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冷凍してダメなものはない? 管理栄養士に聞く「冷蔵冷凍」の新常識。

食材を無駄なく、美味しく使い切る「新常識」を、医学博士で管理栄養士の本多京子さんから教わります。

イラストレーション・村田喜子 文・石飛カノ

早く使うなら冷蔵、それ以外のものは迷わず冷凍。

冷凍してダメなものはない? 管理栄養士に聞く「冷蔵冷凍」の新常識。

週に一度、食材の宅配サービスを利用しているという本多京子さん。届いた食材はその日のうちに冷蔵するもの、冷凍するものに仕分けをするという。

「3〜4日以内に食べるものは冷蔵庫に、ちょっと長く置いておきたいものは処理をして冷凍庫に。そうしておくと食べ物を腐らせて捨てるということは皆無です」

さらにスーパーなどでは、単価が安くて質のいい食材なら大袋のものを買う。ひとり暮らし、または夫婦ふたり暮らしで大袋の食材に手が出ないという人は少なくないが、冷凍のテクニックを知っていれば食材を生かしきることができるという。

「ネギを3本買ったとしたら1本は冷蔵庫、残り2本は輪切りにして冷凍します。たとえば納豆を食べるときにちょっとネギが欲しいけれど、わざわざまな板を汚したくない。そんなときも冷凍ネギなら簡単に使えます。そしてより美味しく食べられます」

フードロス防止や手間の貯金など、 メリットは多い。

では、冷凍のテクニックを活用して大根1本をどう使い切るか?

「大根の上の部分はおでんや煮物用に厚切りに、真ん中はお味噌汁などに使えるよう太めの千切りに、尻尾のほうはすりおろして冷凍しておくとおそばや納豆の薬味になります」

しかし、冷凍すると食材の水分が凍って体積が増す。この現象によって細胞膜が傷つくので解凍したときに本来の食感ではなくなる。

「とくに大根は水分が多いので、解凍したときに水っぽくなります。でも冷凍する前に少しレンジ加熱して白だしをかけておくと凍って組織が壊れるときに中にだしが染み込みます。解凍して加熱すると早く煮えるので、調理時間が短くなるというメリットが。私はこれを“手間の貯金”と呼んでいます」

加熱調理をすれば食感の変化はまったく気にならない。むしろ、こうして大根1本を使い切れば、フードロスを防ぐと同時に手間の貯金になるというわけ。

卵や豆腐もOK。 冷凍してダメなものはない。

食材を冷蔵する場合、賞味期限内であれば姿や食味はほとんど変わらない。一方、冷凍すると食味がまったく違ってしまうことも少なくない。

「たとえば卵。昔の常識では卵は冷凍できない食材でした。
水分が凍るときに体積が増えて殻が割れ、質感が変わって生では食べられないからです。でも加熱調理する分にはなんの問題もありません。
殻が割れることを想定してひとつひとつラップで包んで冷凍します。水に浸けると簡単に殻が剥けますし、半解凍のとき包丁で半分に切って焼けば黄身がふたつの“両目焼き”ができます」

豆腐もまた、かつての冷凍NG食材の代表。

「こちらは水切りして若干つぶして冷凍します。解凍するとお豆腐のフライや炒り豆腐があっという間に出来上がりです」

考え方の基本は、解凍したときに元の卵、元の豆腐に戻ると思わないこと。前とは違う食材と上手につき合う知恵を身につけたい。

食材に合わせてテクニックを 使い分ける。

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とはいえ、タブーを恐れずただ冷凍すればいいというわけではない。食材が持つ特性によって冷凍テクニックを使い分けることも大事なポイント。

「たとえばミニトマトはへたを取って水気を拭いて保存袋で密封した状態で冷凍します。冷凍庫から出して水の中に入れると、温度差でつるんと皮が剥けます。
解凍しきってしまうとふにゃふにゃですが、半解凍状態でコンデンスミルクをかければシャーベットのように食べられます」

また、冷凍する前に干すという手もあり。

「きのこ類は風通しのいい窓側で半干しにしてから冷凍すると、コンパクトになる上、栄養も旨味も増します」

さらには加熱するという方法も。

「玉ねぎは薄切りにしてさっと炒めてから、カボチャはレンジにかけてから、ニンジンはイチョウ切りにしてバター炒め煮にしてから冷凍すると、いろいろな料理に使えます」

複数の冷凍果物で食卓の彩りを豊かにする。

栄養学的に言うと、一日に握りこぶし大の果物を2個食べるのが理想的。せっかくいただくならさまざまな種類のフルーツを楽しみたい。本多さんは常に複数の冷凍フルーツを常備しているという。

「よく冷凍するのはカットしたバナナやキウイ。2〜3種類の果物を冷凍しておき、ヨーグルトをかけて食べたり、牛乳と一緒にミキサーにかけてスムージーにしています」

複数のフルーツを生の状態でその都度用意するのは面倒。でも、あらかじめ冷凍しておけば贅沢気分のデザートに。

そうそう、こんなものも、と言って見せてくれたのが皮を剥いた状態で冷凍された小ぶりのみかん。

「そろそろ小みかんが終わりの季節なので、食べきれないものは皮を剥いて冷凍しました。毎年、秋に旬を迎える栗も冷凍しています。こうしておくと、旬の季節ではないときにいつでも楽しむことができます」

ごはんやパン、 主食の冷凍活用法。

冷凍してダメなものはない? 管理栄養士に聞く「冷蔵冷凍」の新常識。

ごはんやパンなどの主食の冷凍は、誰もがやっている常識的な保存法。改めて本多さんに最適解を聞いてみた。

「ごはんが炊きあがったら、その日食べる分以外は温かいうちに形を整え、冷めたら冷凍庫に入れます。冷凍すると角が硬くなるので丸い形にするのがポイント。ごはん専用のドーナツ形の冷凍容器を使ってもいいですし、それがなければおむすびを平たくした感じにすると場所をとらず解凍のムラも少ないような気がします」

一方、パンはごはんに比べて冷凍した後、いつしか忘れられがちな存在に。このパン放置を防ぐ本多流テクニックがある。

「食パンにチーズとハムを挟みます。1斤分の食パンを全部サンドイッチにして1組ずつ保存袋に入れて冷凍しておくんです。これを、トースターで焼けばホットサンドに。パンだけでなくチーズにカビが生えたりハムが干からびることも防げます」

死蔵食材を作らないスペース使いを。

こんなところにいつ買ったか思い出せない食材が。これは冷蔵庫内でのあるある体験。でも、冷蔵庫のゾーニングの法則を知っていれば食材を無駄なく使い切ることができる。

「コチュジャンや甜麺醤など毎回使うわけではない調味料は冷蔵庫の目線より上の上段に。目につきやすい中段にはすぐに食べられる調理済みの食品を。一番下のチルド室には肉や魚、卵を入れています。
扉の卵ケースだと開閉するときの振動で卵が傷みやすいので今週使い切る卵はチルド室、大量に卵を買ったときは冷凍しています」

そして、2段式の冷凍庫の上段には肉と魚、下段には野菜と果物。最も大切なことはそれらの食材を常に移動させるということ。

「冷凍庫を開けるたびに早く食べたほうがいいものは目立つところに移動させます。そうしないと死蔵食材がどんどん増えてしまいます。肉、魚グループ、野菜グループと、グループの中で移動させることが重要です」

  • 本多京子 さん (ほんだ・きょうこ)

    医学博士、管理栄養士

    NPO法人日本食育協会理事。数多くのメディアで栄養や食の情報を発信。『シニア世代の食材冷凍術』(講談社)ほか、著書は60冊以上。

『クロワッサン』1069号より

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