はじめての介護:高齢者向け施設探しの3要素は「目的・予算・立地」
イラストレーション・保立葉菜
一口に老人ホームといっても、いざ本気で探す段階になると、あまりの種類の多さに呆然となってしまう。支援や介護をしてくれる介護型か、比較的元気な人向けの住宅型か。費用を抑えられる公的か、サービスの幅が広い民間か。さらに要介護度によっても初期費用によってもさまざま。
どのように選び、入居を進めたらいいのだろうか。
「施設選びに絶対の正解はありませんが、探す条件としては、入居目的、予算、立地。これらを同時並行で考えていく必要があります。逆に言えばこの3つを考えれば自然と絞られるはず」
と、介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さん。多くの人は予算のみで選ぶから失敗してしまうという。
「まず、何のために施設に入るか、施設に何を求めているのか。介護をしてもらうためなのか、今まで2人暮らしだったのが母が亡くなり父ひとりでは不安だからなのか、または本人がもう家事などせずシニアライフを謳歌したいからなのかでも、種類は変わります」
次に予算。施設自体はあっても、なかなか入居できないという声が絶えないのは、主に金銭面が原因だろう。
「例えば月額利用料が25万円でも、要介護になるとその額では収まらなくなってくるので、実は有料老人ホームに入れるのはかなり限られた人なんです。夫婦でも夫は会社員なら厚生年金があるから支払えたとしても、夫が亡くなり専業主婦の妻ひとりになると金銭的に難しい」
「また、パンフレットには書かれていないオプション料があることを考慮していなかったり、入居後に要介護度が高くなると費用も上がり当初考えていた予算よりかかるようになったりも。さらには、余命を短く見積もる人は多いので、途中でお金が足りなくなってしまうことも。だから特養など低コストの施設に人気が集中しますが、人気ゆえ空きが少ないのが現状です」
そして見落としがちな立地の問題。
「親と子が離れて暮らしている場合、必ずしも子の家の近くにある施設が一番いいとは限りません。例えば高齢になるまで住んだことがない地域の場合、食事の味付けや方言などが合わないとつらいものがある。もちろん、医療依存度が高く頻繁に病院にかかる場合は、入院手続きなどで子どもの出番も多いため一概には言えないのですが、充分考慮すべき点ではあります」
希望や条件がまとまってきたら、実際に見学してみること。できれば当事者の親と一緒に複数の施設を見に行ったり、体験入居をして、事前調査だけでは見えてこない部分を確認しよう。
「親子といっても考え方が違うので、すり合わせが必要です。お互いの優先順位を考え、しっかり対話しましょう」
親の現状、施設に求める条件をチェック
※あくまで目安であり、施設ごとに詳細は異なります。
A:本格的な介護が必要
食事や排泄、入浴、着替えなど、日常生活の全般においてケアを必要としている。
B:身の回りのことは自分でできる
介護は必要なく、ほとんどのことは自分自身でできる。見守りや、多少のサポートがあると安心。
C:認知症に向けた介護が必要
認知症の症状があるが、可能な限り自立した日常生活が送れるように専門的なケアを提供してほしい。
D:費用はできるだけ抑えたい
本人の年金や貯えの範囲内で、なるべく利用料が安く収まる施設を選びたい。
E:看取り対応をしてほしい
病状の回復が見込めず、死期が間近に迫った場合には、自然に亡くなる過程を見守ってほしい。
F:一時的な入居後、在宅に戻りたい
終身で入居するのではなく、治療やリハビリを終えたら住み慣れた自宅に戻って暮らしたい。
公的施設
特別養護老人ホーム(特養)
A、C、D、E
介護老人保健施設(老健)
A、C、D、E、F
介護医療院
A、C、D、E
ケアハウス(軽費老人ホーム)介護型 ※特定施設
A、C、D、E
ケアハウス(軽費老人ホーム)住宅型
B、D
民間施設
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)※特定施設
A、C、D、E
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
B、D
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
A、C、D
介護付き有料老人ホーム ※特定施設
A、C、E
住宅型有料老人ホーム
B
『クロワッサン』1134号より
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