1足す1はいつも2です。これを認めないと幻滅するだけ――ジャンヌ・モロー(女優)
1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は、フランスの大女優の言葉から、人間関係の極意を紐解きます。
文・澁川祐子
1足す1はいつも2です。これを認めないと幻滅するだけ――ジャンヌ・モロー(女優)
前回に続き、50歳になったフランスの大女優ジャンヌ・モロー(1928-2017)のインタビューからピックアップした名言を紹介します。
男性に求めることを問われた彼女は〈彼らに求めることなんて何もありません〉とキッパリ。ずっとそばにいてほしいなんて求めることより、まず他者への敬意を欠いてはならないと述べます。そして続くのが、〈1足す1はいつも2です〉というこの言葉。全文を引用してみましょう。
〈1足す1はいつも2です。これを認めないと幻滅するだけですし、ある種の幼稚な幸福のために他人に夢中になるのは、愛するはずの人に毒入りのプレゼントをするようなものです〉
1人と1人は、たとえ結婚したとしても、独立した1人の人間のまま。それぞれが抱える孤独というものを認めないかぎりはやがて幻滅が訪れる。相手を自分と同一視してあれこれ求めるのは、相手を殺すようなものだと辛辣な言い回しで伝えています。さらに彼女は、相手を認めないことが支配、被支配という偏った力関係につながることも鋭く指摘しています。
かつて白黒フィルムのなかで見た、力強いまなざし。それは、一貫して1人の人間として立とうとしてきたなかから生まれてきたものなのだと、このインタビュー記事を読んで納得です。
※肩書きは雑誌掲載時のものです。
澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。
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