その新聞の劇評の資料は、段ボールに2箱にもなった。劇評を読み込んでいくのはさもないことでも、それらを傍証で固めていくのが大変な作業だったのだそうだ。
「ひとつの演目の劇評を雑誌や評判記などと照合していく。そうして立体的にするのが大変でした。他の人と違って、團十郎は実態がわからない。たとえば、五代目菊五郎なら細かいしぐさで演って、大衆にわかりやすい芝居をする。けれど、九代目は肚芸を得意にしていて無言の思い入れみたいなところで芝居をつないでいく。それを、資料を使いながら、読むとイメージできるようにするのが難しかった。でも楽しかったですよ」
そうして浮かび上がってきた九代目團十郎から、何を学ぶことができるのだろうか?