住まいの中に“猫的街並み”を作る──ペットも人も快適に暮らせる家
撮影・渡部健五
かつては外に出て行く猫が多かった。しかし感染症や交通事故などのリスクから、現在は環境省からも完全室内飼育が推奨されている。ずっと家の中だとかわいそうだという声もあるが、
「それは家の中が猫にとって退屈な空間だからです。猫に必要な刺激は、日日の居場所と移動できるスペース。立体的に移動できるキャットウォークやキャットツリー、階段などで構成される道路に交差点、トイレ、見晴らし台などのスポットを用意すれば、猫は思う存分遊んで動き回ることができ、運動不足になることもないはずです。考え方としては、猫的な街並みを家の中に作り上げるイメージです」
廣瀬さんの家はアトリエをはじめ、さまざまな猫専用空間が混在しているが、建材やデザインに工夫がなされ、人の住まいと美しく調和している。
「たとえばこのキャットウォークには組子細工が施されています。猫がどこまで喜んでいるかはわかりませんが(笑)、見た目もきれいだしここを猫が歩いているとちょっとうれしいですね」
「キャットツリー」や「猫階段」で縦の動きができるように
猫は高いところに移動したり、上から見下ろしたりするのが大好き。廣瀬さんの家も、ロフトやキャットツリー、階段など、高低差のある設備が意識的に配置されている。
「水平移動するキャットウォークだけではなく、縦に動けるようにすれば、運動不足解消、肥満予防になるし猫も退屈しません」
「キャットウォーク」はメインとサブ、複数作る
“猫的街並み”に欠かせないのが、複数のキャットウォーク。廣瀬さんの家も、メインの大通りのほかに、脇道、交差点、段差のある道やダイニングにつながる道など、変化に富んだキャットウォークがたくさんある。
「ただ設置するのではなく、猫が歩きたくなるものであること。道を選ぶワクワク感や、猫同士がすれ違える幅も必要です。そして、せっかくなら歩いている姿が眺められると人間も楽しいですよね。猫の反応がイマイチなら増設も」
避けるべきは、一方通行の行き止まり。
「人間社会も、行き止まりの先はゴミだらけで汚れています。猫しか進入できないスペースにつながるキャットウォークだと不衛生になってしまうので、人が掃除できることも条件です」
猫が登れる頑丈な柱状の「爪研ぎ」
専用の爪研ぎ器を置いているのに、家具や柱をボロボロにされてしまったという家も多い。
「小さくて軽いと安定感がないため、ほかに良さげなものを見つけたらそっちで研いでしまうのでしょう。サイザル麻を巻いた柱を〝猫柱〞として設置すると、爪が研げるだけでなく上に登る楽しさも得られるので、よく使ってくれますよ」
猫1匹に1つ以上の「窓」を
猫には、刺激や癒やしが得られる場所が必要。それは、高い位置から部屋を一望できるような見晴らし台と、変わりゆく外の景色が眺められる窓。特に窓はたくさんあったほうがいいが、
「大きいと防犯上のリスクがあるので、幅や高さが小さい、猫専用の小窓がいいでしょう。最低でも猫の個体数分は用意してあげたいですね」
『クロワッサン』1140号より
広告