くらし

【山田ルイ53世のお悩み相談】いじめられていた過去が忘れられません。

お笑いコンビ髭男爵のツッコミ担当で、作家としても活動中の山田ルイ53世さんが読者のお悩みに答える連載。今回はいじめられた過去で未来に希望が持てないフリーターからの相談です。
  • 撮影・中島慶子

<お悩み>
30歳にしてフリーターです。
小学生から高校生まで、ずっといじめに遭っていました。大学在学中に、突然外の世界の全てが無理になって引きこもり、中退。 そこから7年ニートで、最近やっとパートで働くようになりました。今ではフルタイムで働いています。
将来に対する漠然とした不安があります。性格上も経歴上も正社員にはなれないと思います。
小学生の頃に私をいじめてきた奴が、奥さんと子供を連れて買い物に来ていて、幸せそうで、私はいじめられていた思い出を全く忘れられずに生きているのに、奴は私のことは完全に覚えていない感じで……トイレに駆け込んで号泣してしまいました。
私の人生、なんなんだろう……。(タナカ/女性/レジ打ちパートの30歳です。)

山田ルイ53世さんの回答

残念ながら筆者には、タナカさんの気持ちを一瞬で楽にする、そんな効果抜群の"啓発フレーズ"の持ち合わせがありません。

筆者は、かつて中学2年生から、6年間引きこもっていました。
相談者と違って"いじめ"を受けたわけでもなく、自業自得なのですが、結果「人生が余ってしまったな……」、「なかなか社会に入っていけないな……」という感情に長い間苛まれることになります。

加えて、芸人で飯が食えるようになる30歳くらいまでは、かつての友人達との間に出来た取り返しのつかない"差"を、時折発作的に自覚しては、
「それに比べて俺は……」
と絶望する、なんてこともよくありました。

なので、「今ではフルタイムで働いている」ということが、相談者にとってどれほどの前進なのかよく分かりますし、そんな風に持ち上げられたところで、あなたの留飲は下がらないだろうこともまた想像が付きます。

色々申し上げても仕方がないので、一つだけ。
身も蓋もなく思い切って言ってしまいますが、過去のことはもう忘れましょう。
後悔、不安、怨念、怒り……今の相談者は、不要なアプリをダウンロードし過ぎたスマホと同じ。
"重く"なりすぎて、見たいサイトも見られない状態です。
一旦、全て削除して身軽になってはどうでしょう。

筆者の経験上、これが一番効率が良く、やりたいこと、やるべきことに集中できる気がします。
人はとかく過去を"総括"し、"意味付け"しようとしますが、あまり良いことだとは思いません。
過去から糧を得ようとし過ぎるのも良くない。
とにかく、優先順位をはっきりさせ、今は自分に集中する。
とりあえず、やる。
これに尽きます。

"忘れる"ことは、「勝ち」ではないでしょうが、「負け」でもありません。
唯一「負け」があるとすれば、相談者がこの先も過去に囚われ、人生の時間を自分に使うことが出来なくなることです。
これは、大損。
御一考を。

山田ルイ53世●お笑いコンビ、髭男爵のツッコミ担当。本名、山田順三。幼い頃から秀才で兵庫県の名門中学に進学するも、引きこもりとなり、大検合格を経て愛媛大学に進学。その後中退し、芸人へ。著書に『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス)、『一発屋芸人列伝』(新潮社)、近著に『一発屋芸人の不本意な日常』(朝日新聞出版)。
⇒ 公式ブログ

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