くらし

【稲垣えみ子さんに訊く】“身の丈”を意識すれば、節約は楽しく続けられる。

自分の生き方や今後を見据えて、お金と上手に向き合う人を取材。日々の暮らしでの取捨選択を参考にしたい。
  • 撮影・加瀬健太郎

冷蔵庫をやめて、初めて自分の身の程を知りました。

冬のご馳走献立の一例。玄米ご飯、梅干し、海苔、大根おろしポン酢がけ、ごぼう味噌漬け、人参ぬか漬け、干しズイキと油揚げの味噌汁。
たいていの調理はこれで可能。主な調理道具はミニカセットコンロ、ストウブの小鍋、南部鉄器製ダッチオーブン、鉄瓶、保温用鍋帽子のみ。
冬が旬の葉野菜をベランダで。葉野菜はベランダに設置したコンテナ菜園から収穫。冬の時季は成長が遅いぶん、味が濃厚になるという。
掃除嫌いが一変した!掃除機を手放し、ほうきとちりとり生活に。するとこまめにひと掃きするような掃除大好き人間に変わったという。

「節電生活を続けるなかで、結果的に家電製品をほとんど手放しました。ガスも契約していないし、電気代も最低料金です。だいぶハードコアなミニマリストになりましたが、最初からストイックなところを追求していたわけではなくて、そっちのほうが面白くなったからなんです」

アフロヘアがトレードマークの稲垣えみ子さんは、東日本大震災をきっかけになるべく電気を使わない生活にシフトした。さらに震災から5年後には、勤めていた会社を辞める選択をする。50歳を迎えての退職だった。

「会社で働くということは極論すれば、お金に人生を支配されているということ。実は40歳手前で、人生80年生きるとしたら、これから後半戦を迎えるなかで、下り坂のことも考えなくてはいけないのかなと思ったんです。上り坂の価値観のままでいると、お金がないから我慢するとか、そんなことばかり考えて生きていくことになる。それは絶対いやだなと。お金がなくてもハッピーなライフスタイルをどうにかして確立しなくてはいけないと思ったのが、会社を辞めたことの原点になっていますね」

家電製品に加え、お金(給料)という必需品を断った稲垣さん。

耐久生活を強いられるかと思いきや、意外な世界が見えたという。
「それまで私は、たくさんの便利なものを補給してくれるチューブにつながれているようなものだった。でも、そのチューブをひとつひとつ抜いて、ベッドから起き上がって歩き回ってみると、(チューブが)ない世界のほうが楽しいことが詰まっている永遠の鉱脈でした。何かを手に入れなくてはと必死になることもない、実に自由な世界だったんです。だから、『稲垣さん、まだ節電生活続けているんですか?』と聞かれますが、私からすると、今さらやめる選択はありえないですね」

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