『息子が人を殺しました』著者、阿部恭子さんインタビュー「マイノリティな立場の人々をサポートしたい。」 | アートとカルチャー | クロワッサン オンライン
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『息子が人を殺しました』著者、阿部恭子さんインタビュー「マイノリティな立場の人々をサポートしたい。」

あべ・きょうこ●1977年生まれ。2008年、東北大学大学院在学中にマイノリティをサポートしたいと「ワールド・オープン・ハート」を設立し、2011年に法人格を取得。企業からの助成金や寄付金等により、仙台を基点にして加害者家族の支援を行う。

撮影・青木和義

インパクトのあるタイトルのこの本を書いたのは、日本で初めて加害者家族支援をするNPO法人、「ワールド・オープン・ハート」を立ち上げた阿部恭子さんだ。軽犯罪から重大殺人事件まで、1200件以上の犯罪者の家族、つまり加害者家族が直面するつらい実情が明らかにされている。

「様々な形で加害者家族のサポートをしていますが、ほとんどがホームページなどで私たちの存在を知って、まずは電話相談してきます。それから、必要に応じてマスコミ対策や、住宅、仕事などの生活に関わること、警察署や裁判所などへの同行などを行っています。夫が逮捕された主婦の場合、転居を迫られても収入がないので引っ越し先がなく、仕事もすぐに見つからない、というのはよくあること。さらに、裁判費用や賠償金などを合わせると、500万円以上の出費があることも珍しくない。それをどのように工面していくかまで相談していきます。加害者家族が直面する問題は、ほかにも数え切れないほどあります」

自分の家族が犯罪者になることはない、と他人事のように感じる人も多いだろう。しかし、夫や子どもが交通事故の加害者になり得ないと、誰が言いきれるだろう。

「家族を送り出すときに『気をつけてね』と言いますが、これは交通事故に遭わないように、被害者にならないようにという願いが込められていると思います。でも、加害者になる可能性だってある。そんな想像をしたら、もしも周りに加害者家族がいたとしても、もう少し柔らかな対応をできるようになるのではないでしょうか。人間ですから感覚的に嫌悪感を抱くのは仕方のないこと。でも、石を家に投げ込むとか、プライバシーをインターネット上に晒すなど、社会正義を謳って加害者家族を直接的に攻撃することは許されません」

活動を始めて今年で10年。加害者家族という単語はずいぶん浸透してきたと感じているが、さらなる課題はすでに明確だ。

「最近、海外で罪を犯した人の家族をサポートする相談があり、大使館に日本で受刑できるようにかけあっています。また、現在はインターネットで情報を適切に検索できる人ばかりが相談に来ている状況。加害者家族についての知識がもっと一般化したら、加害者家族になってしまった知的障がい者などのさらなる社会的弱者のサポートに回れる。私の代では無理かもしれませんが、ゆくゆくはそうなってほしいです」

幻冬舎 800円

『クロワッサン』970号より

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