ほとばしる、パッション。切ない、胸の内。あまりにも効果的な、倒置法。
いやぁ……。
このままメロディをつけて高橋真梨子に歌わせたくなるような、なんとも情熱的なお手紙をありがとうございます。ぐっときました。
1行目、“私には結婚して15年の夫と子供2人います!”や、プロフィールの“30代後半、主婦!”など、いったいなぜそこに、という場所に唐突に現れる感嘆符(!)もすごくいいですね。道ならぬ恋に溺れる女性が、気を抜くと今にもすべてを捨て去って彼のもとに走りたくなってしまいそうになるところを……はっ、だめよ。私は一体何を考えているの。冷静にならなくちゃ。そんなことできやしないわ。なぜなら私には結婚して15年の夫と子供2人が、いるんだか……ら! と葛藤の末、ギリギリの意志でもって自分をなんとか静めようとする様子がまざまざと目に浮かんできました。きっとこの2年間、電話だけでなくメッセージのやり取りも十分過ぎるほど重ねられたのでしょう。言葉に熱い魂が宿ってます。
会えなくても2年間、ほぼ毎日のように電話をくれるほどマメで、ヤキモチで身を焦がすほど絶えず多くの人に囲まれている。元彼はよほどサービス精神旺盛で、魅力的な方なのでしょう。それに対して旦那さんの方はというと、ちょっと可哀想になってしまうほど言及自体が少ないですね。影が薄いというよりも、身を焦がす恋愛に不可欠な障害要員として都合よく活用されている感すらあり、たいへん不憫です。
どうしたら良いのか教えてください、というのが今回のお悩みなのですが、そうは言っても何をどうしたいのにままならないのかさえ今ひとつ不明瞭といいますか、そもそもまりもジンギスカンさんの人生の満足度、すでにかなり高そうにお見受けします。もちろん、旦那さん以外に熱烈に好きな人がいるというのはたしかに旦那さんが知れば裏切り行為と感じるでしょう。まりもジンギスカンさんも、好きな元彼とできることなら会ったり、食事をしたりされたいという思いがおありになるのはわかります。でも、これほど思いを募らせながら、ストイックに2年間も電話だけで留めていらっしゃる。普通、不倫に走るかどうかの瀬戸際の人にはやっぱり、そのままいくと取り返しがつかないことになっちゃうよ、やめなよと言いたくなるものですが、まりもジンギスカンさんはすでに2年という揺るぎない実績があるのだから、もはやそういうプレイとして楽しまれていると言いますか、なんだかんだ、このあと10年くらいはもう、電話だけで過ごせそうじゃないですか? つまり、私が言いたいのは、まりもジンギスカンさんは今のこの、完全には満たされ切れない生殺しの状況を、官能とともに贅沢に味わい尽くせる豊かな感受性をお持ちだということです。
それでももし、いつかいよいよ電話だけでは物足りなくなってきたら、また私に、今回のようなお手紙を書いてください。今度は1万字くらいの大作をひとつ、お願いします。きっとそれだけでもかなり効くと思いますよ。全部食べてしまって空っぽになったクッキー缶の残り香をかぎながら、それだけで、あたかもクッキーを再び口にしているかのように、芳醇な味わいをまざまざと思い出し堪能に浸ることができる。まりもジンギスカンさんって、きっとそんな人です。
で、それはいいとして、どうしたら良いのか教えてくれよって旦那さんの声が聞こえてきます。旦那さん、お手紙お待ちしてます。