ファッション

槇村さとるさん×地曳いく子さんおしゃれ対談50代からのカジュアルおしゃれはどう楽しむのが正解?

年齢とともに体形や顔の印象が変化して、「去年買った服が、今年は似合わない」ということも少なくはないこの年代。自分らしく、自信を持ってファッションを楽しんでいくためにはどうしたら? スタイリストの地曳いく子さんと、漫画家の槇村さとるさんに語ってもらいました。

「50代、60代のカジュアルを、自分たちで作っていかなきゃ」と地曳いく子さん。「この年齢になってくると、バッグや靴などの小物も大事」と槇村さとるさん。
「50代、60代のカジュアルを、自分たちで作っていかなきゃ」と地曳いく子さん。「この年齢になってくると、バッグや靴などの小物も大事」と槇村さとるさん。
 

地曳いく子さん(以下、地曳) いまの50代、つまり私たちの世代は、カジュアルが苦手な人が多いです。自分の親がこの年代の時と比べ、こんなに時代がカジュアルになるとは、みんな思っていなかったから。

槇村さとるさん(以下、槇村) 昔は、映画『シャレード』のオードリー・ヘプバーンみたいなファッションが目標でした。

地曳 そうそう。ツインニットに膝丈スカートでよかったはずが、目標としていた像から時代が軌道修正してしまい、戸惑っている。だって、50代や60代のカジュアルを、自分たちで作らなきゃならないんだもの。

槇村 きちんとしたスタイルなら、スーツを着れば簡単。でも、代議士みたいになっちゃう。堂々としていたいけれど、貫禄はいらない……。

地曳 そこが50代の難しいところです。上質なものを着ればいいというのでもなく、目指すのは「ラグジアリーでカジュアル」。

槇村 大人のカジュアルブランドは価格も高いから、買う時に数を絞らざるを得なくなります。そして、似合わないものも増えてくる。

地曳 似合うものが1シーズンに1着か2着見つかるなら、そこはステディブランドですね。若い時のように好きなブランドの服ならどれもというわけにはいかず、試着をすると端から惨敗……。

槇村 だって、痩せて見えなきゃアウトでしょう。それに、顔色がよく見えなきゃアウト。

地曳 サイズがぴったりでも、似合わない服というのが出てきますね。だから、「似合わなくておかしい」じゃなく、それが当たり前だと思ったほうがいいです。みんなが陥りやすい3つの罠は、「着回せる」「誰にでも似合う」「マストバイ(これさえ買えば今年は乗り切れる)」です。

槇村 着回せなくてもいいし、誰にでもじゃなく自分に似合えばいい。

地曳 服のコストパフォーマンスは「何回着るか」であって、「着回せるか」じゃないですね。いまはトップスとボトムスのバランスがとても微妙だから、自分のワードローブでベストマッチの組み合わせは1つか2つしかないはず。ベストマッチを崩してまで、違うコーディネートをする必要はありません。

「服を何枚に減らそう」とか「何通りの着こなしができるのか」で頭を悩ませることはない。減らしたワードローブがパッとしない服ばかりだったり、気に入ってないコーディネートで何通りも着回しするより、毎日着たいほど自分に似合う服が何枚かあればいい。
所有する服の数より、自分に似合う一着があるかどうかが大切。「服を何枚に減らそう」とか「何通りの着こなしができるのか」で頭を悩ませることはない。減らしたワードローブがパッとしない服ばかりだったり、気に入ってないコーディネートで何通りも着回しするより、毎日着たいほど自分に似合う服が何枚かあればいい。


槇村 単に服をいっぱい持っているだけに見えてしまう。

地曳 そう、ダサい服をとっかえひっかえ着ているように見えるだけ。だったら数は少なくても、ベストバランスのコーディネートを週2〜3回、着るほうがいい。レベルを下げてまで毎日七変化しなくても。

槇村 人として考えても、あんまり七色に変化していると、信頼できない感じになってくると思います。

地曳 人から「いつも同じ服ばかり着てるね」って言われたら、「ありがとう、これが私のスタイルなの」と言えるぐらいでありたいですね。

槇村 自分が好きなものってあんまり変わらないので、服を選ぶ範囲を一回狭めて考えてみるといいかもしれません。たとえばボーダーでも、着ていいボーダーと着ちゃいけないボーダーが出てくるから。

「試着室では厳しい目で自分と向き合うことが大切。店員さんの「お似合いです」に惑わされず、厳しい目でチェック。「あの服と合わせれば」「メイクをちゃんとすれば」似合うはず、は気やすめです。
試着室は、自分自身と向き合う真剣勝負の場。試着室では厳しい目で自分と向き合うことが大切。店員さんの「お似合いです」に惑わされず、厳しい目でチェック。「あの服と合わせれば」「メイクをちゃんとすれば」似合うはず、は気やすめです。
地曳 あるある。いままで似合っていたボーダーが、ある時「あれ?」という感じになり、似合う色と幅が限定されてきます。そこは嫌でも自分と向き合わなければ、次へは行けません。でも、みなさん自分と向き合うと、悪いところばかり見てしまうでしょう。そうではなく、いいところを探して、それを強調するために、自分と向き合うの。

槇村 写真を撮ってもらってチェックすると、冷静に、いまの自分の状態を知ることができるかな。

地曳 自分を知って、認めて、その中で一番の得意を生かしていけばいい。だからもう、似合わない色は着なくていいし、似合わない形のものも着なくていい。試着室で惨敗しても、そこで厳しく自分と向き合いましょう。「痩せたら」「すそを上げれば」など、「たられば」の服は、買わないほうがいい。

槇村 お店の人に「お似合いです、大丈夫です」と言われても、迷ったら買わないほうがいいですね。地曳 許容範囲の中でも上を目指さないと、どんどん奈落の底に……。


槇村 落ち込むよね。そのまま着て帰りたいくらい気に入って、もう、すぐに連れて帰りたい、明日の朝からずっと着る、2〜3日続けて着たい、くらいのものを買うのが一番。

 

体の太い部分が変わってくる。「ゆるめでカバー」は要注意。

地曳 服を買う時は、前後のサイズも試着してみるといいです(*3)。年齢に従って、体の太いところが変わってくるから、トップスとボトムスがMとL、MとSというふうにサイズがばらける場合があります。また、同じブランドでも、形によって大きさが全然違うことがあります。

槇村 気のきくお店なら、上のサイズや下のサイズも、試着のときに言えば持ってきてくれますよね。

地曳 サイズによって、すごく太って見えたり、痩せて見えたりするはずです。一番痩せて見えるのは、「ピチピチにならないジャストサイズ」。気になるおなかをゆるめの服でカバーすると、手首や足首が細ければいいですが、そうでないとボテッとして全体が太く見えてしまいます。

槇村 だったらほどほどの、本当の意味できつく見えないジャストサイズを着たほうが、痩せて見えます。

50代にとってはサイズ選びが重要。試着してピンとこなかったら前後のサイズも試してみる。ベストなのは体形がすっきり見える「ピチピチにならないジャストサイズ」。ゆるめのサイズはかえって太く見える。
50代にとってはサイズ選びが重要。試着してピンとこなかったら前後のサイズも試してみる。ベストなのは体形がすっきり見える「ピチピチにならないジャストサイズ」。ゆるめのサイズはかえって太く見える。


 

◎地曳いく子さん スタイリスト/多数のファッション誌で活躍し、キャリアは30年超。著書に『服を買うなら、捨てなさい』(宝島社)など。

◎槇村さとるさん 漫画家/婦人服売り場で働く主人公を描いた大ヒット作品『Real Clothes』の集英社文庫コミック版(全6巻)が今年順次発売中。

『クロワッサン』921号より

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