あなたの腸は大丈夫? 全身の衰えにつながる夏の腸トラブルにご用心!
今すぐできる防御策で、この夏も健やかに。
撮影・岩本慶三(森永さん) イラストレーション・中山信一 文・小沢緑子
\あなたは大丈夫?/お疲れ腸セルフチェック
□ 便秘と下痢を繰り返すなど、日々便の状態が不安定。
□ 便がスッキリ出ない(残便感がある)。
□ 便やおならが臭い。
□ 普段より口臭や体臭が強い気がする。
□ 食事時、お腹が気持ちよく空かない。
□ お腹が張って苦しいことがある。
□ おへそ周りのあたりが冷えている。
□ 夜寝つけない、眠りが浅いと感じる。
□ 気分が沈みがちでうつうつとする。
腸内環境が悪くなると、上記のようなサインが体に現れる傾向がある。該当項目が多いほど注意が必要。腸活で生活習慣の改善を図ろう。
脱水、高温多湿、 冷房による全身の冷え。 夏こそ腸活が必要な理由がこんなに……。
「40代、50代は普段から健康に気を遣っている世代。とはいえ、夏の気候は年々気温や湿度が上がってより過酷に。誰もが脱水症状を起こしかねない危険な環境になっています」と小林メディカルクリニック東京 院長の小林暁子さん。
さらに、外の暑さと冷房が利いた室内の寒暖差も、体には厳しい条件。
「温度差が激しくなると、体の各所で体温を一定に保つために働く自律神経のバランスが崩れ、腸の働きも影響を受けます。腸内環境が悪くなれば、腸内にたまった便から有害物質が発生し、血液を通して全身に運ばれ、便秘をはじめ、さまざまな不調が起こるスイッチが入りやすくなります」
夏の高温多湿の気候はやはり体への負担になりやすい、と東京女子医科大学附属東洋医学研究所の漢方専門医の森永明倫さんも言う。
「東洋医学では、特に胃腸の働きを体の『気(エネルギー)』を作り出すものとして重視しています。ところが夏は暑さから冷たいものを摂りすぎたり、冷房で体の芯まで冷えてしまったり、胃腸の働きが低下しやすい条件が揃ってしまう。胃もたれ、食欲不振、消化不良などが起きて食事から充分な気が得られなくなれば、体調不良が起こる引き金になりやすいです」
腸活は健康の体幹トレーニング。 免疫力アップ、メンタル安定にも直結。
夏の暑さは不調を引き寄せる要因。では腸活を行うと不調を防ぐ助けになってくれるのだろうか?
「腸は体の臓器を元気に働かせるために栄養を吸収し、不要物は排出する。しかも体内の免疫細胞の7割が集まる器官です。腸活で腸の蠕動運動を活性化させれば便秘の解消のほか免疫力も上がり、疲れやだるさ、冷えなどの不調も改善されていきます」(小林さん)
さらに、と続ける。
「腸はストレスの影響を受けやすい臓器。脳と腸は自律神経を介してつながっていて、脳がストレスを感じると腸内環境も不安定に。逆に、腸内が整ってくると自律神経の働きもよくなり心も体も安定してきます。腸活はいわば健康の“体幹トレーニング”のようなもの。心身ともブレず、健康的でストレスにも強い体に変わっていきます」
健やかな腸には、 食事、睡眠、適度な運動。 日々の生活を見直すことから始めよう。
腸内環境をよくするための対策は、生活習慣の改善に尽きる。
「まず、食生活では腸に悪さをしがちな食品は摂らず、余計なものはためこまずに便としてしっかり出すことが必要です。そのうえで腸にいい食事を心がけ腸内細菌を育てていくと効率的。腸周りの筋肉を適度な運動で鍛えてキープすることも大切です」(小林さん)
「東洋医学においても胃腸の働きをよくするためには日々の生活習慣こそが重要、と考えています。特に夏は蒸し暑さから食欲が湧かなくなるほか、夜はなかなか寝つけず睡眠不足に陥ることも。充分に睡眠をとることも、食事とともに体の気を補充するための大切な要素です」(森永さん)
次から食事、睡眠、運動など、夏の腸活に取り入れたいセルフケアを紹介。実践し、この夏を乗り切ろう。
【食】
胃腸に負担をかけない温かいものを食べる。
夏に食べがちな冷たい食べものは要注意。
「冷房で体全体が冷えているうえ、冷たいものはますます胃腸を冷やし体調を崩す原因にも。温かいものを選びましょう」(森永さん)
また、夏は素麺などあっさりして食べやすい炭水化物を口にしがちだが、
「栄養が偏るとエネルギーが生み出せず、疲れやだるさが出やすくなります。肉や魚でたんぱく質、野菜でビタミンやミネラルを摂ることも意識を」。
食物繊維、発酵食品を3食のどこかで摂る。
「食事では、まず腸に悪玉菌を増やしがちな添加物が多い食品を避けるのが前提。その上で老廃物を出す便のもととなる食物繊維豊富なもの、腸内細菌のエサとなる発酵食品を積極的に摂りましょう」(小林さん)
ただし、毎食摂ろうと頑張りすぎないこと。
「腸活も完璧にしようと思いすぎるとストレスに。一日の食事のうちのどこかで摂れればいい、とゆるく考えたほうが長続きします」
食欲がないときは無理して食べない。
暑さから食欲が湧かないときは?
「お腹が気持ちよく空かないのは、腸の働きが低下しているサインです。無理して食べず、腸を休ませることを優先。一日のうちの最後の食事だけは就寝3時間半前までに終わらせるよう調整してほしいのですが、食事時間はあまり決めすぎず、体の様子をみながらお腹が自然と空いてきたタイミングで摂りましょう」(小林さん)
【水】
水分は喉が渇く前にこまめに摂る。
「更年期の場合、トイレを気にして水分を控える人もいますが、夏はこまめに摂らないと水分不足から便が硬くなり便秘になりやすいですし、体が脱水症状を起こして血管や臓器にとっても危険。水分は一気に摂ると尿となって出ていきやすいので、喉が乾く前にちょこちょこ飲むようにしましょう」(小林さん)
カフェインが多い飲み物は利尿作用が働いてしまうので、水やノンカフェインのお茶を。
【温】
冷房からお腹、腰、首を守る。
冷房対策もこのシーズンは必須。
「冷房が利きすぎている場合は、お腹と腰、首を重点的に守ってください。ストールを巻くなどして自己防衛を」(小林さん)
「更年期のほてりやのぼせ、突然発汗するホットフラッシュに悩んでいる人は、暑くなれば脱ぎ、寒くなれば簡単に羽織れる上着で体温調整を。汗をかいたらこまめに拭いて、汗冷えが起こるのを防いでください」(森永さん)
【動】
腸まわりの筋肉をほぐす。
冷房対策と同時に行いたい腰まわりの運動。
「股関節には大きな血管があり、長時間座りっぱなしだと鬱血して下半身の血流が悪くなり、冷えやむくみの原因にもなります。椅子に座ったままでもいいので腰を左右に深くひねったり、その場で足踏みをしたり、股関節周りを意識してほぐしましょう」(小林さん)
腸まわりの筋肉に刺激を与えると、腸も刺激されて動きもよくなり一石二鳥。
地道に体幹トレーニング。苦手なら腹筋だけでも。
「腸は骨盤まわりの筋肉に支えられていますが、加齢によって腸の位置が下がり働きが低下することが。正しい蠕動運動が起こるように、体幹を鍛える運動を取り入れて腸を本来あるべき位置に戻しましょう」(小林さん)
スクワットや仰向けに寝て両脚を少し上げてキープする簡単な腹筋運動でもいい。
「腹筋=筋肉のガードルのようなものなので、鍛えるとお腹が冷えにくくもなります」
暑さに慣れるためにも、涼しい時間帯に散歩。
外は暑いからと家の中に閉じこもってばかりいるのは、腸活的にはマイナス。
「加齢で筋力が低下すると便秘になりやすいです。腸は体を動かすと蠕動運動が始まるので、適度に運動をして刺激を与えましょう。ウォーキングなど、副交感神経を優位にする運動が効果的。夏は汗をかき暑さに体を慣らすことも必要なので、涼しい時間帯に散歩をするだけでもいいと思います」(小林さん)
【眠】
適度に冷房を使い、体を冷やさない工夫を。
「睡眠は体の気を作り出す重要な要素。また、気=免疫力でもあり、寝苦しさから睡眠不足になると体力まで消耗することに。熱帯夜も珍しくない現代の夏は就寝時も冷房はかけたほうがよいですが、冷気が直接体に当たらないように注意を」(森永さん)
たとえばパジャマは長袖長ズボンを選ぶ、寝る位置を変える、寝室ではなく隣室の冷房をかけるなど、できる範囲で工夫をして。
【浴】
ぬるめの湯でリラックス入浴。
夏はシャワーだけで済ませる人も多いが、冷房で冷えた体を温めたり、寝苦しい夜もぐっすり眠るためにも湯船に浸かるのが理想的。
「水分を補給しながら、39〜40度のぬるめの湯に時々深呼吸をしながらゆっくり15分くらい浸かるリラックス入浴を。お腹も温まるので腸がよく動くようになりますし、体の深部体温が上がって入眠しやすくなり、睡眠の質も高まります」(小林さん)
【心】
好奇心をもち、気持ちが上がることをする。
「前述したように脳と腸は密接に関わっています。40代、50代は仕事に親の介護なども重なり、ストレスから腸内環境が悪化し更年期症状がつらくなる人も。リフレッシュする時間を作ることも腸活のひとつ」(小林さん)
実際、脳で喜びを感じる神経伝達物質のセロトニンを作りだすのも腸内細菌という。
「『これ面白そう』と思うことにどんどん挑戦を。心身ともに好循環が生まれます」
人と積極的に会う。人と楽しくお喋りする。
「コロナ禍で人と会う機会が制限されていた時期は、お腹の悩みとともに心身のトラブルを訴える人も多くみられました。漠然とした不安から睡眠障害を起こしたり、鬱々として家事や仕事へのやる気が湧かず、自信を失うなど悪循環に陥っていた人も。人と会ってお喋りするだけでも発散になり、刺激がもらえよい緊張感が生まれるので、自分から積極的に人と会うことも大切です」(小林さん)
ほかにも… 便の観察を習慣に!
腸の状態を知るよい方法が、ずばり「便チェック」。「肌と違って腸内を自分で見ることはできませんが、便を見れば腸内環境の状態がわかります」(小林さん)。
たとえば、コロコロ便や硬い便は腸内にとどまる時間が長く水分量が少ない。逆に、水のような便は腸内にとどまる時間が短い証拠。どちらも生活面に何らかの原因があるはず。
「理想はバナナ状で適度なやわらかさがある便。朝にいきまずに気持ちよく出て、水に浮くのがベストです。便の臭いでも腸内バランスがわかる。悪玉菌が多いほど臭いはきつくなります」。
また、便通は3日に一度でもスッキリ出るようなら問題はなし。「毎日便通がないことがストレスになり便秘になる人も。気にしすぎないで」
『クロワッサン』1098号より
広告