くらし

いまどきのトラブルの特徴は? トラブル相談の現場の方に聞きました。

  • 撮影・西邑泰和、松本幸子 イラストレーション・内田尚子 執筆 回遊舎・(酒井富士子・番場由紀江・尾崎寿子)、 鈴木弥生

特徴1・離婚や相続、借金が主流。 SNSや悪質商法が最近増加。

『身内がトラブルに遭ったときの手続き』を企画するにあたり、スタッフがまず気になったのが、一般の人が法的トラブルに巻き込まれるのはどんなケースが多いかということ。そこで、法制度に関する情報提供や経済的に余裕のない人に対する弁護士費用等の立て替えなどを行っている日本司法支援センター(法テラス)に協力していただき、40〜60代の女性からの相談が多いトラブルをあげていただきました。

その結果、上位にあがったのはやはり「離婚や男女トラブル」「相続や遺言」「金銭の借り入れ」などです。法テラスの運営に長く関与していた田中晴雄弁護士は「離婚事件は、よくあるトラブルに見えますが、本人にとっては初めてのこと。しかも、トラブルの内容や解決の糸口は一人一人違います。感情的にもなりがちですから、法律の力を借りることが重要なトラブルの解決の代表といえるでしょう」と解説します。実際、裁判所を利用する離婚案件は増え続けており、2017年は過去最高でした。

そうした中、法的解決が必要になっているトラブルとして最近増えているのが、「SNSによるトラブル」や「悪質商法に巻き込まれるトラブル」。架空請求や振り込め詐欺などの手口はますます巧妙になっているようです。

特徴 2・独居高齢者の増加、携帯電話の普及。 証拠を残さず人を騙す手口が増加。

同じく法テラスで高齢者問題などを中心に多くの事案を担当している太田晃弘弁護士は「高齢化社会で、ひとり暮らしの高齢者が増えています。またご近所づきあいも減り、人間関係も見えにくくなっています。家族の目の届かないところで、高齢者がターゲットにされやすい環境なのです」と、現代社会の隙間をつく犯罪の増加を指摘します。実際、振り込め詐欺や架空請求は、携帯電話による連絡や、ネットの閲覧からはじまることが多く、特にひとり暮らしの高齢者は狙われやすいと言われています。  被害が発生しても、加害者が誰かわからず、証拠も残っておらず、「仕方ない」と泣き寝入りをする羽目になることも。

しかし、「そのままにしてはダメ」と田中弁護士。まわりの人や専門家に相談すれば、なぜトラブルに巻き込まれたのか、どうすればよかったのかがわかり、同じようなトラブルに何度も巻き込まれることを防ぐことができるからです。

特徴3・人の命にかかわるDV、ストーカー。 事件増加で法律が制定。

DV(ドメスティック・バイオレンス)やストーカーも最近増え続けているトラブルです。  配偶者や恋人などから殴られる、蹴られるといった暴力を受けるだけでなく、人格否定したり生活費を渡さないなど、生活全般を否定するようなケースがあります。また、別れ話がきっかけで起こりやすいのがストーカー行為。繰り返し、相手につきまとう行為を言いますが、待ち伏せや押しかけだけでなく、携帯電話やメール、SNSなどに連続して連絡してくるケースは現代ならではです。 「これらのトラブルでは、人の命にかかわるような重大な被害が発生することがあり、被害者を救済する必要性が高いことから、ストーカー規制法やDV防止法ができたのです」(田中弁護士)。トラブルは突然やってきますが、まずはまわりの人に相談すること。自分の身の安全を守りながら、「悪いことは悪い」と主張することから始めましょう。

田中晴雄(たなか はるお)さん/弁護士

早稲田大学法学部卒。昭和62年に弁護士登録。平成10年に田中晴雄法律事務所を開設し、代表を務める。平成16年日本弁護士連合会事務次長に就任。平成25年~29年9月まで日本司法支援センター常務理事。相続、交通事故、離婚、債務整理、不動産トラブル、企業法務などの案件に取り組んでいる。

太田晃弘(おおた あきひろ)さん/弁護士

平成16年に弁護士登録。平成18年に法テラスのスタッフ弁護士となり、岐阜県へ赴任。司法過疎地での弁護士業務に取り組む。平成22年から東京パブリック法律事務所で司法アクセスが困難な高齢者・障がい者の案件に取り組む。平成24年に法テラス東京法律事務所に所属。社会福祉士・精神保健福祉士。

クロワッサン特別編集 身内がトラブルに遭ったときの手続き』
— マガジンハウス 編
定価:880円 (税込)

本書では法テラスのデータを元に、特に40代?60代の女性の相談が多かったにトラブル実例を紹介。
それをケーススタディとして、法律的に適切な対処法をレクチャーしていきます。
まさに「困ったときの法頼み」。一家に一冊必携です。

監修:
田中晴雄(たなか はるお)さん/弁護士
早稲田大学法学部卒。昭和62年に弁護士登録。平成10年に田中晴雄法律事務所を開設し、代表を務める。平成16年日本弁護士連合会事務次長に就任。平成25年~29年9月まで日本司法支援センター常務理事。相続、交通事故、離婚、債務整理、不動産トラブル、企業法務などの案件に取り組んでいる。

太田晃弘(おおた あきひろ)さん/弁護士
平成16年に弁護士登録。平成18年に法テラスのスタッフ弁護士となり、岐阜県へ赴任。司法過疎地での弁護士業務に取り組む。平成22年から東京パブリック法律事務所で司法アクセスが困難な高齢者・障がい者の案件に取り組む。平成24年に法テラス東京法律事務所に所属。社会福祉士・精神保健福祉士。

編集協力:日本司法支援センター(法テラス)、独立行政法人国民生活センター、 新宿区福祉部高齢者支援課(新宿区役所高齢者総合相談センター)、 悪質商法評論家 多田文明、武蔵野大学教授 佐藤佳弘

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