そんな考えをガラリと変えてくれたのが、あるホームの所長さんの言葉でした。
「三三くん、たとえ笑っていなくても、お年寄りは君の噺を聞いて一生懸命想像したり楽しんだりしてるんだ。ふだんは夜中に三回はお手洗いに起きてしまう人が、落語を聞いた晩は朝まで起きずに寝られることもある。きっと身体の中のいろいろなことに好影響があるんだよ」
本当に雷に打たれたような思いをするとともに、今までの自分を恥じました。
それからは笑い声がほんのわずかでも、起きなくても、楽しく落語日和をお届けすることができるようになりました。
ただし、通常より大きな声でゆっくり演じることが必要です。ある施設で30分の落語をしゃべり、あと二、三言でオチというところで、最前列のご婦人が「すまないけれど、もっと大きな声で……最初からやってくれるかい」って。これには驚きましたねぇ。