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『暗殺の冬』クリストフェル・カールソン 著 棚橋志行 訳──構造にしびれる北欧の警察小説

文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。

文・瀧井朝世

『暗殺の冬』 クリストフェル・カールソン 著 棚橋志行 訳 文春文庫 1,430円
『暗殺の冬』 クリストフェル・カールソン 著 棚橋志行 訳 文春文庫 1,430円

じつに重厚な北欧ミステリ。とにかく構成にしびれた。

2019年、離婚した作家の「私」はストックホルムを離れ、故郷の村に一人帰ってくる。そんな折、この村で30年以上前に発生した〈ティアルプの怪物事件〉という、主に若い女性が被害にあった殺人&殺人未遂事件について、新事実が判明したというニュースが舞い込む。元警察官の高齢女性、エヴィと親しくなった「私」は当時の話を聞きだし、小説にしようと試みる。

最初の事件発生は1986年。この年、実際にスウェーデンの首相、オロフ・パルメが路上で射殺された。警察がその事件の対応に手一杯の時に、この村で事件は起きた。第一被害者の女性を発見した警察官のスヴェンは、その後も犯人逮捕に執念を燃やすが、失意の出来事が彼を襲う。その後、月日が流れ、父に続いて警察官となったヴィダルが意外な手掛かりを発見する。

もちろん物語は再び「私」の視点に戻る。意外な展開に唖然とするが、スヴェン親子をはじめ長年にわたる人々の苦しみや葛藤が、端正な文章世界で深く掘り下げられて読ませる。複雑な感情模様を織り上げた注目作だ。

  • 瀧井朝世 さん (たきい・あさよ)

    ライター

    著書に『ほんのよもやま話〜作家対談集〜』『偏愛読書トライアングル』など。

『クロワッサン』1168号より

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