【演目:宮戸川】前半と後半で後味が違う!?結ばれた若い二人の運命とは。│ 柳家三三「きょうも落語日和」
イラストレーション・勝田 文
【演目】宮戸川
あらすじ
日本橋小網町の大店の息子・半七は、友人と将棋を指し帰宅が夜遅くなり、父親に締め出しを食う。
弱っていると、向かいの船宿の娘・お花も友達と歌かるたで遊んで遅くなり、家に入れてもらえず困っている。
半七は締め出されるたびに霊岸島の叔父の家に泊めてもらうことにしているが、それを聞いたお花が一緒に泊めてくれと言いだす。
叔父は早合点なうえ、男女の仲を取り持つのが大好きというお節介な性格。それを知る半七は勘違いされるからと断るが、お花は強引に付いてきて、叔父は案の定「半七が恋人を連れてきた」と思い込み…。
「宮戸川」というのは東京・隅田川の浅草近辺の流域だけの別名です。けれど、その川の名は口演される機会が極めて少ない噺の後半にしか出てきません。故に前半部分だけを演じて終わるときは「〝お花半七馴れ初め〞の一席」などと言って演題のようにすることもあります。
後半部分は、叔父さんの勘違いでめでたく結ばれた若い二人に降りかかる運命の後味が悪いというので演じることを避ける人が多いのです。かく言う私も後半はお稽古さえつけてもらっていません。
それでも腕のある噺家が演じると芝居要素などが見事に効果を上げて「良いものを聞けたな」と思えるのは芸の力でしょう。前半で終わるときは、落語ではちょっと珍しい結末の付けかたをします。
演者それぞれの工夫の凝らしどころを、落語日和でぜひ楽しんでください。
『クロワッサン』1093号より
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