夫婦円満のための日常会話のヒント。
撮影・岩本慶三 文・芳沢祐子
妻は社長、夫はアルバイトの“家庭=会社”と考えましょう。
男女のコミュニケーションを題材にした著書『察しない男 説明しない女』シリーズが話題の五百田達成さん。
「男性と女性は同じ日本語を話していると思っていますが、実は『男語=男性の考え方、話し方』、『女語=女性の考え方、話し方』という違う言語を話しているのです。すれ違うのは当然!」
最も大きな溝は、「男性は相手の感情や気持ちを察することが致命的に苦手」で、女性はそれを理解していないこと。一方、女性は「言葉できちんと説明することを省略してしまいがち」なので、話の真意が伝わりにくいこと。
「家庭とは、そんな男女が逃げ場なく、さまざまな共同作業をする場。特に、子育てが一段落する頃からトラブルが多くなりがちです。そこで私は、“家庭=会社”という考え方を提案しています。いつまでも“愛”とか“思いやり”を期待している限り、うまくいきません」
夫婦のコミュニケーションは“仕事”の場と考える。結婚に夢を持つ若性は反発するが、熟年妻たちは「そりゃ、そうね」と納得すると言う。著書では、妻が社長、夫は副社長とあるが。
「少しヨイショしました(笑)。夫に家庭を経営(リード)する意思は希薄。夫は平社員、いえ、アルバイトまで降格させたほうがいい。使えないのにプライドだけ高いアルバイトくらいに思えば妻のストレスは減ります」
アルバイト!? でも、そう割り切ると、なんだか気持ちが軽くなるような。
「アルバイトなので何事も懇切丁寧に言わなければわかりません。逆に、自発的な意思も持たないので、要はうまく言い聞かせればいいんです」
そこで女性に課題である。
「家庭は会社ですから、仕事場らしいコミュニケーションを取らなくてはなりません。“何々だから、何々してください”というように、説明を省かずに話す、男語を使ってほしいのです」
なぜ妻だけが?……と言うなかれ。夫を躾けるのは限界がある。妻が男語を話すほうが手っ取り早いからだ。
「危機意識があるのは妻だけ。夫は『うちの奥さん、いつもプリプリしているけど関係ないや』くらいで、家庭にストレスはありません。『もっとちゃんとやってよ!』と感情的に怒っても無駄なんです」
妻が男語を話すことで、夫が「妻の言うことはわかりやすくなった」と感じてくれたらしめたもの。
「子どもが独立したら夫婦の会話がなくなった、では淋しい。二人の将来のためにも、ここは意識の高い妻から一歩、歩み寄ってみてはいかがでしょう」
【ケース1】夫はろくに話を効いてくれず、すぐ「結論を言え!」と言う。
「これは〝夫婦あるある〟ですよね。基本問題です」と五百田さん。
「では、結論から言いましょう。まさに仕事としての会話。ちゃんと男語で話すことです」
たとえば、人間関係のグチを言いたい場合。「あのね、隣の奥さんね、困っちゃうのよね……」では、男性は「はっ? で? 何?」となる。
「たとえば、『隣の奥さんがゴミの分別をしないので、あなたも文句を言ってね』と言うのです。ただグチを聞いてもらいたいなら、『これから私はグチを言うけど、アドバイスは求めません。5分ほど付き合ってちょうだい。なんならテレビを観たままでもいいから』。するとたいがいの夫は、『わかった。聞けばいいのか』となるはずです」
または「結論から言うと」を、とにかく話の最初に付けてみる。「『結論から言うとグチです』とか。女性の中には、理論的に話すのは苦手、と言う人がいますが、男語らしきものでいいんです。トライしてみましょう」
【ケース2】やってくれた家事にちょっと文句を言うと「じゃあ、お前が全部やれ!」とキレる。
「自分のやり方を押し付けていませんか? アルバイトを教育する気持ちで、『ありがとう。でも、こうやったほうがより効率的』と仕事を教えるのです。〝よりはかどる〟〝安くつく〟など具体的なメリットを示すと、男性は「そうか、なるほど」と納得しやすい。
「男性は家族のために愛情を持って家事をすることなんてないです。ゲーム感覚でやってもらうといいのですが、ゲームにもすぐ飽きますしね(笑)」
男は子どもだから、時には目をつぶることも大切、と五百田さん。
「アルバイトだし、子どもだし、大変。でも、彼らにも人格があるので、原則、相手のやり方は尊重すべきです」
『クロワッサン』940号より
●五百田達成さん 作家、心理カウンセラー/テレビや講演会でも活躍中。新刊は『不機嫌な長男・長女・無責任な末っ子たち~「きょうだい型」性格分析&コミュニケーション』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。
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