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植松良枝さんが自ら育てる採れたて野菜の物語と、毎日食べたいピーマンの夏レシピ4。

採れたて野菜は味も違えば栄養価も違う! その魅力を知り尽くしたプロに聞く、夏野菜の畑と料理の物語。

撮影・青木和義 構成&文・堀越和幸

神奈川の実家と住んでいる世田谷、それぞれの畑について。

神奈川の実家の畑では、今年はきゅうりが大豊作。「父はきゅうりの糠漬けが大好物なんです。好きな野菜はついたくさん作ってしまいますよね」。こんなに立派に育った。
神奈川の実家の畑では、今年はきゅうりが大豊作。「父はきゅうりの糠漬けが大好物なんです。好きな野菜はついたくさん作ってしまいますよね」。こんなに立派に育った。

料理研究家、植松良枝さんと畑との付き合いは実は長い。

「神奈川の実家では父が庭を使って大がかりな家庭菜園をやっていて、その前には祖父母が山あいにあるテニスコート6面くらいもある傾斜地で、いろいろ作っていました。なので、私にとって野菜は買うものでもあるけれど育てて食べるものでもあるんです」

という環境に育ったせいか、野菜の旬には徹底したこだわりがある。

「私、冬はなすを食べないんですよ。スーパーで売っていても、見ないようにしている。だって、夏の旬を迎えたなすって本当は感動するくらいに美味しいんですよ。そのありがたみをしっかり味わえるように自分に厳しくしている。旬野菜原理主義者なんです(笑)」

とうもろこしもきのこもそう、そのほうが楽しいという植松さんの語りは、こだわりのレベルを飛び越えてむしろ愛の領域に達していそう。

植松さん自身が自らの手で野菜を育てるようになったのは料理研究家として独立した頃だ。野菜をいっぱい使って料理を試作してみたいとの理由から始めてみたら、その楽しさに一気に魅せられてしまった。
「初めて育てたのは水菜でした。試作は水菜のスパゲティを作ったことを今でも覚えています」

自分で一から野菜を育てると思いもよらない発見がある。水菜は育てていくと最後は大きな株になる。黄色い花も咲かせる。その成長過程に合わせて、調理法をアレンジしていく。

「市販の水菜ではできないことですよね。トマトならまだ青いうちから使ってみたりと、いろいろやりました」

開墾から始めた、近所の空き地の畑。

神奈川の実家を出て、現在は東京・世田谷区に居を構える植松さんは、4年前に近所の空き地を借りた。「知人の紹介で、ちょうどコロナ禍ということもあって、畑にしたら集中して作業ができるかなと思いまして」

広さは一軒家が立つほどの空き地。さっそく土をならして種まきを開始しようと思いきや、そこは元は宅地。開墾から始めなければならなかった。

「耕そうとするとスコップにガコッと大きなブロックが当たったり……。初めの数カ月は毎日が開墾の日々で、本当に重労働、しんどかったです」

が、ひとたび畑の準備が整ってしまえば、実家で培った知識やスキルも手伝って好きな野菜がたくさん収穫できるようになった。なすなら2種、トマトは3種、ほかにも白ゴーヤ、モロッコいんげん、空芯菜、冬瓜、そして夏野菜の中でも大好物のピーマン系の野菜は7種類も育てたことがある。

今年は仕事の兼ね合いで、世田谷の畑には夏野菜が植えられなかったという植松さんにお願いして、今回のクロワッサンの取材は神奈川の実家の畑にお邪魔をさせてもらうことになった。取材当日は、あいにくの大雨。バラバラと傘を打つ激しい雨音にスタッフが撮影を危ぶんでいるとーー。

「農作業は雨の日もやりますから私は大丈夫ですよ。野菜は待ったなし。特に夏野菜は収穫を1日逃すと味が変わってしまうことがありますから」

と合羽を着込んで畑に飛び出した。この日の収穫は下写真のとおり。中からビタミンC豊富なピーマンを使った、夏の食欲を増進させる特別レシピも、この後にしっかり紹介しましょう。

(今日の収穫)

湿った土の匂いのする採れたての野菜たち。「今は葉付きの状態を見たことがない人も多いのでは」。ちなみに真ん中の黄色はきゅうりの花。
湿った土の匂いのする採れたての野菜たち。「今は葉付きの状態を見たことがない人も多いのでは」。ちなみに真ん中の黄色はきゅうりの花。
新鮮なきゅうりは表面のぶつぶつにチクッとする透明なヒゲが生えている。
新鮮なきゅうりは表面のぶつぶつにチクッとする透明なヒゲが生えている。
「父が育てるのはオーソドックスな野菜が中心」。ズッキーニが登場したのは比較的最近。
「父が育てるのはオーソドックスな野菜が中心」。ズッキーニが登場したのは比較的最近。
植松さんはモロッコいんげんをよく育てるが、父が育てるのは通常のさやいんげん。
植松さんはモロッコいんげんをよく育てるが、父が育てるのは通常のさやいんげん。
ピーマンがたくさん採れた夏は作り置きにして毎日食す。そのレシピは後ほど。
ピーマンがたくさん採れた夏は作り置きにして毎日食す。そのレシピは後ほど。
鈴なりになったまだ青いトマト。世田谷で作った時には、カナブンがたくさんやってきた。
鈴なりになったまだ青いトマト。世田谷で作った時には、カナブンがたくさんやってきた。
焼いてよし、炒めてよし、旬のなすはどうしたって美味しい。だからこそ、夏に食べたい。
焼いてよし、炒めてよし、旬のなすはどうしたって美味しい。だからこそ、夏に食べたい。
雨に打たれて瑞々しく光る青じそ。こちらは下で紹介するピーマン料理のトッピングに。
雨に打たれて瑞々しく光る青じそ。こちらは下で紹介するピーマン料理のトッピングに。
「狭い畑にいろいろ植えて頑張っている父を尊敬します」。と、思わず葉しょうがを見て植松さん。
「狭い畑にいろいろ植えて頑張っている父を尊敬します」。と、思わず葉しょうがを見て植松さん。
新鮮なきゅうりは表面のぶつぶつにチクッとする透明なヒゲが生えている。
「父が育てるのはオーソドックスな野菜が中心」。ズッキーニが登場したのは比較的最近。
植松さんはモロッコいんげんをよく育てるが、父が育てるのは通常のさやいんげん。
ピーマンがたくさん採れた夏は作り置きにして毎日食す。そのレシピは後ほど。
鈴なりになったまだ青いトマト。世田谷で作った時には、カナブンがたくさんやってきた。
焼いてよし、炒めてよし、旬のなすはどうしたって美味しい。だからこそ、夏に食べたい。
雨に打たれて瑞々しく光る青じそ。こちらは下で紹介するピーマン料理のトッピングに。
「狭い畑にいろいろ植えて頑張っている父を尊敬します」。と、思わず葉しょうがを見て植松さん。

できるだけたくさん、毎日食べたい! 夏のピーマン料理。

ピーマンとなす、豚肉の味噌炒め

植松良枝さんが自ら育てる採れたて野菜の物語と、毎日食べたいピーマンの夏レシピ4。

なすが豚バラの脂を吸って味噌と絡む、白いご飯が進む料理。「我が家は夏バテ防止にはこれです」。ピーマンはちぎって炒めると味の馴染みがよい。炒めすぎないことがポイント。

【材料(2人分)】
ピーマン 4個
なす 小2本
にんにく 大1かけ
豚バラ薄切り肉 200g
A[味噌 大さじ2、酒 大さじ2と1/2、きび砂糖 小さじ1/2、ごま油 小さじ1]
青じそ 適量

【作り方】
1.Aを混ぜ合わせておく。
2.ピーマンはヘタと種を除いて一口大に切る(手でちぎるとより味がなじむ)。なすはヘタを切って皮をピーラーで縞にむき、一口大の乱切りに。豚肉は3〜4cm幅に切る。にんにくは縦薄切りに。
3.フライパンに米油小さじ1~2(分量外)とにんにくを入れて火にかけ、香りが立ってきたら豚肉を広げ入れて炒め、色が変わってきたらなすを加え炒め合わせる。なすがしんなりして火が通ったらピーマンを加えてさっと炒め、Aで味付けする(少し水分を飛ばし気味に炒めると香ばしく仕上がる)。ピーマンの火入れは最小限にすると、ぱりっと美味しくいただける。器に盛り、ちぎった青じそを散らす。

ピーマンボート

植松良枝さんが自ら育てる採れたて野菜の物語と、毎日食べたいピーマンの夏レシピ4。

馴染みの居酒屋さんメニューからヒントを得た一品。「冷やして食べる生ピーマンの美味しさといったら!」。のせて食べるのは、スパイシーな肉だんご。カレーマヨで召し上がれ。

【材料(2〜3人分)】
ピーマン 約6個
豚挽き肉 300g
にんにく 1かけ(みじん切り)
塩 小さじ2/3
粗挽き黒胡椒 小さじ2/3
クミンシード 小さじ1
カレーマヨネーズ[マヨネーズ 大さじ1と1/2、オイスターソース 小さじ1/2、カレー粉 小さじ1/2]

【作り方】
1.カレーマヨネーズの材料を混ぜ合わせておく。
2.ピーマンは縦半分に切ってヘタと種を除き、氷水に浸してしっかり冷やしておく。冷蔵庫から出したての豚肉をボウルに入れ、材料のにんにく~クミンまでをすべて加え、手でしっかりと練り混ぜる。
3.熱したフライパンに米油などの油小さじ1/2程度(分量外)をひき、肉だねを厚さ2cm弱になるよう円盤状に平らに広げ、ふたをして焼く。両面香ばしく焼き、中まで火を通す。一口サイズに切り分け、冷たいピーマンにのせ、カレーマヨネーズをかけていただく。

ピーマンと ししとう、青唐辛子、 じゃこの炒め

植松良枝さんが自ら育てる採れたて野菜の物語と、毎日食べたいピーマンの夏レシピ4。

家族が喜ぶ植松家の常備菜。「ご飯はもちろん、パスタに和えてよし、お酒のアテによし、万能です」。ししとう、青唐辛子、ピーマン、同時に旬を迎えた3兄弟の味の調和を堪能。

【材料(作りやすい分量)】
ピーマン 5~6個
ししとう 12本
青唐辛子(好みで)1~2本
にんにく 1かけ
ちりめんじゃこ 50g
塩 適量
米油 大さじ2

【作り方】
1.ピーマンは縦半分に切ってヘタと種を除いて重ね、斜め細切り(5〜7mm幅)にする。ししとうはヘタを取ってそのまままたは縦半分に切る。青唐辛子は薄い小口切りにする。
2.フライパンに米油とつぶしたにんにくを入れて弱火にかけ、にんにくが色付いてきたらじゃこをさっと炒める。ピーマン、ししとう、青唐辛子を加えて中強火でさっと炒め合わせ、塩で味付けする。

ピーマンチキンライス

植松良枝さんが自ら育てる採れたて野菜の物語と、毎日食べたいピーマンの夏レシピ4。

「私がいかにピーマンに執着しているかを表す一皿です」。パリッと食感を残し、あえて別炒めにしたピーマンをチキンライスにオン。これなら、好きなだけピーマンがおかわりできる。

【材料(2〜3人分)】
ピーマン 2個
玉ねぎ 大1/4個
ベーコン 2枚
鶏のささみ 2本(約80g)
温かいご飯 300g
バター 大さじ1
オリーブオイル 大さじ1
ケチャップ 大さじ3〜4
醤油 大さじ1/2

【作り方】
1.ピーマンはヘタと種を除いて1.5cm角、玉ねぎも1.5cm角に切る。ベーコンは1~2cm幅、ささみは斜めに1cm幅に切って塩・こしょう各少々(分量外)で下味をつけておく。
2.熱した大きめのフライパンにオリーブオイル小さじ1程度(分量外)をひいてピーマンを入れ、さっと炒めて取り出す(20〜30秒程度)。
3.同じフライパンにオリーブオイルとバターを入れて玉ねぎを炒め、透き通ったらささみとベーコンを加えて炒め合わせる。ささみに火が通ったら温かいご飯をほぐしながらフライパンいっぱいに広げ入れて炒め、ケチャップと醤油で味付けする。皿に等分に盛り、先に取り出しておいたピーマンソテーをのせていただく。

  • 植松良枝

    植松良枝 さん (うえまつ・よしえ)

    料理研究家

    雑誌やWEB、TVへのレシピ提案等で活躍。料理教室「日々の飯事」を主宰。著書に『一度は使ってみたい野菜で、何度でもつくりたいレシピ』が。

『クロワッサン』1123号より

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