『元禄お犬姫』著者、諸田玲子さんインタビュー。「歴史の中の女性たちにスポットライトを。」 | アートとカルチャー | クロワッサン オンライン
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『元禄お犬姫』著者、諸田玲子さんインタビュー。「歴史の中の女性たちにスポットライトを。」

もろた・れいこ●1954年、静岡県生まれ。『其の一日』で吉川英治文学新人賞、『奸婦にあらず』で新田次郎文学賞を受賞。歴史時代作家クラブ賞作品賞に輝いた『四十八人目の忠臣』はテレビドラマ化された。近著に『森家の討ち入り』(講談社)ほか。

撮影・青木和義 文・後藤真子

カバーイラストのなんとカワイイこと! さまざまな犬の愛らしい姿に、犬好きならば(そうでなくとも)頬が緩むに違いない。しかし、書名に「元禄」とあるとおり、これは五代将軍・徳川綱吉の世、悪名高い「生類憐(しょうるいあわれ)みの令」が出されていた江戸の物語だ。

「長い江戸時代の中でも元禄は、生類憐みの令や赤穂事件があり、恨みや仇討(あだう)ち、いろいろな思いが混在していた時代です。人や物事が一時期交錯し、けれどいつまでも続かない……私たちの人生ってそういうもので、そこを切り取って描きたいというのが、まずありました」、と著者の諸田玲子さん。

野犬も「お犬様」として、その扱いに大の男ですら困るなか、猛犬をもたちまち手なずけることから「お犬姫」と呼ばれる娘・知世が本作の主人公だ。知世の父は、中野の御囲(おかこい)で働く武士である。

「野犬を収容するために、幕府が29万坪の土地を使い、江戸じゅうの竹を切って犬小屋を作ったのが御囲です。そのために青梅街道ができたというほどで、10万匹の犬が集められていました。以前にそれを調べて知った時、とてもびっくりして。歴史の表舞台から落ちている話でしょう?」

御囲の犬の鳴き声に体調を崩した母の静養のため、知世は小石川の剣術道場・堀内家の離れに越してきた。道場には謎の浪人・河合真之介や赤穂藩士の顔もあり、町で起こる犬絡みの事件に知世が駆り出されるうちに、江戸城では浅野内匠頭(たくみのかみ)の刃傷沙汰(にんじょうざた)が――。

「昔ながらの侍の時世から、私たちが捕物帳などで知っている新しい江戸へと歴史が動いていく時で、それを象徴しているのが赤穂四十七士の討ち入りです。現代でもそうであるように、大きな事件が起こったら、直接関係していなくてもみんなが影響を受けますね」

その瞬間を、市井に暮らす娘の目を通し、新しい角度で照らしだす。物語を彩るのは、俳諧や、一杯盛り切りの食を商うけんどん屋、四季折々に着物を縫い直して着る暮らしなど、細やかに描かれる江戸の文化や風物だ。時代小説になじみの薄い人でも楽しめる。

諸田さんはこれまでも、女性が主人公の時代物を書いてきた。

「歴史の中の女性はスポットライトが当たらないし、当たるとしても突出した人だけ。でも普通の女性だってパワフルで、伸び伸び生きていたはずです。男性の歴史家が書いた資料は、女性が寝屋にはべるばかりで腹が立つ。だから私が書かなきゃと思ったの(笑)」

中央公論新社 1,600円

『クロワッサン』981号より

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