料理家の麻生要一郎さんが選ぶ、自分の料理と好相性の調味料。
撮影・中島慶子(調味料) 文・小林百合子
麻生要一郎さん|自分の料理と好相性のベストセレクション。
調味料は毎日使うもの。おいしいことはもちろん、馴染みの店で気軽に買えるものがいい。そして何より自分の料理との相性を吟味することが大切です。作る料理や作る人によって〝いい調味料〞は違うはずです。普段作る料理の味がピタリと決まる。それが自分にとっての〝いい調味料〞だと思うんです。それに巡り合うには、とにかくいろいろ試してみること。自分の料理も変化していくので、それに合わせて相性のいいものを探して使っています。
三州三河みりん(角谷文治郎商店)
自社製造した米麹、米焼酎、もち米を原料に、熱処理をせずに自然の力だけで醸造。砂糖がいらないほどしっかりとした甘さがありつつも軽やかで、どこまでも上品な風味。「みりんは素材の風味を引き立たせるもの。良し悪し(好み)を見分けるには飲んでみるのが一番。これは飲んでも風味がよく、それでいて買いやすい価格がいい」。
特選国産丸大豆醤油(フンドーキン醬油)
丸大豆醤油とは油脂を搾らず、大豆そのままを醸造したもの。豊かな香りと味わいを持ち、薄味でも深いコクを感じられる。「じっくりと醸造したまろやかな風味で、どんな料理とも相性がいい。値段も手頃で、スーパーでも手に入るのもいいところ。値段が高いからおいしいということでは決してないと教えてくれた調味料のひとつ」。
坊津(ぼうのつ)の華
国内屈指の透明度を誇る鹿児島県の坊津の海の水から作られる天然塩。天日と風で海水をゆっくり濃縮し、1週間釜炊き。とがった塩辛さがなく、しっかりとした旨みがあるのが特徴。「粒子が大きく、おにぎりに使ったり、天ぷらなどにつけたりすると、味が際立って、とくにおいしい。まろやかな塩味が好みです」。
西京白みそ [上撰](西京味噌)
江戸時代から続く京都の老舗が造る白味噌。米を丁寧に磨いて米麹を作り、大豆の2倍量を使用。上品な甘さと滑らかな口当たりを生み出している。塩分4.9%と白味噌の中では控えめ。「いろいろな味噌を常備している中で一番好きなのが白味噌。甘みのある味わいで素材との相性もよく、満足感のあるお椀に」。
てんさい糖(ホクレン)
北海道産のてん菜(ビート)100%で作られた砂糖。まろやかな甘さで、コーヒーや紅茶、菓子に使えば上品な風味に。煮物や照り焼きに加えると、深いコクと美しいテリを与えてくれる。「いろいろ試してみましたが、とがった甘みではない、丸い味わいが我が家の味に合っています」。
美濃特選本造り米酢(内堀醸造)
自社で精米した国産米と米麹のみから醸造する米酢。米の持つ旨みと甘みが感じられ、香り豊か。刺激のない優しい酸味とほのかな甘みが食材のおいしさを引き立てる。「酢は体にいいし、なるべく食卓に酢を使った料理を1品並べたい。この米酢は鼻につくツンとした香りがなく、芳醇。角のとれた、まろやかでおいしい酢の物ができる」。
EXV オリーブオイル(テレ・ディ・パンタレオ)
シチリア南東部・イブレイ高原の在来品種トンダイブレア100%からできたオリーブオイル。青いトマトと若草の風味がはっきりと感じられる。「青さのある香りのオリーブオイルが好きで、今はこれがお気に入り。ちょっと垂らすだけで風味が広がるオリーブオイルは、それだけで料理上手にしてくれる感じがします」。
ネ・ビアンコ・ネ・ ネロ・ディ・サラワク(マリチャ)
「ネ・ビアンコ・ネ・ネロ」とは、黒でもなく白でもないという意味。気持ちいい刺激がありつつも繊細な風味で、魚介などデリケートな素材の味も活かす。「驚くほど丁寧な工程を経て作られるこしょうの香りと風味は格別。料理に寄り添うように香りづけをしてくれます」。
福正宗 純米 料理酒(福光屋)
塩分などを加えない無添加の純米料理酒。素材の臭みをとって旨みを引き出す、他の調味料との味を調和させるなど、料理酒の効果を存分に発揮する。余計な塩味がなく、和洋中どんな料理とも相性がいい。「飲みかけの日本酒を使うこともありますが、酒蔵が料理のために造った酒は風味が格段によく、料理をワンランクアップしてくれます」。
『クロワッサン』1117号より ※価格は取材時のものです。
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