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早見優さんが専門家に教わる、ストレッチの重要性と基本。

変わらぬ健康美を保つ歌手の早見優さん。フィットネスダンスのインストラクターの資格を持ち、体を動かすことは大好き。
とはいえ、体のあちこちにちょっとした不具合を感じ、メンテナンスの大切さも実感するこの頃……。そこで、医学博士で理学療法士の金子雅明さんに、メンテナンスとして取り入れやすいストレッチの重要性や、効果的な実践法を聞くことに。

撮影・黒川ひろみ スタイリング・太田 悠(早見さん/eleven.) ヘア&メイク・本居美沙子(早見さん) 文・板倉みきこ

早見優さんが知りたいこと。ストレッチが必要な理由って?

左・金子雅明さん 右・早見 優さん
左・金子雅明さん 右・早見 優さん

早見優さん(以下、早見) 私は週に2〜3日、深い呼吸を意識しながらストレッチをしています。体は気持ちいいし、頭までスッキリするんです。

金子雅明さん(以下、金子) ストレッチは、固まった筋肉を緩め、血流を良くし、疲労回復を促進するのが一番の目的です。早見さんのようにゆっくり深い呼吸をしながら行えば、横隔膜が膨らんだり縮んだりする動きで、体を支えるインナーマッスルを鍛えることにもなるので一石二鳥ですね。

早見 普段夜に行っていますが、いつやるとより効果的なんでしょうか。

金子 ライフスタイルに合った時間でいいんですよ。いつやるかより毎日実践することが大切です。姿勢や動き方のクセ、そして生活習慣の影響で、私たちの体は自分の使いやすい形に姿勢が崩れ、使う筋肉と使っていない筋肉がアンバランスになりやすい。そこで日々のちょっとした姿勢の崩れを、ストレッチで調整することが大事です。

早見 それはよくわかります。スマホを使っていると、肩が前に出た状態で固まっているのが気になっていました。また、スマホの操作で利き腕を使いすぎて、片側の腕ばかりが疲れますよね。

金子 スマホのほか、座りっぱなしや立ちっぱなし、家事なども含め、日常の動作で酷使しすぎた筋肉、逆に全く使っていない筋肉のアンバランスが生まれ、姿勢が崩れていくのです。
その結果、血流の悪化、疲れやすさ、冷え、むくみなどの体調不良を招きます。日々のストレッチで、崩れすぎない範囲に収めておくことが大切です。

早見優さんが専門家に教わる、ストレッチの重要性と基本。

筋肉が固まることで姿勢は崩れていく。

早見 自分でストレッチをしていて、これで効いているのかなあ、と疑問に思いながらやっていることもあります。

金子 筋肉の使い方と機能、自分の体の現状を知っておくといいでしょう。私たちの体には、約200個の骨と約400個の筋肉があり、全てに役割が決まっています。これらをスムーズに動かせたら、体の機能をフル稼働でき、疲れにくく不調知らずの状態でいられます。そのために必要なのが、重力に抗って良い姿勢を維持してくれる、インナーマッスルなんです。

早見 インナーマッスルって、体幹を支える筋肉ですよね?

金子 いえ、体幹だけでなく、肩や股関節など各関節や部位に存在する、深層筋の総称です。でも、肩甲骨や、首の下から胸の下にかけてある背骨部分(胸椎)、そしてお腹、股関節、足の裏の5カ所の深層筋は固まりがちです。この場所が硬くなると動作への影響が大きく、姿勢が崩れる原因になります。

早見 なるほど。でも、硬くなっているかどうかは自己判断しづらい……。

金子 そのとおりです。例えば早見さんは背筋が真っすぐに伸び、一見姿勢がいいですが、股関節や肩甲骨まわりが固まっていて、歪みが出ています。

早見 え!? 本当ですか?

金子 読者の方にも参考になると思いますので、早見さんの筋肉の柔軟度をチェックしてみましょう。

からだをチェック。

【上体を傾けて知る、脇腹の硬さの違い。】

鏡の前に軽く足を開いて立ち、両手は万歳。体の中心を感じながらゆっくり左右に上体を倒す。倒しにくいほうは脇腹が硬くなっている。
鏡の前に軽く足を開いて立ち、両手は万歳。体の中心を感じながらゆっくり左右に上体を倒す。倒しにくいほうは脇腹が硬くなっている。

【胸椎と肩甲骨の柔軟性&可動性確認。】

胸の前で両腕の側面を合わせ、そのまま両腕を離さず真上に。肘が鼻の高さまでくればOK。両腕を左右に開いて、肘の位置の差もチェック。
胸の前で両腕の側面を合わせ、そのまま両腕を離さず真上に。肘が鼻の高さまでくればOK。両腕を左右に開いて、肘の位置の差もチェック。

自分の状態を知り、効果的なストレッチを。

金子 両手を上げて上体を左右に倒してみて(上画像参照)、曲がり具合に差があれば姿勢が歪んでいます。早見さんは右側の股関節付近が硬く、その対角線上にある左側の脇腹が硬くなっています。肩甲骨もかなり硬いですね。

早見 え〜! 肩甲骨が硬いなんて、今まで自覚していませんでした!

金子 座りっぱなしの時間が長い人、スマホを使う人が増えているので、脇腹や股関節まわりが硬くなって姿勢が歪み、胸椎や肩甲骨も固まっている人は多いはずです。ストレッチは、硬くなっている部分を緩め、歪みを整えるのに効果的ではありますが、どの部位が固まりやすいのか、自分の体をしっかり知った上でストレッチすると、より効果が上がります。

早見 そうですね。今まではお尻の筋肉をほぐすのがメインでしたが、今後は、肩や股関節まわりのストレッチもしっかりやらなきゃと思います。

金子 ぜひ、今回紹介した簡単なストレッチを取り入れてください。

早見 教わった股関節を柔らかくするストレッチ(下記:【 股関節まわりを伸ばす。 】参照)は、以前から立った状態でよくやっていたんです。でも、あまり効いている感じがしなくて。

金子 それは、足を引っ張る時、骨盤も横に動いてしまっていたからですね。椅子の上に膝をのせて行うと、骨盤を正面に向けたまま筋肉が伸ばせるので、効果を感じられたと思います。

早見 はい、とても効いていました。

金子 各筋肉には始まりと終わりがあるので、その両端をしっかり止められる体勢を作って伸ばさないと意味がありません。また、力任せに勢いをつけたり、自分の可動域以上の負荷をかけると筋肉や関節に過度な負担がかかり、痛める原因になるので要注意です。

早見 動きを丁寧に、じんわりと伸びを感じながらやればいいですね。

金子 普段運動をしない人ほど使っていない筋肉が硬くなっていますから、指先、足先まで意識してゆっくり行うこと。また、ストレッチは伸ばすほうばかりに意識がいきがちですが、一旦丸めてから伸ばすほうがより伸びるんです。例えば、お腹を丸めると背中の筋肉が緩むので、その後グーッと背を反らせばストレッチ効果が上がります。

やってみよう! かんたんストレッチ。

【 肩甲骨を最大限に動かす。 】

鎖骨と胸骨の接点、胸鎖関節(肩甲骨の支点)に両手を置き、息を吐きながら背中を丸める。息を吸いながら関節から動かすように腕を広げる、を繰り返す。
鎖骨と胸骨の接点、胸鎖関節(肩甲骨の支点)に両手を置き、息を吐きながら背中を丸める。息を吸いながら関節から動かすように腕を広げる、を繰り返す。

【 股関節まわりを伸ばす。 】

壁際に椅子を置いて前に立ち、右手は壁に、左脚の膝下は椅子の上に。足の甲を掴んで上げ、骨盤は正面を向けたまま前ももや股関節の筋肉を伸ばす。反対側も。
壁際に椅子を置いて前に立ち、右手は壁に、左脚の膝下は椅子の上に。足の甲を掴んで上げ、骨盤は正面を向けたまま前ももや股関節の筋肉を伸ばす。反対側も。

【 広背筋と脇腹を伸ばす。 】

手のひらを外に向けて左腕を上に伸ばし、右手で左手首を持って左腕を伸ばすように上体を真横に倒す。手のひらの向きを内側に変え同様の動きをする。反対側も。
手のひらを外に向けて左腕を上に伸ばし、右手で左手首を持って左腕を伸ばすように上体を真横に倒す。手のひらの向きを内側に変え同様の動きをする。反対側も。

筋肉が固まった原因を知ると、改善策がわかる。

早見優さんが専門家に教わる、ストレッチの重要性と基本。

早見 私は何もないところでよくつまずくんです。それもいつも右足で……。足首が柔らかすぎるのか、どこかの筋肉が硬くなっているからでしょうか。

金子 捻挫など、怪我が原因で足首周りの筋肉を使わなくなった結果、足指の使えない歩き方をしてしまい転びやすくなっていることもありますよ。

早見 右足の小指を骨折したことがありますが、それが原因でしょうか?

金子 そうですね。今、早見さんの体重のかけ方に偏りがあるのも、発端は骨折した足指をかばうためだと思います。足元が不安定になったので、体を支えるために股関節や背骨に負荷がかかり、骨折が治ってもそのクセが抜けていないのでしょう。
放っておくと、膝や腰、肩などに痛みが出てきますので、今のうちに固まった筋肉をほぐし、使える状態に戻しておきましょう。これまで、筋肉や関節が硬くなるのは日々の体の使い方が原因という話をしましたが、実は怪我なども原因になるんですよ。

早見 怪我が治っても、気をつけないと体の使い方は直らないということなんですね。

金子 そのとおりです。筋肉のコリを慢性化させないため、日々の体の使い方なのか、怪我なのか、固まった原因を探ることが大事です。根本原因がわからないと、体は変わりません。

早見 そうですね。つまずいて大怪我してしまったら大変ですもんね。

金子 加齢とともに筋肉も衰えていきますので、ストレッチをして歪みを整えるだけでなく、筋トレも重要です。ただ、歪んだ状態で筋トレをすると、筋肉のアンバランスを助長するだけなので、ストレッチをして歪みを取ってから運動するといいですね。

早見 自分の問題点を知って改善し、丁寧に体と付き合っていきたいです。

【 スマホで酷使した手のケア。 】

左腕を伸ばし、指先を上に手のひらを正面に向け、右手で左指を手前にゆっくり倒す。次に指先を下に向け同様に手前にゆっくり反らす。右腕も同様に。
左腕を伸ばし、指先を上に手のひらを正面に向け、右手で左指を手前にゆっくり倒す。次に指先を下に向け同様に手前にゆっくり反らす。右腕も同様に。

【 つまずき防止の動き。 】

両手は腰、正面から見て両足が一直線上になるよう、右足を1歩前に出す。かかとは浮かさず体重を右足に移動。左のふくらはぎの筋肉が伸びる。反対側も同様に。
両手は腰、正面から見て両足が一直線上になるよう、右足を1歩前に出す。かかとは浮かさず体重を右足に移動。左のふくらはぎの筋肉が伸びる。反対側も同様に。

ストレッチで大事なこと。

●勢いをつけたり過度な負荷をかけない。
筋肉や関節を痛めるので、自分の柔軟性以上の負荷をかけたり、勢い任せに行わない。

●指先まで意識し動作を丁寧に。
正しい体勢で、ゆっくり負荷をかけると効果が出るので、丁寧な動作を心がけること。

●筋肉を丸めてから伸ばすことで効果増。
固まった筋肉をいきなり伸ばすより、まず丸めてから伸ばすとより効果が上がる。

●老化対策には胸椎と股関節の柔軟性が重要。
運動能力の維持に必須なのが、スムーズな歩行に関わる、胸椎と股関節の筋肉の柔軟性。

  • 早見 優

    早見 優 さん (はやみ・ゆう)

    歌手

    昨年デビュー40周年、ベストアルバム『Affection』を発売。バイリンガルと国際感覚で活躍。NHK WorldやNHKラジオのレギュラーほか、BS-TBS『昭和歌謡ベストテンDX』では新司会に。自身のYouTubeも人気。

  • 金子雅明

    金子雅明 (かねこ・まさあき)

    医学博士、理学療法士

    トップアスリートからジュニア、シニアまで幅広い層のコンディショニングサポートを行う。キネティックアクト所属。

『クロワッサン』1093号より

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