気象病、熱中症、気分の落ち込み、寒暖差疲労。 夏の4大不調にご用心!
体へのダメージは増えるばかりです。加えて長引くコロナ禍で、心の不調を感じる人も。原因も症状も複雑化する夏の不調に立ち向かうには、対処法もアップデートがマストです。
日々の疲れをこまめに解消し、夏に負けない体を作る方法を東京女子医科大学附属 東洋医学研究所 所長・教授の木村容子さん、せたがや内科・神経内科クリニック 院長の久手堅 司さんに伺いました。
撮影・玉置順子(t.cube) スタイリング・白男川清美 ヘア&メイク・レイナ モデル・田村るいこ イラストレーション・松栄舞子 文・小沢緑子 撮影協力・UTUWA
【これからが本番! 夏の4大不調にご用心。】
気象病
雨が降る前や梅雨の時季、また、これから台風が増えるシーズンなど、気圧や気温が大きく変化すると頭がズキズキと痛くなったり、めまい、全身倦怠感などが起こるのが気象病。
「一番多いのは頭痛です。症状がひどくなると朝起きられず、仕事を休まざるをえない人もいます」(久手堅さん)
原因は、気圧の変動による影響だ。
「普段の生活で気圧を感じることはありませんが、実は人間の体には1平方メートルあたり10トンもの圧力がかかっています。そして体内からも同じ圧力で押し返してバランスを保っていますが、気圧が大きく変動すると均衡が崩れて耳の奥にある内耳を刺激。その状態が脳に伝わり自律神経が乱れ、さまざまな症状が起こります」
最近は男性にも増えてきたというが、気象病は圧倒的に女性に多いという。
「女性は生理周期の関係もあり、症状がより現れやすいと考えています」
冷房病、寒暖差疲労
寒暖差疲労は温度差で起こる不調。
「一日の最低気温と最高気温、前日比や1週間ほどの期間、室内外など、いたるところに温度差があり、いずれも7度以上の差が生じると自律神経がオーバーワークになり、うまく対応できなくなります」(久手堅さん)
頭痛、めまい、倦怠感は気象病と共通するが、「冷え性が強く現れます。冷房病も寒暖差疲労の一種です」。
東洋医学でも寒暖差疲労は大問題。
「加齢で季節の変わり目に体調を崩しやすくなるのは、持って生まれた体力や気力などのエネルギーがボールから空気が抜けるようにしぼんでいくから。エネルギーボールは女性では28歳を過ぎた頃から小さくなり、更年期になるとさらに小さくなります。激しい気温差が生じるとエネルギーがますます消費されて、回復に時間がかかることも。体を守るためにも温度差は自分で調整することが必要です」(木村さん)
気分の落ち込み
「不調は外因(気候などの環境)、内因(喜怒哀楽の感情)、不内外因(過労や不摂生)の3つが影響すると考えています。夏の不調は以前は暑さや湿度などといった外因の比重が高かったのですが、今はコロナ禍による日常生活の変化、将来や社会情勢への不安なども重なり、内因、不内外因も重なるトリプルパンチに。心身ともに気・血、すなわちエネルギーや血液の巡りが悪くなり、今まで睡眠や体調に問題がなかった人も眠れなくなったり、イライラして怒りっぽくなったり、中には抑うつ傾向に陥る人もいます」(木村さん)
そもそも更年期はホルモンバランスが崩れやすいため、その影響で自律神経も乱れやすくなる側面があるという。
「外因、内因、不内外因の条件が揃いやすい今は、いわば火山の中にマグマがたまり噴火に向けてスイッチオンされやすい状態。体だけでなく、メンタル面のケアも欠かせません」
熱中症
「夏は汗をかいて熱を放出することで体温が一定に保たれますが、気温が25度以上、湿度が70〜80%と高くなると汗をかきにくくなったり、かけなくなるリスクが。すると体内に熱が過剰にこもり、顔がほてる、体がだるくなる、フラつくなど熱中症の症状を起こしやすくなります」(久手堅さん)
また、気象病など自律神経系の不調がある人は、切り替えがうまくいかず発汗しにくい体になっていて熱中症になりやすいというから注意が必要だ。
室内でも熱中症にかかるリスクはあるが、「湿度が高く蒸し暑いと汗が気化せず肌表面に残るため、水分が足りないことに気がつかず、知らずに脱水症状を起こしていることもあります。喉の乾きをはじめ、いつもよりも尿の色が濃かったり、尿量が少なくなっている場合などは、こまめに少しずつ水を飲んで、体の中の水分を不足させないことです」(木村さん)。