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「立つ」より腰への負担が大きい「座る」。正しい姿勢で座るポイントとは?

正しい姿勢で座り、腰を守りましょう。

文・山下孝子 イラストレーション・松元まり子

膝が骨盤よりも下に位置するのがコツ

座るという動作は楽な姿勢に見えますが、「正しい姿勢」で座っていても、実は「正しい姿勢」で立っている時よりも腰への負担が40%多くなります。日本で腰痛に悩む人が多いのも、長時間座って仕事をするデスクワーカーが多いためです。

人間の骨盤は座ると立っている時よりも後ろに傾き、背中が丸まりやすくなり、猫背が促進されてしまいます。それを予防するために、30分に1度は背を伸ばしてあげる必要があります。

また、椅子の高さにも注意しなければなりません。低すぎると座った時に膝が骨盤よりも高くなり、腰が疲れやすくなります。そのため、足の裏が床につき、膝がほぼ直角に曲がる高さが理想的です。もし椅子が高くて足が床につかない場合は、足元に踏み台などを置いて調整するとよいでしょう。

次に注意すべきは背もたれと座面の角度です。背もたれは110度ほど後ろに傾いているもの、座面は5度ほど前に傾いているものが、背骨のゆるやかなS字状カーブを保つのに適しています。

会社のオフィスで使われている椅子は、高さを調整できるうえ、この背もたれと座面の角度が適正なものが多いのですが、一般的な家庭用の椅子には座面が平坦か、後ろに2~3度傾斜しているものが多いようです。

実際、2020年に新型コロナの流行で自宅でのリモートワークが増加すると、ダイニングテーブルの椅子に座って仕事をしたせいで腰を痛めてしまい、デスクワーク用に作られた椅子を購入する人が続出しました。

最後に注意したいのが、太ももの裏側の筋肉であるハムストリングの柔軟性です。長時間座り続けることでこの筋肉が硬くなってしまうと、下側を引っ張られた骨盤がますます後ろに傾き、猫背が強まってしまうからです。

そのため、時々足をまっすぐ伸ばし、硬くなったハムストリングをほぐしてあげましょう。

【座る】この生活動作が腰を守る

「正しい姿勢」で座るポイント

(A)顎を引く (B)意識して下腹部を引っ込める (C)膝をほぼ直角に曲げる(膝が腰よりやや低い位置…

(A)顎を引く

(B)意識して下腹部を引っ込める

(C)膝をほぼ直角に曲げる(膝が腰よりやや低い位置にくるようにする)

(D)足の裏が床につく(つかない場合は踏み台で調整)

(E)背筋を伸ばす

(F)背もたれは後ろに110度ほど傾いているのが理想的

(G)お尻を座面の奥に置いて深く座る

(H)腰はほぼ直角

椅子座の注意点

「立つ」より腰への負担が大きい「座る」。正しい姿勢で座るポイントとは?

●柔らかい座面
ソファのように柔らかい座面の椅子は、お尻が沈み込んでしまい、腰よりも膝の位置が高くなってしまいがちです。そうなると骨盤が後ろに傾き、背中も丸まってしまうため、腰痛の予防には柔らかすぎない座面の椅子が理想的とされています。

「立つ」より腰への負担が大きい「座る」。正しい姿勢で座るポイントとは?

●前屈する
椅子に座ったまま前屈して、床の上にある物を拾ってしまうことがありますが、例えば拾う物の重さが20キロの場合、「正しい姿勢」で座っている時の2倍以上の負担が腰にかかります。筆記用具やカトラリーなどの軽い物でも、やはり負担になるため注意しましょう。

「立つ」より腰への負担が大きい「座る」。正しい姿勢で座るポイントとは?

●浅く座る
お尻を座面の前方に置く座り方は、「正しい姿勢」を保つことができれば問題はありません。しかし、深く座っているときとは違い、背もたれを使うと頭部や肩周辺が背もたれに乗ることになります。この姿勢は腰の部分が丸くなるため、腰椎への負担が大きくなります。

【床座のポイント】

日常生活では椅子に座ることが多いのですが、法事のような場面では、まだまだ床に座ることが多いはずです。床に長時間座る際のポイントを紹介します。

●あぐら 正座よりも足が楽な座り方ですが、背中が丸くなり、膝が腰よりも高くなるため、腰痛予防のために…

●あぐら
正座よりも足が楽な座り方ですが、背中が丸くなり、膝が腰よりも高くなるため、腰痛予防のためにできれば避けたい座り方です。
正座ができずにやむを得ずあぐらで座る場合は、正座の時と同じく二つ折りした座布団をお尻の下にあてがい、膝が腰よりも低い位置にくるようにしてあげましょう。

「立つ」より腰への負担が大きい「座る」。正しい姿勢で座るポイントとは?

●正座
正座は自然と背筋が伸びる座り方のため、姿勢については問題ありませんが、長時間座っていると腰や足が疲労します。腰や足の負担を軽くするためには、二つ折りした座布団をお尻の下にあてがうとよいでしょう。また、市販されている背が低い正座用椅子を使うと、より負担が軽くなります。

  • 伊藤晴夫

    監修

    伊藤晴夫 さん (いとう・はるお)

    整形外科医

    メディカルガーデン整形外科院長。JCHO東京新宿メディカルセンター(旧東京厚生年金病院)元副院長・整形外科部長。岐阜大学医学部卒業。腰痛疾患や股関節疾患の臨床に長年携わり、一流アスリートの治療にもあたっている。『腰痛の運動・生活ガイド』(日本医事新報社)、『腰痛をすっきり治すコツがわかる本』(永岡書店)など、腰痛関連の著書・監修書多数。

    ※プロフィールは雑誌掲載時の情報です。

『Dr.クロワッサン 脊柱管狭窄症、骨粗しょう症、ぎっくり腰もスッキリ! 腰痛の新常識』(2020年8月27日発行)より。

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