人づきあいを楽にする5か条とは? 一田憲子さんとわたなべぼんさんが語り合う
撮影・黒川ひろみ イラストレーション・わたなべぽん 文・野尻和代
家族や親族、職場、ご近所、古くからの友人や趣味の仲間……。私たちはさまざまな人とのつながりの中で生きているけれど、正直、煩わしいしがらみも少なくなく、もっと身軽にしたいと考えている人は多い。では、そのためにはどうしたらいいのか? 著書やブログで人間関係について寄稿している編集者の一田憲子さんと、漫画家のわたなべぽんさんに、人づきあいをラクにする考え方、実践していることなどを聞きました。
わたなべぽんさん もともと人見知りなんですが、30代で漫画家になって、仕事でもプライベートでもいろんな人と交流しようと頑張ったんです。おかげでずいぶん友だちもできました。
一田憲子さん 若い時は、顔が広い人に憧れがありましたよね。私もフリーランスで仕事しているから、顔を売りたくていろんなパーティに行ったり、話題の店を訪ねたり頑張っていました。でも、損得で動くと、すごく疲れる(笑)。今はもうできないですね。
わたなべ 私も結局、コロナ禍で人と会わなくなったら、気楽さを知ってしまって。緊張したり、こちらから働きかけないと会えない人とは、自然と距離を置くようになりました。それで離れてしまうならば仕方ないなと。
一田 割り切りは大切ですよね。努力しないと続かない関係性はしんどい。
わたなべ 距離が近くなりすぎて、マウントを取ってきたり、愚痴や悩み相談ばかりの友だちもしんどいですね。
一田 それはもう、無理してつきあわなくてもいいのでは? 私たちはもう大人だし、自分のためにもっとわがままに、居心地のよさ優先でつきあい方を決めていいと思う。
わたなべ ですよね! 今、私にとって心地いいのは、趣味や興味のベクトルが合う人たちとの時間なんです。
一田 何にハマっているんですか?
わたなべ 飲み仲間と美味しいものを食べたり……あとは、映画。ある映画のサイトに自分が観た作品の感想を書き込んだりするんですが、映画好きと交流することもあって。顔も知らない人ですけど、すごく楽しいんです。
一田 昔はなんでも話せて、分かち合えてこそ友だちと思っていたけど、もっと軽くていいんですよね。
わたなべ お互いの生活、生き方があって、フィフティフィフティでつきあえればそれでいいんです。
一田 ところでインスタグラムとかXとか、SNSはやっています?
わたなべ はい。でも、真剣に受け取りすぎると疲れるので、基本はナナメ読みするだけですが。
一田 わかります! 私は以前、あるコメントで悲しい気持ちになったことがあって……。今はいろんな人がいると受け流せますが。SNSは便利なコミュニケーションツールだけど、自分の正義を持ち込むのは怖いですよね。
わたなべ 私は先手を打って、メンションやコメント設定で自分に入る情報を制限しています。
親しき仲でも、ちょっとした心遣いを。
一田 家族や親戚づきあいはどうしていますか?
わたなべ 夫の両親や義姉の家族とは、連絡も取り合っていますし、関係は良好だと思います。年に1度は家族旅行に出掛けたり、旅のお土産を送り合ったりもしています。
一田 素敵ですね! うちは実家の両親とずっと誕生日プレゼントのやりとりをしていたんですが、数年前に両親から、高齢になって買い物が大変だからやめようと言われて。今は、誕生日に下手くそな似顔絵を描いて、ファックスで送るのが恒例になっています(笑)。あとは、形式張ったことはしないけど、出張先で美味しいものを見つけたら届けることもありますね。
わたなべ うちも母の日は「海宝漬け」、父の日は「鰻の笹蒸し」を送っています。毎年同じものですが、結局は本人たちの好物が一番喜んでくれる(笑)。
一田 無理のない形で寄り添いつつ、時には感謝の気持ちを表すことは大事ですね。
わたなべ 家族であっても、友だちであっても、ちょっとした気遣いは大事だなって思います。
一田 人づきあいを整えるなら、マイナスしていくことも、プラスの方向性も両方不可欠なんですよね。というのも、最近、お節介ってなんだかいいなって思っていて(笑)。たとえば、友だちがインスタグラムで風邪をひいたとつぶやいたら、「大丈夫?」って一言レスをしたり、ご近所ならばスープを持って行ったり。ほんの少しのことでも、見返りを求めない心配りが、距離を縮めるきっかけになるような気がします。
わたなべ 確かに……。人づきあいを削ぎ落とせば、面倒なことが減り、自分の時間もできる。一方で、大切な友だちとの仲を深めることも、よりよい人間関係を築くためには必要ですよね。
人づきあいを楽にする5カ条
1.疲れる人、コミュニティとは距離をおく。
2.見栄を張ったり、メリットを求める社交をやめる。
3.全方位的に気の合う人だけが友だちではないと認識する。
4.SNSは便利だけど、振り回されないようにする。
5.家族であっても気遣いは忘れずに。
『クロワッサン』1125号より
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