選び方から使い分けのコツまで、マニアが語りつくす、洗剤のすべて。
撮影・小川朋央 文・中島茉莉花 撮影協力・錫村商店事務所
トイレ用漂白剤だけでは不充分。 酸性洗剤で清潔を保つ。
藤原 トイレも、基本の掃除は中性洗剤を使うのが無難です。便器は陶器だから問題が起こりづらいですが、便座はプラスチック製なので、アルカリ性や酸性の洗剤を使うと変色する恐れがあるんです。我が家は、中性のトイレマジックリンで、便器の掃除も、便座や蓋、床や壁の拭き掃除もしています。中性洗剤で落ちないのは便器の縁の裏などにこびりついた尿石。酸性洗剤を使わないと取れませんよね。
錫村 はい。ネオナイスなどの酸性洗剤の出番です。ただそれだけでは落ちなくて、研磨が必要。バケツに入れた水を便器に注ぎ入れると水位が下がり、水栓レバーを引かないと戻らないので、その状態で研磨します。汚れに直接、ネオナイスをかけて、水垢ペーパーで擦るんです。後はトイレの水を流すだけで完了。尿石はニオイの元なので、しっかり撃退し、清潔を保ちましょう。
藤原 「ブラシで擦らなくても真っ白になるからトイレ用漂白剤しか使わない」という声も耳にしますが、汚れによっては色素は漂白できても、汚れそのものは落とし切れていない可能性があることも知っておくといいですよね。
錫村 トイレ漂白剤はサボったリングといわれる黒ずみのうち、雑菌の繁殖により生じるものに効果がありますが、水垢や尿石によるものにはさほど効きません。混ざると危険なので、私はネオナイスなどの酸性洗剤を使用することが多いですね。
【トイレ】
◾️普段の掃除には便器の材質問わず使える中性洗剤が無難。
◾️水垢や尿石を落とすには酸性の洗剤が必要。
◾️こびりついた尿石は酸の力+専用ペーパーで研磨して落とす。
【こまめに落とす派】
「便器以外、床の拭き掃除にも使用」(藤原さん)。
【一気に落とす派】
「100円ショップで手軽に買えるものですが、塩酸濃度が高く、尿石落としに有効です」(錫村さん)。
【一気に落とす派】
「4分の1に切ると使いやすい。尿石の掃除の際はゴム手袋の着用も必須です」(錫村さん)。
多面体の研磨剤と塗布後一日放置できる次亜塩素酸で、浴室制覇!
錫村 浴室は水垢、金属石鹼、カビなど、強力な汚れの巣窟です。
藤原 石鹼カス、皮脂などによる日常的な汚れは、浴室用中性洗剤+スポンジ、あるいは網タワシの組み合わせでまずOKではないでしょうか。入浴後によく水を拭き取り、浴室全体と風呂椅子まで掃除していれば、汚れのひどい沈着は招きません。バスマジックリンのスーパー泡洗浄がいいですよ。除菌剤が入っているので、頻繁に現れるピンクのぬめり(メチロバクテリウムの繁殖)も防げます。ガラス面が多い浴室は水垢が目立ちやすいので弱酸性のお風呂用ティンクルもおすすめです。悩ましいのは金属石鹼や鏡の鱗状痕。落ちないものと諦めている人は多いと思います。
錫村 風呂椅子の側面や浴槽のエプロンなどにビターッと広がった金属石鹼は「肩こり」のような構造なんです。石鹼カスと水のミネラル分が結合した脂肪酸カルシウムや脂肪酸マグネシウムなどがガチガチに凝り固まった状態。それを落とすのには酸・溶剤・界面活性剤が配合された洗剤でアプローチすることが多いのですが、リンレイのウルトラハードクリーナー バス用は弱アルカリ性にもかかわらず汚れがスルスル落ちていくので、最初使った時は驚きましたね。
藤原 ウルトラハードクリーナー バス用だけを使っていますか?
錫村 先にアクリル製樹脂でできた根岸棒で汚れの表面をこそげ落としておきます。汚れの程度によっては根岸棒だけで完結できますが、時間がかかります。だから根岸棒である程度剥がしたら、後はリンレイに任せるのが堅策。スポンジで塗布し、後は水で流します。
藤原 カビはどうでしょう?
錫村 かびとりいっぱつ一択です。
藤原 私も大好き! ノズルが先細で、中身はジェルタイプ。ターゲットにだけ塗れ、液だれもなし。
錫村 カビに次亜塩素酸塩を長時間張り付かせることが、カビ取りの成功のカギ。ジェルタイプなのでピンポイントにカビの部分に張り付いて、一晩置くと真っ白になっていることが多いですよ。
藤原 つるつるした平面のカビは中性洗剤で擦れば落ちるんです。難しいのは、水漏れを防ぐコーキングや、風呂蓋、ドアに使われている樹脂についたカビ。それも見事に落ちますよね。
錫村 カビが落ちるまでに時間はかかるんですが、確実に落としてくれるので信頼しています。ただ、カビ取り洗剤はアルカリ度が高いので金属部品などにつかないように注意しましょう。
藤原 水垢は先ほどの金属石鹼同様、洗剤+研磨が正攻法ですよね。
錫村 はい。蛇口にこびりついた水垢は頑固なので、力も必要です。まずはステンレスのヘラでこそげ落とします。その後、ゴム手袋の上に軍手を重ねて装着し、指先にクリームクレンザーをのせ、そのまま蛇口に塗りつけるようにして、指を使って残りを擦り落とします。スポンジはクレンザーを吸ってしまうので不向き。軍手を使い、研磨剤が汚れにぶつかりやすくするのがコツです。
藤原 鏡の水垢も、早期ならクリームクレンザーでていねいに擦れば、落ちますよね。私はリンレイのウルトラハードクリーナー ウロコ・水アカ用をよく使います。研磨材が50%以上入っているので、汚れ落ちが秀逸だと思います。
錫村 面倒なのは、早期の水垢を上手に落とし切れずにいるうち、そこを足掛かりに複層化してしまった鱗状痕ですよね。それはもう多面体、つまり角が多い、かつ大きめな粒の研磨材が入ったクレンザーでないと落ちません。見た目には判別できませんから、そういった研磨材が入った10秒クレンザーを使ってください。これも前述の要領で、軍手を使って磨くと効果的。一度で落ちなければ何度か繰り返して。
藤原 鏡に傷はつきませんか?
錫村 過剰につけて無理矢理擦ることをしなければ大丈夫です。
藤原 私もかなりのオタクですが、今日は未知の洗剤との出合いがありました。さっそく、使ってみますね。
【浴室】
◾️日頃の皮脂汚れなどは中性洗剤でOK。除菌効果があるとぬめりも除去できる。
◾️水垢は、研磨材入りでないと落ちない。
◾️カビ取りのカギは、次亜塩素酸塩が何時間張り付くか。
【こまめに落とす派】
「日々の汚れに加え、コーキング以外、平面のカビにも効きます」(藤原さん)。
「ガラス面が多い浴室で気になる水滴汚れには弱酸性の洗剤を」(藤原さん)。
「強力な洗剤をあまり使わない私でもこれだけは別。軽度な水垢がよく落ちます」(藤原さん)。
【一気に落とす派】
「特殊成分により、頑固な汚れを徹底分解」(錫村さん)。
「バスタブのエプロンや風呂椅子についた、金属石鹼はこの"ヘラ"があれば解決します」(錫村さん)。
「複層化した鱗状痕もこのクリームクレンザーで何度か擦ると取れます」(錫村さん)。
【こまめ派も一気派も】
「汚れ次第では塗布後24時間放置をと謳う、強力な一本。カビによるシミも白くなる!」(錫村さん)。
『クロワッサン』1128号より
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