【前編】阿部絢子さんおすすめ「小分け」テクニックで夏を大掃除の季節にする。
撮影・岩本慶三 文・一澤ひらり
日本では年末の恒例行事になっている大掃除。寒い冬場に凍えながらがんばるよりも、日本の夏の高温多湿の気候を利用すればもっと手軽に、らくに、しかも経済的に家はきれいになる、と阿部絢子さんはすすめる。「場所や汚れの種類によって、掃除に適した季節ってあると思うの。たとえば水回りや窓の掃除は冬だと寒いし苦行でしかないけど、夏なら洗ってもすぐに乾くし、手が水で濡れても平気、むしろ気持ちいい。換気扇やグリルの油汚れも気温が高いほうがゆるんで落ちやすくなるから、洗剤に浸けて放置しておくだけできれいになるでしょ」
なんとなく慣習になっている冬の大掃除を、夏にしたっていいじゃないか。むしろ夏こそ大掃除に適した季節ではないか、という画期的提案なのである。掃除に限らず、暮らしというものは年齢や体力に相応して自分流に変えていっていい。いや、自分の中でしくみを変えていくことでしか快適性は得られない、と阿部さんは言う。「毎日の暮らしが平穏で楽しいものでなかったら、生きてる意味なんてないじゃない。年末の大掃除って1年間の手抜きのシワ寄せを、最後の最後のどん詰まりに何とか乗り越えるようなものだけど、それが強迫観念になって責め立てられたらつらいでしょ」
とはいえ夏の暑い日に、体を動かすのはつらいもの。体調を崩したり、熱中症の危険もある。「特に屋外での掃除は体力的にもきついので、できるところまでやって一旦休む。私、もう一気にできないから何でも小分けしてやってるのね。今回はその工夫も取り入れています」
たとえば時間があるときに掃除道具だけ出しておく。そして気が向いたときに実際に掃除する。シンクの下の掃除でも一度に全部やろうとしないで、とりあえず掃除したい場所に置いてあるものを出しておく。いわば「小分け」掃除。これぞ阿部さんの新境地だ。「70歳にしてそうなりました。ハードルを低くして、気軽に心地よく掃除できる自分のペースを見つけることも、暮らしの技じゃないかしら」
ここをきれいにするなら、こんな道具・やり方が便利。小分け掃除実践編。
【窓】洗剤不要。雨の日便乗でもきれいに。
ガラス拭きは窓からの眺望次第。「向かいのマンションの外壁しか見えないような窓なら壁と同じ。ピカピカにする必要はありません」ガラスに水をスプレーして、スクイージーで拭い取り、仕上げに新聞紙で磨く程度でツヤツヤに。「おすすめは雨の日に合羽を着てやるガラス拭き。窓打つ雨を利用してスクイージーを使うだけ。水でぬらす必要がないし、磨かなくてもいいし、超楽チンよ!」