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避難場所や要介護の家族など、ケース別「災害時、こんなときどうする?」

災害時の備えをしているつもりでも、それを家族や身近な人と共有できていますか? 平時にこそ、ルール作りを。

イラストレーション・ながしまひろみ 文・黒澤 彩

こんな時どうする? 〝わが家の場合〟を想定してみる。

地域ごとにリスクの種類が異なるように、家族の暮らし方や居場所もさまざま。個々の事情を考えてみると、どうすればいいのかと悩んでしまうこともあるのでは? 読者の災害での体験談をもとに、ケース別に決めておくべきことをアドバイスしてくれたのは防災アドバイザーの岡本裕紀子さん。

「防災において、具体的なリスクを想像してみることはとても大事です。まずは自分たちが住んでいるところはどういう立地で、何のリスクが高いのかを知り、シチュエーションに応じたきめ細かいところまで家族で話し合っておきましょう」

また、子どもや老親と日々かかわりのある関係各所と、事前に申し合わせをしておくこともポイントになる。

(家族が離れ離れ)

東日本大震災の時、子どもが家からかなり遠い学校に通っていたため、すぐに迎えに行かなければと車で向かいました。そもそも遠いので時間がかかるだろうと覚悟はしていましたが、道路は思った以上の大渋滞。動けなくなり、引き返そうにも引き返せず、何時間も車から出られない状況になってしまいました。無事に子どもと会えて一緒に帰宅できましたが、すぐに車で向かったのはよくなかったのかもしれません。
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◎駆けつけない。 学校の指示に従うと決める。

「お気持ちはわかりますが、道中で親自身が二次災害に巻き込まれる可能性があります。それに、会社に勤めていれば親のほうも職場の災害ルールに沿って行動することが必要です。すぐ迎えに行こうとすることはやめましょう。普段からそういう時は迎えには行かないから先生の指示に従うように、と子どもに伝えておくことが大切です」(岡本さん)。

ただ、学校の立地によって抱えているリスクも異なるので、対応は一律ではない。災害が起きた時にどう連絡を取り、いつ引き渡すのかを平時から確認しておく必要がある。親のほうからもPTAを通じて学校に働きかけをしよう。老親が介護施設で暮らす場合なども同じ考え方。預け先とのコミュニケーションを取っておこう。

避難場所や要介護の家族など、ケース別「災害時、こんなときどうする?」

(避難場所に迷う)

ちょうど正月に帰省している時に能登の震災が起きました。避難所に逃げろという放送があり、ひとまず家から出ましたが、避難所は自宅よりも海に近いところだったので、避難所には行きませんでした。今回はたまたま家族みんな一緒にいる時に地震が起きたので、その場で相談して行動を共にできましたが、津波の危険などがある場合どうするかなど、状況に応じて決めておけばよかったと思いました。
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◎ケース別に避難計画を決めておく。

自宅から最寄りの避難所だけを把握しておけばいいわけではなく、住んでいる地域や自宅のリスクをチェックし、2番目、3番目に近い避難所に行くことも念頭に、家族の避難ルールを取り決める。こんな時は◯◯小学校、こんな時は公民館、というふうに明確に判断できるような基準を作ろう。そして、各避難所までの経路や、所要時間も実際に歩いて確認しておく。

「コロナ禍以降、避難所が過密になるのを避けるための分散避難がスタンダードになっています。最寄りの避難所に行くのが最優先とはかぎらず、在宅、知人や親戚の家、宿泊施設、車中泊などケースによって避難の選択肢がいろいろとあることをふまえて計画を立てましょう」

避難場所や要介護の家族など、ケース別「災害時、こんなときどうする?」

(要介護の家族)

自宅で認知症の祖母を介護していた時期に東日本大震災が発生しました。災害時にどうするかを決めていなかったので、祖母のケアが大変でした。なんでも口に入れてしまうし、徘徊もあるので夜間などは危険で目が離せませんでした。また、祖母のお世話のためにバケツなどの容器をすべて使っていたので、水をもらう際に持っていける容器がなく、そうした日用品の予備を用意していなかったことを後悔しました。
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◎介護分担をルール化しておく。

「認知症や要介護の方の避難生活は、社会全体の大きな課題です。福祉避難所に入ることができればいいのですが、在宅の場合も家族だけで抱え込まずに、訪問介護や親戚縁者を頼りながらローテーションを組んで介護にあたりましょう」

訪問介護や訪問看護のサービスを利用しているなら、災害時にも訪問を続けてくれるのかといった対応について聞いておくこと。同じ地域で暮らす介護者も被災者になることがあるので、計画どおりにいかないこともあるはずだが、せめて事業所の方針、非常時の体制などは平時に確認しておこう。また、防災用品と介護用品は全く別物。防災用品は家族の人数分必ず用意し、介護用品の予備も多めに準備しておくことが大切だ。

避難場所や要介護の家族など、ケース別「災害時、こんなときどうする?」

(どこでどう会うか)

豪雨による浸水の危険が高まって、避難所に指定されていた小学校に避難しましたが、避難所の混雑ぶりが想像以上でした。まず校庭や学校周辺が車でいっぱいで、体育館に入れません。車で待機している人も多く、私たちも車中で一晩過ごしました。同じ地区に住む両親と兄夫婦も同じ小学校に避難しているはずなのですぐに会えると思っていましたが、人が多すぎて結局当日中に落ち合うことはできませんでした。
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◎場所と時間をピンポイントで決める。

体験談のように、避難所がキャパシティオーバーで混乱することも考えられる。職場や学校からそれぞれ避難してくる家族と確実に待ち合わせるには、「〇〇小学校に避難する」と決めておくだけでは安心とは言えないと岡本さん。

「家族が集合できる可能性を高めるには、例えば『学校の正門に10時と15時に行き、そこで10分待つこと』というふうに、より細かく、ピンポイントで待ち合わせ時間と場所まで決めておきます。1日に2回ほど時間を決めて、10〜15分待って来なかったらまた次の時間にそこに行ってみる。電話などでの連絡が取れなくても、各自がその約束どおりに待ち合わせ場所に行けば会えるので、お互いやみくもに探すより効率的です」

避難場所や要介護の家族など、ケース別「災害時、こんなときどうする?」
  • 岡本裕紀子

    岡本裕紀子 さん (おかもと・ゆきこ)

    防災アドバイザー

    防災士。全国で講演や研修の講師を務める。NHKなどメディア出演多数。著書は『岡本流驚きのほぼ0円防災術』など。

『クロワッサン』1124号より

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