【大和和紀さん・林望さん対談】愛・嫉妬・権力…千年を超えてなお、『源氏物語』に惹かれるわけ。
いつかは読破したい、世界最古の恋愛小説。いままた注目される動きがあります。雅なその世界を作品にしたふたりの対談で、神髄に触れてください。
撮影・青木和義 文・三浦天紗子 撮影協力・ホテル椿山荘
この先の1000年も、語り継ぎたい全54帖。
大和 振り返ると、私は、28〜29歳でこの連載を始めて、終了まで足かけ14年かかりました。描く前によく、原文を声に出して読む作業をしたのですが、朗読すると本当にその映像が浮かんできます。源氏物語にはその世界に人を引きずり込んでしまう魔力がある。ほかの仕事をはさみ、頭を冷やしながらやったのが、案外良かったように思います。
林 私も謹訳に取り掛かってから、東日本大震災が起き、父や妹など自分の家族も病気で失いました。私自身も喘息が悪化し、この仕事を終えるまで生きているだろうかと思うくらいでした。それくらい命を削る仕事でしたね。やり遂げられて良かったです。
大和 1000年生きているだけのことはある、力強い作品です。物語そのものに“命”がありますよね。
大和和紀(やまと・わき)●漫画家。1948年生まれ。『はいからさんが通る』で第1回講談社漫画賞受賞。1979年〜’93年に『あさきゆめみし』を執筆。
林 望(はやし・のぞむ)●作家、国文学者。1949年生まれ。2013年『謹訳 源氏物語』全10巻で毎日出版文化賞特別賞受賞。現在、改訂新修に着手中。
『クロワッサン』979号より
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