くらし

借金や浪費…夫婦間のお金のトラブル実例集。

夫婦で改めて話をするのも億劫といった空気になりがちな、お金の問題。
そんな見て見ぬふりが将来の切実なトラブルを招くことになる、かも。
家計再生コンサルタントでファイナンシャルプランナーの横山光昭さんがアドバイスします。
  • イラストレーション・いいあい 構成&文・中條裕子

思わぬところに潜んでいる!? 夫婦間のお金のトラブル。

これまで2万6000件もの家計の相談に携わってきた横山光昭さんが見てきた中には、夫婦の間に起こったさまざまなトラブルがあった。その多くは、お互いの金銭感覚が異なっていたり、貯金などの資産情報をきちんと共有できていないために起きているのだという。

アンケートでも「データを隠していることに対する不信感」や「夫の借金」など、自分が知らない間に勝手にお金が動いていたことへの不満の声も聞かれた。そんな実際に起こった夫婦間のお金の問題とは?

Q.これまでお金にまつわる夫婦間のトラブルはありましたか?

大きな出費があるときに私の個人的な貯金を当てにしている(57歳)。

夫の趣味が貯蓄と節約なのでお金に細かくうるさい(55歳)。

私のクレジットカードで夫にキャッシングを勝手にされた(43歳)。

私がお金にだらしなく借金を肩代わりしてもらい夫と揉めた(50歳)。

有事のため節約する私を夫はケチ呼ばわりし続けている(57歳)。

引き落としで口座預金が足りない旨のハガキが何度かきて喧嘩に(50歳)。

\実際こんなケースがありました。/

(CASE 1)資産管理を一任していた夫が、 実はギャンブルにハマって……。

妻が専業主婦で、夫は医者という夫婦。

「うちは将来のためしっかり貯めているから大丈夫」と日頃から言っていた夫の言葉を信じて、妻は特に貯蓄に関しては任せきりにしていた。

が、あるとき病気で夫が倒れてしまい、動くことができなかった際に代わって入院費の支払いなどのために生命保険を調べてみたら、すでに解約をして現金化していたことを知る。慌ててほかの状況について確認すると、夫がギャンブルにハマっていて貯金も全くされていなかった。初めて現状を知った妻はひたすらびっくりするばかり。

【横山さんのアドバイス】普段は一元管理をしている場合でも、資産の情報共有は怠らないこと!

この家庭では家計を一元管理にしており、夫が家全体のお金を見ていたという状態。妻は丸投げしてしまい、「私はよくわからないけど、夫がきちんとしてくれているよね」と安心して頼りきってしまっていた。

実は、これはけっこうよくあるパターンなんです。夫婦間のお金にまつわるトラブルはたいがい「知らない、隠していた」ということから発生しますから。

あとは、二人のお金に対する考え方や使い方の価値観が合わないといったミスマッチはあるけれど、知らないで勝手にといった話で揉めることが一番多い。この夫婦の場合も典型的なケース。もちろん、普段は夫か妻か、どちらかが主体になって管理するのはいいと思いますが、本来はそこにもう一方もきちんと絡んで、家計の状態をきちんと把握していなくてはいけないんです。

すぐに使わないけれど、病気や怪我などいざというときに大切になってくる保険などを、相手に任せたままにしていたのが大きな失敗だった。お金周りのことをきちんと確認して、情報共有するというのは、まずは基本です。

(CASE 2)費目別に家計費の分担を上手くできていたはずが、破綻!

夫が固定費を払い、食費や日用品、被服費といった変動費は妻、といった形で費目別に負担してきた夫婦。自分が払う費目以外は、相手が貯めようが使おうが特に気にしていなかった。

妻はパート代もあり余裕があるのかなと夫は思っていたが、実はお金の管理がうまくなかった妻は足りない分をカードでキャッシングするなど暴走してしまっていた。夫から渡されている分とパート代で家計をやりくりできていない自分がおかしいのではないかと思い込んでいた妻は、夫には言い出せずにいたという。

【横山さんのアドバイス】家計費は数値化して互いに把握し、 かかった費用を定期的に見直しする。

妻が自分の力量不足、やりくり下手を夫に言い出せず自分でなんとかしようとして、結局カードという形で借金になってしまった。

この夫婦の問題点は、自分の領域以外のものを見ていなかったということ。レシートを見るなど、客観的に家計にかかった金額を夫も把握するとよかった。管理してない側からすると、わからない中でお金だけちょうだいと言われると「いやいや、お互いの役割ちゃんとしてよ」となりがち。

逆に「見てよ、普段の食費がこのくらいかかってるんだよ」というのをレシートの数字で客観的に示すことで「今これは1個こんなにするんだ。自分が理解できていなかった」と、夫婦がわかり合うことで解決するのがいいと思います。

ほかにも、10年前に取り決めた予算でそのまま家計費を分担していたら、だんだんと家計が回らなくなったという夫婦から相談を受けたこともあったのですが、これも近いケース。費目別に負担をしている場合には、子どもの成長や物価により負担も変わっていくので、定期的に役割分担を見直すことが必要です。

(CASE 3)別財布で互いにきちんと老後の貯蓄をしているはずだったのに。

互いに会社員で晩婚だったため、結婚当初から完全に別財布にしていた夫婦。住居費、水道・光熱費といった生活費は、前年度かかった分の予算を出して、半分に分ける形に。

仕事がある日は基本的に各自食事をし、それ以外に時折妻が仕事帰りに食事を買ってきてくれたりするので「余裕があるんだろう」と夫は思っていた。

老後の資金も互いにきちんと準備できていると思っていたが、実は買い物好きでクレジットカードを使い込んでいた妻。貯金は十数万しかなく、老後に関しては夫に頼るしかないという状態だった。

【横山さんのアドバイス】夫婦の金銭感覚のズレを修正して、今後のライフプランを考える。

お互いに独立してきた二人が結婚となると、自分でやりくりできているよね、というのが暗黙の了解になってしまっていることも。

でも資産などの情報を共有することなく老後を迎えると、一方はきちんと考えてても他方は好きに楽しんでた、ということもありうる。完全別財布だと知る由もないですよね。

旅行などの予算組みも「これくらいお金がかけられるからここへ」ではなく、「出せる? なら、行こうか」という形で決めてしまったり。出せている=貯金ありきで出せているわけではないんです。貯金もできてお金も出せる夫からすると、妻も同じだと思ってしまう。その感覚にズレがあると大きな問題に。

大人婚の場合、子どもが生まれる、家を買うといったタイミングがないと、先だった家計を見直す機会が意外とないもの。そんな場合には、FPなどにライフプラン表を作ってもらうのも手。たとえば夫婦100歳まで生きるとしたときに退職金や年金により生活がどうなっていくかを提示されることで、後のお金の準備について具体的に知ることができます。

横山光昭

横山光昭 さん (よこやま・みつあき)

家計再生コンサルタント

ファイナンシャルプランナー。『はじめての人のための3000円投資生活』『老後のお金、本当に足りますか?』など著書多数。

『クロワッサン』1111号より

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