1LDK家族4人暮らしのマキさんに習う、
黒字家計の暮らし方。
家族4人、1LDKの賃貸住まいのマキさんは、ものを極力「持たない暮らし」を選んだことで、家族との時間が増え、家事の時間や生活費の節約ができました。その余裕を確実に蓄えていくには? 本当に必要なものだけを選ぶ目を養うヒントなど今日から始められる節約の知恵を集めました。
会社勤めをしながら2人の女の子を育てる主婦が、家族4人、53㎡・1LDKのマンション住まいを広々と快適に送っている。その日々の生活をブログ「エコナセイカツ」で紹介して注目を集めているのがマキさん。ものを持たない暮らしを始める転機になったのは次女を妊娠したことだった。
「いま私は32歳で、長女が7歳、次女がもうすぐ3歳になります。次女の出産に備え、産休で1年間仕事を休んでいたときでした。子ども2人を育てるとなると教育費をはじめ、いろいろとお金がかかるようになるし、と思いながら図書館で本を読んでいたら、石けんや重曹が中性洗剤の代用になるってことを初めて知ったんです。家には用途別にたくさんの洗剤があったのですが、いままでムダな出費をしていたかもって、気がついたんです」
手始めは、家庭で使う洗剤をナチュラルな液体石けんに統一したこと。
「うちの場合は、液体石けんで食器も体も洗濯物も全部洗っています。泡立ちはあまりよくないけど泡切れがいいので節水になるし、排水の汚れも少ないし、手荒れもしなくなってハンドクリーム代を節約できました。ケミカルなものより自然に近いもののほうがお金がかからないし、体にもいいとわかったんです」
改めて生活を見直してみると、家の中は使わない消耗品であふれていた。ついつい百均やドラッグストアで無目的に買い込んでいたからだ。まずこれらを一掃してみようと思い立った。
「相当捨てましたね。そのときわかったのは、自分がいかにものに振り回されていたかということ。本当に必要か否かを見極めるようにしてから、ムダなものが減っていったんです。目指したのはシンプルライフ。それから仕事に復帰して、今度は家事の時間の節約を考え始めました」
料理では食材は週末にまとめ買い。野菜は冷蔵庫に入れる前に刻む、茹でるなど下準備して、3〜4品常備菜を作っておく。味噌汁は具材を1食分ずつ保存袋に入れたセットを作って冷凍するなど、忙しい平日の調理時間をいかに短くするか工夫を凝らした。
「朝ごはんはワンプレートで、常備菜や茹でてある野菜などを並べるだけ。火を使わずに10分で用意できますが、見栄えがよく、子どもたちが残さず食べてくれます。夕食は土鍋でご飯を炊き、メインには下味をつけておいた冷凍の肉や魚を焼きます。あとは常備菜を出すだけなので30分もかかりません」
こうした時短料理ができるようになって家事の負担が軽減し、時間にも気持ちにも余裕が生まれた。
【食】 時短の工夫から、
ていねいな食生活が生まれる。
手間をかけずにおいしい料理を作る秘訣。
「わが家ではお米を炊くのは晩ごはんだけ。温かいご飯に冷凍しておいた具材を入れて翌日の朝食用のおにぎりも作ってしまいます」
野菜の切れ端を集めてべジブロスを作ったり、安いときにまとめ買いした大根や椎茸を天日干しして、切り干し大根や干し椎茸を作ったり、日々のおいしい時短料理の秘訣は週末の下準備にある。
質のいい調味料を一升瓶で買えば断然お得。
ら、調味料はいいものを使ったほ
うがおいしくなることに目覚めた
マキさん。「昔ながらの伝統製法
で造られた無添加の醤油を使うと、
素材の味を引き立てるだけでなく、
その風味も生きてくる。値は張っ
ても少量で味が決まるのでお得。
一升瓶で購入して、使いやすい容
器に移し替えて使っています。
休日に冷凍したストック食材をフル活用。
調理道具はシンプルで使いやすいものを厳選。
普段使っているキッチンツールは必要最低限に。「ボウルもザルも1つだけ。その都度、洗って使えばいいだけなので不便はありません」。以前はホームベーカリーやジューサーミキサーなどもあったが、工夫次第でほかのもので代用できると、思い切って手放したら作業効率が格段に上がり、収納スペースのスリム化にも成功した。
日々の洗濯物を畳む手間を省けたら? 家事の時短を追求しているマキさんがたどり着いたのが、ハンガーに干した洗濯物が乾いたらそのままクローゼットに掛けるハンガー収納。もちろん、衣類は厳選して持ちすぎないことが前提だ。
「ファストファッションの服を5枚買うより質のいい1枚を買ったほうが自分の中のテンションが上がります。2年前から季節ごとにコーディネートを決めて、それに合わせた服を色違いで2着買うようにして、毎日交互に着ています。服選びに迷わずラクですね」
とりわけ驚くのは、マキさんと長女は、メインで使う下着を2セットずつしか持っていないということ。
「これも洗濯物を畳まずにいかに楽できるかを考えて編み出した方法(笑)。2セットしかないといま着ているか洗濯して干しているかのどちらかなので、収納場所が要らないんですよ」
その代わり、シルクの上質な下着を選び、半年に1回は買い替える。靴下も同じく2組を買って交互に履いている。
「生活道具など家で使っているものは、基本的に1アイテム1個ですね。はさみ、爪切り、筆記具なども一つ一つ気に入っているかいないかの判断をしたので、〝なんとなく〟持っているというものがなくなりました。いま手元に残っているものって、シンプルで品質のいいものなんですよね。たとえば野田琺瑯の製品とか、高品質で長い間使えるものを買えば、少々高額でも快適な暮らしの一助になるし、結果的に節約になると思います」
【衣】
持たない生活で、身だしなみは機能的に進化する。
悩むムダなし。通勤着は色違いの服を2着で
交互に着ている、なんて言うと、
ファッションにまったく興味がな
いように思われますが、トレンド
も意識しながら選んでいます。好
きなブランドをチェックして、季
節ごとのコーディネートを決める
のが楽しみなんですよね。飽きの
こないデザインで上質なものを選
ぶようになりました
朝の化粧はキッチンで。必要が生んだ合理性。
風呂場にある洗面台が使えない。
「私と子どもたちはシンクで洗顔
して、歯を磨きます。お化粧もこ
こでササッと済ませます。私はほ
ぼキッチンにいるので、化粧品や
コンタクトレンズもシンク上の戸
棚に入れています。ここに鏡を取
り付けてあるので、立ったままス
ピーディにできていいんですよ」
エコな液体石けんと画期的なトリートメント。
しい液体石けんはお得な大容量の
4ℓを購入し、ボトルに移し替え
て使っています。洗髪はシャンプ
ー効果のあるトリートメントを愛
用。泡は立ちませんがしっかり汚
れが落ちるんですよ。シャンプー
の手間を省けるし、袋に入ってい
てかさばらないのもいいですね」
着古したセーターで、靴がピカピカに
れのTシャツは、処分する前にもう
ひと仕事。「ウールのセーターで靴
を磨くとピカピカになります。Tシ
ャツは小さく切ってガスレンジの
油汚れや、子どもたちがこぼした
ものを拭いたりするのに使います。
靴下は手にはめてテレビなどのホ
コリ取りに使うと便利ですよ」
ものを持たない生活がていねいな暮らし方を生み出す、とマキさん。
「この家には次女を妊娠する前に引っ越してきたんですけど、その当時はものでいっぱいだったんです。いまのリビングは何もないすっきりした空間になっていますが、ソファもローテーブルもあったし、電気スタンドも置いていました。これらを一掃したのは、次女が生まれてハイハイとかしだしたら危ないと思ったからです。それで基本的に床には何も置かないようにしたらゆったり寛げるし、掃除機も簡単に手早くかけられて前より清潔で、暮らしやすくなりました」
一番大切なものは家族の安全と安心。そのために本当に必要なものだけを持つようにしたら、狭い空間でも広々と生活できて、時間にもお金にもゆとりが生まれてきたという。
「いまの暮らしをするようになってから、子どもと過ごす時間や料理を作る時間が増えましたね。ものを買わなくなったぶんのお金で家族旅行をしたり、子どもの習いごとの費用にしたり、形に残らないもののために支出をするようになりました。それは、家族との時間にお金を使うようになったということかもしれないですね」
家族が増えるからものを減らそうという、一種の逆転の発想から始まったシンプルライフ。不要なものは持たない、家事を簡略化するという節約生活がマキさんに精神的余裕をもたらして、ていねいな暮らしにつながっている。
【住】
狭くても、すっきりした空間にすれば快適。
ランドリーは見せる収納で、いつもきれいに
になっていて、多くは洗濯まわり
のものを収納。「棚には大容量の
液体石けんや柔軟剤、手洗いする
ときのホーローの洗い桶、日用品
のストックを入れたカゴなどを置
いています」。クリーニングに出
すものは壁にかけた袋に入れるよ
うにして、週末になったらまとめ
てクリーニング店へ持って行く。
寝室はベッドが主役。家族4人で寝るので、広々ゆったりと。
夜9時半ごろには、マキさんは子どもたちと一緒にベッドに入り、絵本の読み聞かせをしながら眠りについて、朝は6時半までぐっすり。睡眠は健康と活力の源泉だ。
何もないリビングだから好きなだけ遊べて、後片づけもラクちん
代用する気持ちが大事。清潔を保つ便利グッズ。
シンク下には掃除用品をまとめて収納。
「洗剤など水を使うので、水道に一番近いところに置いています。〈アルカリウォッシュ〉と漂白剤はシュガーシェイカーに入れています。片方の手でさっと振り出せてすごく便利なんです」。
着古したシャツは小さく切って口を拭いたりする布に。やわらかく肌にやさしいので、子どもにも安心。
◎マキさん シンプルライフ研究家 ブログ「エコナセイカツ」で時短や節約のテクニックを紹介。著書に『持たないていねいな暮らし』(すばる舎)。http://econaseikatsu.hatenadiary.com/
『クロワッサン』918号(2016年2月10日号)より