くらし

【稲垣えみ子さんに訊く】“身の丈”を意識すれば、節約は楽しく続けられる。

  • 撮影・加瀬健太郎
木のおひつは万能道具。ご飯が冷めてもおいしいのに驚くというおひつは『日本橋木屋』製。しゃもじ、カトラリーは木製のものを使用。
お得で手軽な、おから味噌。本来の味噌づくりには大豆を煮て潰す工程が必須だが、おからと豆乳をよく混ぜるだけでもできた!
梅干し作りは意外と簡単! 稲垣流は完熟梅を洗いヘタを取り、容器に梅の重量の20%の塩を混ぜて詰め、重しを載せる。数日後、天日干しに。
これ以外の酒器は買わない。酒器専門の骨董品店で5万円で購入した李朝のぐい呑みと大阪錫器のちろり。どちらも一生使い続ける予定だ。
これさえあれば、なんとかなる。毎日の食事に欠かさないものは保存容器で常備している。手前から順に、梅酢、梅味噌、米、梅干し。

生きるうえで必要なお金は意外と少なくてすむ。

テレビ、エアコン、洗濯機、電子レンジ……稲垣さんは節電生活で、それまで頼っていた多くの便利なチューブを外してきた。なかでも、その後の価値観にも影響を与えたのは冷蔵庫。

「時間稼ぎをして、将来のためにものをとっておく冷蔵庫は、夢の入った欲の箱なんですね。ただ、夢は詰め込みすぎると何を詰めたかわからなくなって、箱の中で腐っていく。結局、自分の欲のサイズがわからなくなる」

稲垣さんは、老後のお金にも冷蔵庫と似たところがあるという。

「自分は一日にいくら必要か? 300円で足りるのか、1万円あっても足りないのかは自分の生きるサイズがわからないと、答えられない。そうなると、老後資金に1億円はかかると言われたりすると、不安になるんです」

欲の箱を捨てた稲垣さんは、自ずと食材については、その日調理するものだけを買うことになる。

「自分ひとりで食べられる量って本当に少ないです。私でいえば1度の食費は200円いくかいかないか。生きていくのに必要なお金って思いのほか少ないんだなあと思うと将来の不安やストレスがなくなりました。それに、冷蔵庫がないと必要なもの以上は買えないから腐らせることもない。さらに必要以上のものをもらったら、すぐに近所の方に配るので知り合いも増えました。それまではないものを探す生活をしていたのが、あるもので暮らす生活にしてみたら、足りないどころか意外と余っているんですね」

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