「ちょうど小説家として読んでくれる人がいるのかとか自信がなくなり始めた頃で。何を書いていくべきか、必要とされているかどうかもわからなくて。そんな頃に、田部井(淳子)さんに出会えたのは本当に大きな出来事でした」
’75年、女性登山家として世界初のエベレスト登頂を果たした田部井さん。その出会いから、彼女の半生をベースにした山岳小説『淳子のてっぺん』が生まれた。
「小説家としての後半戦の、この先どうなるかわからないような時にあの小説を書けたというのはすごくありがたいことだなと。あんなに力を注ぐことが60歳になってできるとは思わなかったので」
その出会いはさらに新たな山へと導く。還暦を迎えた年にエベレスト街道に挑戦、高山病に苦しみながらも標高5000m級のナンガゾンピークまでを踏破した。
「本当に素晴らしかったですね。景色が想像以上にすごくて、脳がしばらくついていけないほど!」