6月の初旬から青梅が出回り始めると、梅干し、梅酒、梅シロップ……どれを仕込もうかとそわそわします。一年でこの時期にだけしかできない保存食づくり。うっかりタイミングを逃して後悔した年も……。季節の恵みを、丹精込めて漬け物や果実酒を仕込むことを、昔の人は「梅仕事」と呼び、大切な年中行事にしていました。体にいい成分などがわからない時代から、梅は日本人の暮らしに溶け込んで健康を支えてきたんですね。
青梅の魅力は爽やかな酸味と香り。その正体はクエン酸を始め、酢酸、リンゴ酸といった有機酸です。梅は青い時期ほどリンゴ酸が多く、熟すに従って増えてくるのがクエン酸。クエン酸は、食べたものをエネルギーに変える「代謝」という仕組みを助けることで知られています。酸っぱいものを食べると疲れがとれるのは、エネルギーがうまく活用できるからなんです。
そんなに体にいいのに梅はなぜ生食しないのか、それは青梅にはアミグダリンという青酸配合体、いわゆる自然な毒が含まれるから。これは食べると頭痛やめまい、ときには呼吸困難を起こす危険な成分です。未熟な実ほど多く含み、特に種(仁)に多いのですが、熟すとともに少なくなり、加工することでも減ることがわかっています。そのため、漬け込んだり、加熱したりして無毒化した梅のエキスからは、有機酸のメリットだけが得られるのです。
水に溶けやすくて熱にも強い性質なので、梅酒や酢漬け以外にも、加熱したシロップやジャムなどアレンジを変えても健康効果がとどまっているので、好みの利用法でどうぞ。