「『セールスマンの死』のラストシーンで、冷蔵庫の中に入って死ぬという発想は自分にはなかった。そういう思いつかないような演出をされると、これこそまさに演出家の仕事なんだな、と思い知らされました。彼はシェイクスピアの本場、英国の人ですからね。今回のリア王も現代に移し替えた設定ということで、どんな展開になるのか僕も楽しみなんです」
稽古中は、自分より若い役者から刺激を受け、学ぶ点もあると話す。
「『セールスマンの死』の稽古では、長男役の福士誠治さんの芝居を見て、これだとつかんだことがあります。相手の感情がどうも台詞だけではしっくりこない。相手が発する台詞でこの感情になるのかと発見したりね。それがお互い見つかると芝居が楽しくなります」
今回の『リア王』は台本を読んだ限り、意外と喜劇っぽい、と笑う。
「親バカですし、悪い娘2人に振り回されている、それも喜劇っぽいし。人間の愚かしいところ、そういうところが面白いと思います。劇中に、リア王がだんだん気が変になっていく描写があるんですが、嵐の中『風よ吹け』と叫ぶシーンは見せ場かもしれない。こういう役は今回が初めてなんですが、果たして本当におかしくなっているのか、どうなのか。最初のシーンで末娘のコーディリアに好かれていると思っていたら、そっけない返事をされて、あれ? と父親役の自分がガクッとして物語が始まるんですけど、その最初の掛け合いも楽しんでほしいです」
リア王ではないが、段田さんも近年〝終活〟を考えるようになったそうで、
「同級生が最近、亡くなることが増えたんです。そうすると、やっぱり残り時間のことを考えてしまいますね。あと何本の舞台に立てるのだろうか、とか、財産があるわけじゃないんですが、早いうちに遺言を書いておいたほうがいいのかな、とか」
最後に〝みなさんの期待を裏切らないリア王をつとめたいです〟と意気込みを語ってくれた。