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片岡仁左衛門さん、尾上松緑さん、片岡愛之助さん3人の由良之助が登場。 昼夜通しの『仮名手本忠臣蔵』の豪華競演は見逃せない。3月の歌舞伎座へ!

東京・歌舞伎座の3月の演目は、『通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)』。出演者の皆さんの意気込みと、4月歌舞伎座「四月大歌舞伎『彦山権現誓助剱(ひこさんごんげんちかいのすけだち)毛谷村六助』の取材会の様子を合わせて紹介します。

撮影・文:クロワッサンオンライン編集部

『通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)』(3月4日初日、27日まで)は、江戸を賑わした大事件「赤穂浪士の討入り」を題材にした屈指の人気作。3月の東京・歌舞伎座では昼夜通しで上演します。

同演目の歌舞伎座での通し上演は、平成25年の新開場杮(こけら)落とし以来の12年ぶり。そして今回はAプロ・Bプロと世代を超えての豪華競演による上演という豪華さです。公演を前に、大星由良之助(史実での大石内蔵助)を演じる片岡仁左衛門さん、尾上松緑さん、片岡愛之助さんが、浅野内匠頭と内蔵助、四十七士の墓所がある東京・高輪の泉岳寺をお参りして法要に参列。意気込みを語りました。

右から尾上松緑さん、片岡仁左衛門さん、片岡愛之助さん
右から尾上松緑さん、片岡仁左衛門さん、片岡愛之助さん
片岡仁左衛門さん、尾上松緑さん、片岡愛之助さん3人の由良之助が登場。 昼夜通しの『仮名手本忠臣蔵』の豪華競演は見逃せない。3月の歌舞伎座へ!
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右から尾上松緑さん、片岡仁左衛門さん、片岡愛之助さん
片岡仁左衛門さん、尾上松緑さん、片岡愛之助さん3人の由良之助が登場。 昼夜通しの『仮名手本忠臣蔵』の豪華競演は見逃せない。3月の歌舞伎座へ!

「大切なのは歌舞伎の型ではなく、心です」と仁左衛門さん。

これまでたびたび由良之助を演じてきた仁左衛門さん。対して松緑さんと愛之助さんはともに今回が初役。

仁左衛門さんは2人に伝えたいこととして「大切なのは由良之助の心ですよね。歌舞伎様式の型としてではなく、心を伝える。それをしっかり捉えてほしいと思います」。

まあ大丈夫でしょう、と微笑むと、答えて松緑さんは「正直、自分には縁のない、手の届かないお役であろうと思っていました。歌舞伎の中でもど真ん中、サッカーで言えば10番、野球で言えば4番バッターです。今回務めさせていただくということで、十五代目の兄さんにお稽古していただき、自分ができる精一杯のことをやりたいと思っています。教われることを全て教わり、吸収したい」。続けて愛之助さんも「身の引き締まる思いです。おじの言う通り、心を大切にしながら勤めていきたい。私にとっても由良之助というのは雲の上の役で、まさか自分が、と思いましたので…。しっかりとおじから色々なことを見習い、盗み、ひと月務めたいです」

愛之助さんは昨年末の怪我からの久し振りの復帰になる。「もう大丈夫でございます。安心して見に来てください」。仁左衛門さんも「本当に早い回復で驚きました。去年の暮れからわずか2ヶ月で、彼の精神力には驚きます。それにしてもここまで綺麗に治るとは。前より良くなったんじゃないの…?(笑)まあ、もともと好い男ですからね」

仁左衛門さんと並び、和やかな中にも緊張感のある表情の松緑さん、愛之助さん。
仁左衛門さんと並び、和やかな中にも緊張感のある表情の松緑さん、愛之助さん。
「2人とも幾つも大役を経験しているので大丈夫」と仁左衛門さん。
「2人とも幾つも大役を経験しているので大丈夫」と仁左衛門さん。
「教われることは全て吸収したい」松緑さん
「教われることは全て吸収したい」松緑さん
「怪我では皆さまにご心配おかけしましたが、もう大丈夫です」愛之助さん
「怪我では皆さまにご心配おかけしましたが、もう大丈夫です」愛之助さん
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仁左衛門さんと並び、和やかな中にも緊張感のある表情の松緑さん、愛之助さん。
「2人とも幾つも大役を経験しているので大丈夫」と仁左衛門さん。
「教われることは全て吸収したい」松緑さん
「怪我では皆さまにご心配おかけしましたが、もう大丈夫です」愛之助さん

『三月大歌舞伎・通し狂言 仮名手本忠臣蔵』での大星由良之助の配役は以下の通り。
片岡仁左衛門 昼の部Aプロ「四段目」/夜の部Bプロ「七段目」「十一段目」
尾上松緑 昼の部Bプロ「四段目」
片岡愛之助 夜の部Aプロ「七段目」「十一段目」
公演日程をじっくり見て観劇プランを練ろう。

『三月大歌舞伎・通し狂言 仮名手本忠臣蔵』
公演詳細・チケットはこちら▼

続いて行われた仁左衛門さんの取材会での一問一答。3月公演の由良之助役に続いて4月公演『彦山権現誓助剱(ひこさんごんげんちかいのすけだち)』で毛谷村六助を演じることについても話が及びました。

――『忠臣蔵』四段目の由良之助を演じるにあたり、一番大事にしなければいけないと思うことは何でしょう?

「やはり、大勢の人を束ねる、それだけの人物になれるかどうかということ、それが一番大事ですね。四段目以降、由良之助という名前は舞台に登場しなくても芝居に出てきます。それほどの人物ですから、それを匂わすだけのものが出ればと思います」

――由良之助の心とは、具体的にはどのようなものですか?

「忠義心ですね。当時の武士の家来というのは忠義心があるんですけれども、特に彼の場合、群を抜いているんじゃないか。人を束ねる人物であり、風格があり、塩冶判官(史実では大石内蔵助が仕える浅野内匠頭)との無言の心の通じ合い、判官が信頼しきっている人物…そういうものを備えているのが由良之助。特にこの四段目は、通し公演でなければ出来ない場面です。全てが揃わないと、整わないとできないので、やはり特別な思いがありますね。これは最後とは言いませんけれども、この年だったら何の役をやっても今回が最後と思うことが多いので。悔いの残らないように努めたいと思っています。

――前回の四段目出演は平成中村座(2008年=平成20年)で、塩冶判官役は中村勘三郎さんでした。今回は息子の勘九郎さんが演じますけれども、親子の判官と共演することにどんな思いで臨まれますか?

「非常に楽しみでね。前回は十八代目(勘三郎)さんと、その次は息子さんとやる。仲が良かったものですから、あの世でも喜んでくれてるだろうなと思ってね。親子の判官さんで由良之助を務めたのは、恐らく過去にもないんじゃないかと思います。彼への追善の気持ちも正直ありますね」

――今回は若手のかたが多く初役につきます。忠臣蔵という歌舞伎にとって大事な演目で、下の世代に伝えていく上で意識されていること、これをキモとして伝えていきたいというものはありますか?

「正直申し上げて、特別と言えば、他のどの役もみんな特別ですね」


――忠臣蔵が通しでかかる機会はあまりないので、若い世代にとって筋が分からないということが多くなっています。分かりやすくするための歩み寄りはありますか?

「分からないとおっしゃるのは、例えば七段目が出ても五、六段目をやらないと分からないとかそういう問題ですよね。今回は話の発端からやるので、分かっていただけると思うんです。ですから、歌舞伎はせいぜい通しでやったほうがいいんです。例えば『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』にしても、寺子屋だけやって桜丸が…とか言ってもお客さんは何のことかわからない。でも今年は『菅原〜』も通しでやるわけですから、せいぜいこれも宣伝してもらって、多くのお客さんに足を運んでいただけるように…よろしくお願いします(笑)」


――松緑さんと愛之助さんお2人に教えられるとのことですが、どういった形をとってお教えになるのでしょうか?

「今回このお役に関しては、2人は若いと言いましてもすでにみんなご自身でいろんな大役もしていますし、ある程度自分でやらせる。それにアドバイスという形ですね。もっと若い人たちなら別だけども。いろんなやり方があるから、『これが間違い』と言うのはなかなか難しいんです。なにをもって間違いというかというような。心理と動きが一致しているかとか、ここをもう芝居で少し訴えた方がいいんじゃないかとか、セリフ回しのアドバイスとかはこれからの稽古であるかもしれませんが、手取り、足取りというお稽古ではないですね。もうそれぞれ興行も受け持ってやっている人たちですから」

――稽古ですが、お家によって、役者さんによってもやり方が違うと思うんですけれども、松緑さんだったら松緑さんなりのやり方で一致してるかっていうのを、ご覧になってアドバイスするような感じですか?


「そうですね。愛之助の場合はやはり松嶋屋の型というものを受け継いでもらわないとならないから、父が思っていたことを伝えたいと思っています。松緑くんの場合は、今回はお宅のやり方でやったらどう?とは言ったんですよ。ただ、紀尾井町のおじさん(二代目 尾上松緑)の映像は残っていないんですよね。紀尾井町のおじさんというのは七代目の高麗屋のおじさん(七代目 松本幸四郎)から来ているわけですから、初代の白鸚のおじさん(初代 松本白鸚)とかがなさっている。でもそれでも白鸚のおじさんから、次の十二代目の團十郎さんとか今の白鸚さん、これはやり方が違う。皆さんそれぞれ違うからどれを採ってもいいんですけど、彼は今回うちのでやりたいと言うんで、ではそれでやりましょう、と。」

――ご自身が出る・出ないに関わらず、『仮名手本忠臣蔵』の何段目のお話に魅力を感じますか?

「私はやはり、四段目、五・六段目…、七段目、九段目も好きですね(笑)」

――仁左衛門さんご自身は、お父さま(十三代目片岡仁左衛門)からどのような教えを受けられましたか? お父さまはかつて、由良之助を国立劇場で3ヶ月通しで演じられましたが、どのような思いでご覧になりましたか。


「私は生では観られなかったんですけども映像を見て、正直に申し上げまして、非常に体力が弱って覚束ないもので、そのなかで演じる苦心を感じました。また非常に写実なんですよね。あそこまでの写実は芸が到達しないとなかなかできない。やっぱりそれは素晴らしいものですね。でも残念ながら、やはり目が不自由ということもあり足元も覚束なかったものですから、父本人は決して満足できるものではなかったと思うんです。
でもその中での素晴らしさというのがあるのですが、それは歌舞伎を知り尽くした人しか分からない。初めて見た人は

『何だあれは』となる。我々から観たらあそこまで芸が到達しないとできないものではあったのですが。でもそれを分かってくださるお客様も多い。本当に歌舞伎というのは特殊なお仕事で、奥が深くて、見た目だけではなく感じるものがやっぱり大事なんですよね」

――お若い頃から忠臣蔵について、お父さまから折に触れてなにかお話をいただいたことはありますか?

「とにかく忠臣蔵はどの役でもいきなり変わりができなきゃいけないとか。そういうことは言われてました。全役の動きはもう他の役者もみんな習得していると思うんですよ。セリフの細かいところは台本が要るにしてもね、そういう心がけ。父は青年歌舞伎の頃はいろんな役を日がわりでやってるんですよ」

――4月公演の毛谷村の話を伺います。六助という役が、最初は好きでなかったけれど演じてみたら楽しかった、という発言を聞いたことがあります。どこが楽しかったのでしょうか?

「六助の人物を好きになっちゃってね。純朴でお人好しで、親を大事にする。前にあまり乗り気でなかったというのは、あまり芝居をちゃんと見ていなかったのだと思います。人物の魅力に加えて、芝居運び、芝居構成が見事です。最後の盛り上がりとかね」

――今回は松本幸四郎さんとのダブルキャストですね。

「幸四郎は幸四郎で、向こうのやり方でやると思います。できればダブルキャストの両方で、皆さんに観ていただきたいですね」

『仮名手本忠臣蔵 四段目』大星由良之助(片岡仁左衛門。H20.10中村座)撮影・福田尚武
『仮名手本忠臣蔵 四段目』大星由良之助(片岡仁左衛門。H20.10中村座)撮影・福田尚武
『彦山権現誓助剱』毛谷村六助(片岡仁左衛門。H28.4大阪松竹座)撮影・田口真佐美
『彦山権現誓助剱』毛谷村六助(片岡仁左衛門。H28.4大阪松竹座)撮影・田口真佐美
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『仮名手本忠臣蔵 四段目』大星由良之助(片岡仁左衛門。H20.10中村座)撮影・福田尚武
『彦山権現誓助剱』毛谷村六助(片岡仁左衛門。H28.4大阪松竹座)撮影・田口真佐美

『四月大歌舞伎 彦山権現誓助劔』

<あらすじ>
豊前国毛谷村に住む六助は、農民ながら剣術の達人として知られる心優しい男。あるときの剣術の試合で、微塵禅正の「親孝行をしたい」という願いを聞き入れてわざと破れる。さらに山賊に追われた幼い弥三松を助けて自分の家に連れ帰る。ある日、家に1人の虚無僧が訪ねて来て……。

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