深夜のJ-WAVE番組が誘った未知のエリア体験。│しまおまほ「マイリトルラジオ」 | アートとカルチャー | クロワッサン オンライン
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深夜のJ-WAVE番組が誘った未知のエリア体験。│しまおまほ「マイリトルラジオ」

モーリー・ロバートソンがテレビに映る度、つい見入ってしまう。かつて彼がパーソナリティーを務めていたJ-WAVEの「Across The View」のリスナーだったから。

それは高校生の頃。ファッション雑誌を買い漁り、原宿の美容院に通い、聴く音楽は洋楽か渋谷系。逆に言えば、ギャグ漫画、地元で買った服、米米CLUB、そしてAMラジオから卒業(一時的に、だが)した年頃であった。

家族が床に就き、飼い猫は外に出かけ、何もかもに見放されたような気分になる深夜。ラジオをつけるとそこにいるのは外国人か日本人かもわからないモーリー・ロバートソンだった。ひとりテンション高く、音楽、文化、社会について語りまくる。容姿も経歴も肩書きも知らない。ただわかるのは、彼が“変人”だということだけだった。

「Across The View」には、ひとつ特別な思い出がある。番組で知った「中野ブロードウェイ」へ一人で足を運んだこと。好奇心をくすぐられるままに紹介されていた「タコシェ」や「まんだらけ」へ行き、「鬼畜」「ガロ」「エログロ」の世界を目の当たりにした。あの頃はダビングされた映画のVHSを売る店もあって、そこでわたしは「Trainspotting」のVHSを買って帰った。

その直後、深夜テレビに出ているモーリー・ロバートソンを観た。ヒョロリと痩せた体に、肩の下まである長髪、派手なシャツ。“変人”のイメージは崩れなかった。今やお茶の間の顔になっている彼を見ると、雑然として怖かった当時の中野ブロードウェイを思い出す。

しまお・まほ●エッセイスト、漫画家。1997年『女子高生ゴリコ』でデビュー。著書に『マイ・リトル・世田谷』。

『クロワッサン』982号より

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