ただのガイドブックにならないよう、紹介の仕方もこだわった。
「情報だけを淡々と並べると読み手も疲れて、最後までたどり着けない。だからオーナーと交わした会話を入れたり、本に載せる写真も自分で撮ったりと、できるだけ主観的に。そのほうが読んでいる方も、本当に行った気持ちになる。あとは、分類の仕方も工夫しました。最初は、あいうえお順にするつもりでしたが、あまりに単調すぎるかな、と。そこで“芸術から〟“好きな動植物から”など自分なりにネーミングの原則を考えました。そして、掲載したい店のリストを作って、一つずつ由来を書き出していきました」
各章のタイトルのつけ方にも川口さんの思いが溢れている。
「たとえば、人名が由来の店を紹介する“それは誰ですか?”という章のタイトル。誰かの名前が店名になっているカフェを訪れた時は、いつもこう聞いているんです。単に“人名”と名付けてもよかったのですが、読んだ人の好奇心がくすぐられるような、魅力的なタイトルにしたかった」
カフェが好きな人に読んでほしいという。
「その日の気分で何となく開いたページを読んで、店の世界観と店主の人生観を味わうのもいいですね。あとは、もし自分の店が持てるならどんな名前にしようかなと、ワクワクしながら読んでもらえたらうれしいです」
店名に隠された物語を、コーヒーを飲むかのように丁寧に、一文一文味わいたい。