを『ああ、自分は生きてていいんだな』って思えることが大事なわけ。それにはやはり他者が必要で。例えば大きなスタジアムでライブをやって、キャーキャー言われたとして、それで満足かと聞かれたら俺はそうではない。アーティストとして、とか、表現者として、じゃなく、まして名前になんて頼らずとも、人間として何ができるか、ってことが大事なんだと思う」
格闘家並みに体を鍛えていることでも知られている。
「強さっていうのも歌の話と同じでさ。喧嘩に勝ちたいだとか威張りたいためじゃなくて、人を助けることができるから。何かあったとき、横で倒れている人をさっと救えるだけの腕力が欲しい、っていうだけなのかも」
実際、50歳を目前に控えつつ、若い頃より動ける体を保っている。
「何に関してもそうなんだけど、俺、前のほうが良かった、って思ってないんだよね。体も今のほうが動けると思ってて。いつも今の自分ができるサイコーのことを考えていれば、20代の時と比べる必要なんてないし。そもそも生きてると今しかないくせに、過去のあの時だったり、未来のいつかは……みたいになるんだよね。“今”にしか興味ない、でいいと思うんだけど」
彼が紡ぐ歌詞やライブでのMCが胸に響くというファンも多い。
「小学生の頃から詩が好きだったり退屈な授業中は国語辞典を読みふけったりしてたんだよね。歌詞とか言葉って、わかりやすすぎるのも恥ずかしいって、難解なものになっていった時期もあるんだけど、でも何周もしたら、ストレートに簡単な言葉で深いことを伝える人のほうがすごいなって思う」
今のTOSHI-LOWさんそのもの。
『クロワッサン』1102号より