望海風斗さん「台本を読み進むと、カラスの人柄が見えてきて引き込まれました」
撮影・高橋マナミ 文・望月リサ
高い歌唱力で、ミュージカルで活躍する望海風斗さん。舞台『マスタークラス』で演じるのは、20世紀最高の歌手と謳われるマリア・カラス。
「カラスというと、人に対して厳しく強い女性というイメージでした。台本を読み始めた当初はその印象どおりでしたが、読み進めていくと彼女の人間らしさやチャーミングな人柄が見えてきて引き込まれました。歩んできた道のりはけっして恵まれていたものではなく、彼女が戦い抜いて勝ち取ったもの。そんな彼女の人生が伝わってくる内容だったので、ぜひ演じてみたいと思いました」
今回は、自身にとって初挑戦となる歌なしのストレートプレイ。
「ミュージカルでは歌で役の心情を見せられますし、たとえ自分が迷ったとしても音楽が修正してくれますけれど、今回はそういうわけにはいきません。舞台をご覧になる方が、私がしゃべっていく様子からカラスがどういう人物なのかを受け取っていくことになるわけです。言葉ひとつひとつが大事になると思いますので、これからどう役を作っていくか楽しみなんです」
歌はないが、イタリア語の発音とともにオペラの発声を練習中とか。
「カラスはオペラ歌手でしたから、オペラの発声の声の響かせ方があるはずで、それを知らずに演じるのは不自然じゃないかと思ったんです」
役を演じるのに心情を理解するのは当然だが、体の使い方や発声からも役にアプローチしてゆく。
「そう考えるのは男役だったからかもしれません。体の使い方って、その人がそれまでの時間をどう生きてきたかがすごく表れるところだと思うんです。言葉を発しているときだけじゃなく、どういう歩き方をするか、どんなふうに立つかだけでも、人によって全然違っていますよね。今回でいえば、オペラをやってきた人特有の声がある気がして。そうやっていろんな角度から役を掘り下げていくのは楽しいです」
丁寧な役作りに定評があるが、「役を説明するのが苦手」と話す。
「台本を細かく読み砕いて、相対する人にどの場面でどんな印象を与えたらいいかを考えています。そうやって相手の視点から役を作っていって、それが合わさってひとりの人間が出来上がっていく感じなんですよね」
本作は、現役引退後のカラスが若きオペラ歌手たちにおこなった講義録がベース。生徒を相手に語る中、彼女の舞台に向かう姿勢や覚悟、さまざまな思い出が立ち上がっていく。
「ミュージカルであってもやっぱりお芝居が基本です。歌の力を借りずにお芝居を高めていくことで、今後の舞台に生かせていけたらいいですよね」
舞台『マスタークラス』
ジュリアード音楽院で行われたマリア・カラスのマスタークラスの講義を元に、彼女の栄光と挫折を描く。
作:テレンス・マクナリー
翻訳:黒田絵美子
演出:森新太郎
東京公演:3月14日(金)~23日(日)、世田谷パブリックシアター。
大阪公演:4月12日(土)〜20日(日)、サンケイホールブリーゼ。
長野、愛知公演もあり。
『クロワッサン』1136号より
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