料理家・尾崎史江さんが愛用する、手早く美しく仕上げてくれる台所道具。
撮影・黒川ひろみ 文・一澤ひらり
ケータリング仕事は、味同様に手早さ・美しさも大切。仕上がりの違う台所道具。
イベントで精進料理を作ったり、ケータリングを中心に活動している自然派の料理家、尾崎史江さんには、常に携行するキッチン道具がある。
「バットとだし濾し、キッチンばさみともりつけ箸です。まずダイソーで20年前に買ったステンレス製のバットですが、いまだに現役。高さが2cmもない浅いバットなので、冷蔵庫の隙間にスッと入れられて便利なんですよね」
20年使い続けてもベコベコにならず、錆びつくこともない。100円ショップのバットは優れものなのだ。
「使い終わった後はスタッキングして、場所を取らずに収納できるのもポイントが高いです」
同様に使い勝手がよく、尾崎さんの右腕となってくれているというのが、鳥井金網工芸のだし濾し。
「だしを取るのは毎日のことですが、濾すための道具を用意しなくてはいけないし、けっこう面倒ですよね。それがこれで一挙に解消されたんです。ザルの内側に目の細かい網がついていて、布などを使って濾さなくてもいい。しかもカスが出やすいかつお節をきれいに濾すことができて、濁りのないだしが取れるんですよ」
季節の移ろいを、料理に添える。道具の実力は繊細な作業に表れる。
それまではキッチンペーパーで濾していた尾崎さんにとって、簡単にだしが取れる画期的な道具となった。
「後始末もラクなんです。ザルで濾すと網の目にかつお節が絡みついてしまって洗うのが大変ですが、気持ちいいぐらいスルッと取れます。しかも不具合が生じた時にはメンテナンスをしてもらえるので、これは一生ものですね」
この日は「精進料理と日本酒、ワインのペアリング」というイベントで、尾崎さんが腕をふるっていた。
「春の予感を味わっていただくために、旬の走りの空豆、いまが盛りのカリフラワー、冬の名残のゆり根などを使って季節の移ろいを料理に添えたいんですよね。そのためには食材を丁寧に扱わないといけない。そこで活躍してくれるのが調理ばさみです」
尾崎さんが愛用するのは、シルキー万能はさみ。小回りがきいて、切断力があり、細かな作業を担ってくれる。
「普通の調理ばさみは刃先が分厚いのでまごつきますが、これは刃先がシャープなので、力を入れなくてもスッと切れるし、素材を傷つけません。知り合いのフレンチのシェフが魚や鶏をさばくのに使っていて、その切れ味に感動して合羽橋まで買いに行ったんです」
尾崎さんが調理の最終段階で心を配るのは盛りつけ。そこで使う箸はまさに手となってくれる大切なものだ。
「使っているのは10年ほど前、京都で購入した市原平兵衞(いちはらへいべい)商店のもりつけ箸です。平坦になりがちな和え物などの副菜を、ふわっと空気を孕ませながら立体的に盛りつけることができます。先端が細くなっているので、豆やごま一粒とか、小さいものもつまめるんです。お弁当を詰めるときは隙間に具材を入れられるし、はみ出たものを無理なく収めることもできますよ」
キッチン道具は使いやすさ、収納しやすさ、美しさの3点が揃っていることがポイント、と尾崎さん。
「クオリティが高く、シンプルに機能を発揮してくれる。それが使いやすさに直結して作業効率を高めます。ストレスを感じないで使えることが、暮らしの道具では一番大事ですからね」
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