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26坪でもゆったり。中庭をリビングの一部に取り込むコの字の家。

敷地が狭くても、床面積が広くはなくても、ゆとりを感じる住まいは建てられる。その工夫の数々を建築家の実例に学ぶ。

撮影・小出和弘 文・後藤真子

約35坪の細長い敷地に立っている、外から見るとこぢんまりとした一軒家。延床面積は約26坪というその家に入ると、床に用いられたスギの無垢材の直線や、ガラス張りの壁と表現したくなるほどの大きな窓が目に入り、空間の広がりに驚かされる。快い木の香りに心も和む。

「エアコンが苦手なので、風通しのよい家を希望しました」と話す施主の村中明彦さんと妻の佳子さんは共に50代。自宅の一室で一緒に仕事をしながら暮らしている。

設計を担当したのは、建築家の半田雅俊さん。「敷地幅が狭く、南には大きな家が迫る土地で、一般的には日照と通風を確保するのは難しい条件でした」。そこで考えたのが、家屋をコの字形にし、広い中庭を設けて風の通り道と採光を確保する方法。プライベートスペースであるダイニングと仕事部屋をつなぐ中庭は、三辺を大きなガラス窓に囲まれ、隣家との境の一辺は塀で目隠しされている。完全にプライベートな空間だ。室内の床と同じ高さにウッドデッキを敷くことによって、屋外であるはずの庭がリビングの一角に取り込まれているかのような印象。

「まさしく中庭がリビングです。天気がいい日はここでごろりと横になっています」と明彦さん。このほか屋上には気軽に出られるよう考慮されたテラスもある。本やレコードなどの趣味のコレクションはロフトや階段横に棚等を造作し、生活空間から見えない形で収納。キッチンやダイニングにも物が見えない、散らからない配慮が随所に。室内は視覚的にすっきりさせ、外の空間に身近に触れて暮らす、その工夫が家を広く感じさせる要素になっている。

「はじめから全部を決めず、細部は村中さんと相談しながらじっくり考えていきました」と半田さんが振り返ると、「そのとき決めなくてもいいことは『じゃ、先延ばしね』と(笑)。それが成功のポイントでした」。この信頼感と相性のよさもいい家をつくるポイントのよう。

ダイニングは一部にロフトを設けた 吹き抜け。中庭に面して大きな開口 部があり、面積以上に広く感じる。
ダイニングは一部にロフトを設けた 吹き抜け。中庭に面して大きな開口 部があり、面積以上に広く感じる。
家の中央に位置する庭。室内の床と つながるようにウッドデッキが敷か れ部屋の延長の感覚で利用できる。
家の中央に位置する庭。室内の床と つながるようにウッドデッキが敷か れ部屋の延長の感覚で利用できる。
対面キッチンは背の高い佳子さんに合わせた高さで造作。横幅は標準より 短めだが、奥行きがあるので調理台は使いやすく、機能もじゅうぶん。
対面キッチンは背の高い佳子さんに合わせた高さで造作。横幅は標準より 短めだが、奥行きがあるので調理台は使いやすく、機能もじゅうぶん。
豊富な蔵書は階段横に備えた書棚に 収納。居室側から見ると間仕切り壁 の裏なので、生活空間はすっきり。
豊富な蔵書は階段横に備えた書棚に 収納。居室側から見ると間仕切り壁 の裏なので、生活空間はすっきり。
ダイニングのロフトは縁なし畳を敷いた 和のしつらえ。転落防止と目隠しになる 端の造作部にはLPレコードの収納も。
ダイニングのロフトは縁なし畳を敷いた 和のしつらえ。転落防止と目隠しになる 端の造作部にはLPレコードの収納も。
明彦さんお気に入りの 屋上テラス。寝室から 室内階段で気軽に上れ るように設計した。
明彦さんお気に入りの 屋上テラス。寝室から 室内階段で気軽に上れ るように設計した。

『クロワッサン』951号より

●半田雅敏さん 一級建築士/尊敬するフランク・ロイド・ライトの設計組織タリアセン(シカゴ郊外)に学び、暮らしに寄り添う家を提案。

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