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サンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館!?「西洋絵画、どこから見るか?—ルネサンスから印象派まで」(国立西洋美術館)

文・青野尚子

日米の名コレクションの「対比」でわかる西洋美術

1点だけではわからなくても、他の作品と比べると見えてくることがある。『西洋絵画、どこから見るか?』展はアメリカのサンディエゴ美術館のコレクションと、開催館である東京の国立西洋美術館のコレクションを対比するもの。サンディエゴ美術館の出品作品は全て日本初公開だ。

マリー=ギユミーヌ・ブノワ《婦人の肖像》1799年頃 油彩/カンヴァス サンディエゴ美術館 以下すべて(C)San Diego Museum of Art
マリー=ギユミーヌ・ブノワ《婦人の肖像》1799年頃 油彩/カンヴァス サンディエゴ美術館 以下すべて(C)San Diego Museum of Art

たとえばロココの画家、マリー=ガブリエル・カペと新古典主義のマリー=ギユミーヌ・ブノワの女性像を並べた「ファッション対決」では、前者のボリューミーなドレスと後者のギリシャ彫刻の女神像のようなドレスの違いが楽しめる。

15世紀半ばのヴェネチア・ルネサンスのカルロ・クリヴェッリの聖母子像がイコン画のような崇高さを漂わせるのに対し、フィレンツェの盛期ルネサンスのアンドレア・デル・サルト作品は実際の親子のような温かさだ。

カルロ・クリヴェッリ《聖母子》1468年頃 油彩/板 サンディエゴ美術館
カルロ・クリヴェッリ《聖母子》1468年頃 油彩/板 サンディエゴ美術館

ヴェネツィアの盛期ルネサンスの画家、ジョルジョーネの肖像画が来日するのも注目だ。33歳で早逝したジョルジョーネの現存作は30点程度、日本で見られる機会は極めて少ない。モデルの特徴をありありと描き出す肖像画の存在感は圧倒的だ。

またスペインのサンチェス・コターンは若くして僧籍に入ったため、彼の静物画は6点しか残っていない。会場にはコターンの精緻な静物画と、彼の次の世代の静物画家フアン・バン・デル・アメンの作品、そして宗教的なメッセージが込められたスルバラン《神の仔羊》が並ぶ。比べることで画家の個性が際立つ。

ジョルジョーネ《男性の肖像》1506年 油彩/板 サンディエゴ美術館
ジョルジョーネ《男性の肖像》1506年 油彩/板 サンディエゴ美術館
出品される全88点のうちサンディエゴ美術館蔵の49点が日本初公開。ルネサンスから19世紀末までの600年にわたる西洋美術のハイライトをたどりながら、その見方を学ぶことができる。
 
『西洋絵画、どこから見るか?―ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館』
3月11日(火)〜6月8日(日)
国立西洋美術館(東京都台東区上野公園7・7)
TEL.050・5541・8600(ハローダイヤル)
9時30分〜17時30分 月曜、5月7日休(3月24日、5月5日、5月6日は開館) 
観覧料一般2,300円ほか
  • 青野尚子 さん (あおの・なおこ)

    アート・建築関係のライター

    著書に『超絶技巧の西洋美術史』(池上英洋さんとの共著、新星出版社)など。

『クロワッサン』1137号より

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