『わたしらしく働く!』服部みれいさん|本を読んで、会いたくなって。
うまくいかないのは、自分を知るチャンス。
撮影・服部福太郎
体本来の力を引き出す冷えとり健康法の本をヒットさせたり、編集長をつとめる雑誌で自然農法を特集するなど、生来のナチュラリストとの印象がある服部みれいさん。まさか25歳の頃にはパンクファッションで、会社に泊まりがけで仕事していたとは! 本書は駆け出しの編集者時代から現在に至るまでの仕事の変遷を、失敗も含めて隠すことなく披露した自伝的エッセイだ。
「新人の頃は、自分がいま思い出しても吹き出すくらい、本当にへっぽこすぎる! すごく大勢のかたに成長させてもらいました、給料をいただきつつ。たったひとりで仕事ができるようになったわけではないんです」
肺結核の療養のため退社後、復帰にあたり、塾のチューターとフリー編集者の二足のわらじを選択するなど、なかなか波乱万丈。「3年経っても食べていけないなら郷里に帰る」「基本的になんでもやるが(当時は野暮ったかった)オーガニックもののデザインをよくするため、おしゃれな仕事を率先する」など先を見越したルールを設定。紆余曲折を経て編集長として雑誌を軌道に乗せてからも、売りすぎず適正な部数で完売とする、拠点を東京から岐阜に移すなど、常に現状を吟味し、より自分が良いと判断したほうへ進む姿勢はすがすがしい。
「振り返ったら道は1本だったという感じです。私があまり器用じゃないこと、最初から恵まれた環境でなかったのが、逆によかったのかも。現状の社会になじまないと感じるなら、そこに自分らしさを発見する好機があるのだと思います。本当に求めている道を見つけられれば、必ず自分で切り拓けます。理解者もきっと現れる」
出版業界が話の中心だけれど、職種が違っても、読者は自分にあてはめて考えを巡らせる。若い頃にしてみたかったことを思い出したなどという主婦からの感想も多く寄せられているという。
「そういう思いって、消しちゃうんですよね。もっともらしい言い訳でふたをしてしまう。それを開けるきっかけになったらうれしいです。自分から湧き出てくる思いを大切に自分らしく生きていいんですよと応援したい。失敗したっていい。真剣に取り組んだうえでの失敗なら、そこから得るものがたくさんあります」
世の中で言われる一般的な理想像に寄せていくのではなく、自分が本当に幸せと感じる生き方をいまからでも模索したくなる。
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